第6話:おじさんと幼女と女子高生(前編)
「それで、アンタはどこに行こうとしてたんだ?」
「最初は、道を真っ直ぐ進んでたのよ。でも、どれだけ進んでも、周りの景色が変わらなくて。方向を変えるべきかと思って……」
女子高生……坂井が、不安そうな顔で返す。浦見は口元に手を当てて考えこんだ。
(……そうだよな。俺も結構歩いているが、景色はそんなに変わってねえ。ホリーがいた十字路も、一応目印にしてるだけで、他にも似たような場所はあった。……ここはどのくらいの広さがあるんだ?)
スーツの袖を、少女が掴む。彼女に軽く引っ張られて、男は思考を中断した。
「……おう、どうした?」
「おじさんたちは、どこから来たの? そこに戻れば……」
「いや、それはそうなんだがな。俺はどこから入ったか、もう覚えてねえんだよ」
頭をかきながら、彼が答える。坂井は鋭い目をして告げた。
「ああ、それ無理。ほら、私たち、真っ白な部屋にいたでしょう? 私は皆が部屋を出た後、最後にドアを開けたんだけど……。ここに来て、あの変なアナウンスがあったときに、真っ先に戻ろうとしたの。でも、ドアは開かなくなっていた。きっとオートロックだったのね」
「なんだと……?!」
浦見は思わず声を上げる。
「てことは、出口にも鍵がかかってるかもしれねえじゃねえか。見つけても出られねえ可能性があるぞ」
「……それは」
坂井が目を伏せる。彼女は小声で呟いた。
「でも、3人もいれば、何とかなるかもしれないじゃない。浦見さんは、私が見た中では1番力がありそうだし……」
「んじゃあ、入口に戻って試してみようぜ。俺が扉を開けられるか」
「そんな必要ないでしょ。あの部屋には、ドアは1つしかなかった。だから私も残らなかったの。……あそこに戻っても、何もないわよ」
黒髪の少女は、両腕を胸の前で重ねて、自分の肘を触っている。その横顔は、どことなく緊張しているように見えた。
「……なるほどな」
浦見は深いため息をつく。坂井も、ここから脱出できる方法を見つけられたわけではないのだろう。ただ、希望的観測で動いているだけだ。けれど、それを責める気は、彼にはない。
(こんなところからは、すぐにでも帰りたい。そう思うのは、当たり前のことだ)
彼自身、宝探しには積極的になれなかった。少女の手を取って、男は告げる。
「……入口に鍵がかかってたなら、出口にも鍵はかけてるだろう。逆に言えば、鍵がかかっているなら、そこが怪しいってことだ。そういう扉を、探すとしよう」
1/希望的観測
「事のなりゆきを、希望を交えて都合のよいようにおしはかること」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




