第5話:おじさんと幼女の協力者
色のない町を、少女と歩く。宝探しをしているわりには、奇妙なほどに。周囲は静まりかえっていた。
「誰も、いねえな」
ウインドウの数字は変わっていない。クリア者は、まだ出ていないということだろう。主催者は「最初だから制限時間は無し」と言った。つまり、あと38人。全員が通過するまで、このゲームは終わらないということだ。
(しっかし、その前に死人が出て、数が足りなくなったらどうする気だ?)
街を見回す。異常はない。カメラのような物も、見当たらない。
(なら、主催者はどこから見ているんだ?)
疑問符で頭を埋めつくしながら、浦見はホリーの手を引いて道を渡る。目の前を少女が通りがかった。長い黒髪に、切れ長の瞳を持つ女の子。彼女はどこかの高校の制服を着ている。それがどこかまでは、彼には判別できなかった。
「……おーい、ちょっと!」
悩んだ末に、男は少女に声をかけた。彼女は立ち止まり、振り返る。
「……はい。なんですか?」
「ああ、えーと……アンタも、宝を探してんのか?」
浦見の問いに、彼女は嫌そうな顔をした。
「あんな話を、まともに信じているんですか」
「……え」
彼が固まる。長い黒髪の少女は、冷たい声で吐き捨てるように告げた。
「私は出口を探しています。あんなものに、まともに付き合う必要なんてありませんから」
「……そりゃまあ、そうだな」
浦見は頭をかきながら呟いた。少女は、彼と手を繋いでいるホリーの方に目を向ける。
「あなただって、その子を無事に帰したいのでは? 宝より、出口を探すべきだと思います」
「……だとして、だ。結局やることは変わらねえだろ」
男はため息をつきながら言う。
「宝も出口も、どこにあるのか分からねえのは同じだ。探すなら、人手は多い方がいい。……アンタも協力してくれるなら、助かるんだが」
「……それは、確かに」
黒髪の少女の目が和らぐ。彼女は背筋を伸ばして、口を開いた。
「私は坂井柚希。あなたたちは?」
「ああ、俺は浦見宏紀だ。こっちはホリー。アンタも分かっていると思うが、名前以外の記憶はねえ」
「浦見さんと、ホリーちゃんね。あなたたちとは、話が合いそうだわ」
少女が明るい笑みを見せる。浦見は苦笑を浮かべた。
「ここにいる奴は、みんな宝を探しているのか?」
「そうよ。誰も彼も、あんな不気味なアナウンスだけで本気にして、馬鹿みたい。死ぬかもしれないのに、宝探しをするなんて」
(……出口を探すとしても、死んじまう可能性はあるだろう)
そう思いつつも、彼は口には出さなかった。坂井の考えは、ある意味では正しい。こんなことをする主催者が、出口を用意しているとは思えないが。それを確認するまでは、信じてみてもいいだろうと。男はそう、思っていた。
1/判別
「はっきり見分けること。区別すること」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




