第71話:調達(後編)
(やっぱ、手さげ袋しかねえな)
日用品の棚にあるのは、エコバッグや保冷バッグばかりで、どれも片手が塞がってしまう物ばかりだ。どうしようかと考えながら、浦見は店内にある他の物を確認した。食料と飲料、お菓子などは大量にある。
(ただ、これは持っていくとしても少しでいいな。懐中電灯は役に立つか。雨具は……いや、天気も変わらねえはずだ。1番目のゲームでもそうだったし、2番目のゲームは外だったが、ずっと晴れていたからな。必要ねえ)
男は注意深く、持ち出す物を選んでいた。いざというときに、重みで動きにくくなるのは避けなければならない。それが彼の考えだった。
(あとは袋だけか。最悪、手さげをホリーに持ってもらうってのもありだが……)
浦見は諦めきれず、棚を全て見ていった。そして彼は目当ての物を、絶対にないと思っていた場所で見つける。
(……あ? これは……)
そこはマンガ本や、雑誌などが置かれている棚。雑誌には付録がついている物もあり、その中に、体にベルトを巻いて使えるタイプのバッグがあった。彼は雑誌から付録を外して、箱を開けてバッグを取り出し、自分の腰に巻いてみた。
(……使えはするな。どっちかというと、女が使うことを想定されていそうだが)
表紙に載っている写真も、女性が使用しているところだ。値段もバッグがついているだけあって、それなりに高い。
(まあ、今更だが)
今までと同じだ。死ぬか生きるかの瀬戸際で、拘り続けることはできない。
(そもそもこれが、本物かどうかも分からねえし……)
作動した仕掛けが元に戻る。そんなことは、現実ではありえない。目の前にある雑誌も、ページをめくってみれば、中身まで全て白黒になっていた。
(さすがにこれは、売れねえだろ。なら、開けて使っちまってもいい。……と、思うことにするか)
そんなことを考えながら、彼は出たゴミを店内のゴミ箱に捨てて、付録を外した雑誌は棚に戻した。そして腰につけたバッグの中に、LED式の懐中電灯と消毒薬、絆創膏を入れてファスナーを閉める。
「……待たせたな」
そうして準備をすませた彼は、少し声を張りながらホリーの下に戻った。俯いていた少女は、男の声に顔を上げる。
「……おかえり、おじさん。欲しいものは見つかった?」
「ああ、ちょうど良いもんがあったからな」
言いながら、浦見は腰のバッグを見せる。ホリーはそれに目を向けた。無言のままの彼女に向かって、彼は続けて問いかける。
「それで、どうする? もう少し、ここにいるか?」
1/雨具
「雨天の外出のとき使う、雨を防ぐものの総称」
2/想定
「ある条件や状況を仮に設定すること」
3/瀬戸際
「勝負・成否などの分かれ目」
4/作動
「機械や装置の運動部分が働くこと」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




