第70話:調達(前編)
ビルの壁面に映った数が、また1つ減る。以前のようなアナウンスはない。だが、定期的に表示を確認していた浦見は、すぐに気づいた。
「……あと6人か」
「お姉ちゃんは、無事なのかな」
「さあ、どうだか……。お前が心配する必要はねえよ。あいつは自分から、1人になろうとしたんだからな」
「……うん」
彼に背負われたままのホリーは、小さく頷き、話を変える。
「あと、どれくらい歩くの?」
「もう少しだ。疲れたか?」
「ううん。私は疲れないよ。でも、おじさんは……」
「心配すんな。この程度、どうってこたねえ」
言葉どおりに、男は足を止めることなく、コンビニを目指した。1つ目の十字路を右に曲がって、次の交差点は左。その後は同じく左。最後は右に。男はこの方法で、ジグザグに動きながらも、元の道に戻ってきていた。彼らがいる街には、曲がりくねった道はなく、交差点はどれも+の形になっている。そのため、この進み方であれば、時間はかかるが目的地にはつけると。彼は考え、歩いていた。
(……しっかし、どこを見ても同じような景色ばかりだな)
街にある看板は、どれも黒地に白文字だ。頼りになるのは、ロゴの形や書いてある文字だけ。店の並びを覚えていなければ、彼も目指す場所が分からなくなっていただろう。
「……よし。ここだな」
しっかりと、周囲の建物を確認して。浦見は最初のゲームで利用したコンビニを見つける。彼は周囲を見回しながら、店の中に入った。
「……おじさん、下ろして」
ホリーが男の肩ベルトを引く。彼女は小さな声で続けた。
「疲れなくても、休まないと。私も、おじさんも」
「……ああ」
彼は笑って、イートインスペースの椅子を、店の奥に持っていった。そして背負い紐を体から外して、少女を椅子の上に下ろす。
「何か食べるか?」
「ううん、いいよ。それより、薬とか持っていくんでしょ?」
「ああ、そのつもりだったが……」
浦見は店内を見渡して、考えこむ。コンビニに売っているバッグは、あまり種類がない。
「袋がねえな。一応それも、探してみるか。ホリーは入り口を見ていてくれ。誰かが入ってきたら、大声を出して知らせるんだぞ」
そう言って、男は日用品が並んでいる棚の方に消えていく。少女は黙って、その姿を見送った。
(おじさんは、これからどうするつもりなのかな)
浦見は人を殺さないと言った。だが、ホリーはきちんと、この状況を理解している。
(生き残れるのは、1人だけ。それなら、私はおじさんに残ってほしい)
そうは思うが、具体的にどうすればいいのか、分からないまま。彼女は彼が戻ってくるまで、そこでおとなしく待っていた。




