第63話:ラストゲーム
狭い部屋に、人が次々に入ってくる。その数を、坂井は目だけで数えていた。
(1人、2人……これで、3人。私たちも入れるなら、全部で8人。……そろそろかしら)
彼女がそう思った、すぐ後に。例のアナウンスが、室内に響く。
「やあ、みんな! ここまで生き残るなんて、本当に凄いね。いよいよ次が最後だよ」
明るい音声にも、もはや誰も反応しない。声は構わず、話を続けた。
「扉の鍵は開けてあげたから、まずは外に出てみて。さあさあ!」
声に促されて、坂井はスッと立ち上がる。浦見もホリーの手を取って、彼女についていった。2人の目の前で、彼女は重い扉を両手で支えながら、ゆっくりと開ける。
「……あら。ここって……」
扉の先の光景に、坂井は目を見開く。白黒のビルが立ち並ぶ、薄暗い街。
「……前にも見たな」
男が呟き、開いた扉に手を伸ばす。扉を固定する彼を横目に見ながら、坂井は笑って頷いた。
「そうね。1番最初に、来た場所だわ」
3人の、目線の先。ビルの壁面に取りつけられたディスプレイに、明かりがつく。黒い背景に白い文字。
『残り、8人』
映されたのはそれだけだった。アナウンスが、続けて告げる。
「最後のゲームは、ハント&ラン。ルールは単純。殺しあって、生き残るだけ。最後の1人になったなら、元の世界に帰してあげるよ」
不気味なほど明るい、その言葉に。ホリーがギュッと、浦見の服のすそを握る。
「……ああ、やっぱり」
坂井は振り返って、ニッコリと笑った。
「それじゃあね。ここで、お別れ」
それだけ言って、彼女は部屋の外に出る。男は黙って、側にいる少女を抱え上げた。
「……おじさん……」
彼女は彼の肩ごしに、他の参加者の顔を見る。誰もが他人のことを気にせず、同じように外に出てきた。その瞬間に、彼らの顔がわずかに曇る。だが、男の声色は変わらなかった。
「いくぞ、ホリー」
「でも、お姉ちゃんが」
「あいつのことは心配しなくてもいい。俺には2人とも、守ることはできねえからな」
会話をしながら、2人は近くのビルに入る。他の参加者たちは、まだ動きをみせなかった。
「……ねえ、おじさん。おじさんは、どうするの?」
彼らの姿が、完全に見えなくなったころに。少女は不安げに、男を見上げて問いかける。男はフロアマップを見ながら、淡々とした言葉で答えた。
「襲ってくるやつは撃退する」
「……それだけ?」
「当たり前だろ。俺は警察官なんだからな」
ホリーはじっと、浦見の顔を見つめた。だが、彼は真剣な表情のままで。少女には、その本心を読みとることはできなかった。
1/声色
「声の音色。声の調子」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




