第4話:おじさんと幼女は街を歩く
(……仕方ねえ。1人で考えるか)
浦見はホリーの視線を受けながら、先ほどの光景を思い返した。自販機の下から5円玉を見つけた青年。彼は硬貨を手に取った時点では、それが宝であることに気づいていないように見えた。
(てことは、パッと見ただけじゃ判断できねえってことか。……けど、確か……)
彼は「光ってた」と言っていた。そして「ばーちゃんから貰った」とも。ここから推測するとしたら、宝とは一般的に価値があるものではなく、その人物が大切にしていた物。そして、どのような仕組みでそうなるのかは不明だが、見つけるまでは光を発している。
(……まあ、ここは全体的に暗いからな。その方が分かりやすいのは確かだが)
浦見は目の前にある自販機を見すえた。売り切れている品物はない。財布もないから何も買えないが、触るだけなら可能そうだ。先ほどまで青年が宝探しをしていたので、安全であることも保証されている。だが。
(……2つも宝があるわけねえか)
これは人の命がかかったゲームだ。その性質から考えても、主催者に悪意があることは確かだろう。だとすれば、宝の場所は散らされている。そう考えるのが自然だ。
(ここには無い。それなら、どこだ?)
浦見はホリーを連れて、彼女を拾った十字路まで戻る。自分が来た方向と、自販機があった路地裏の方向は別だ。残る方向は、あと2つ。
(ここを起点にして探せば、何か見つかるかもしれない)
男は路地裏の入り口で、抱えていた少女を地面に下ろす。自分の足で立った彼女は、彼を見上げて首を傾げた。
「……いいか。ここは何が起きるか分からないところなんだ。宝を見つけたら、俺は必ず戻ってくる。だからホリーは、安全な場所……この道の前で、待っててくれ」
アスファルトに膝をついて、少女と視線を合わせながら。彼は彼女の頭に手を置いて、言い聞かせるように告げた。
「……いや」
浦見の体の横にある、自分に伸ばされていない方の腕をホリーが掴む。彼女は必死な目をしていた。
「置いて、いかないで」
「……そうはいうがな」
男は迷った。即死トラップだらけの場所で、少女と探索していいものか。
「おじさんがなんて言っても、私、待たないよ。勝手についてく」
彼女は真剣な表情で続けた。その返答に、彼も覚悟をして立ち上がる。
「……分かった。なら、せめて俺の目の届くところにいろ。勝手に物に触るんじゃねえ。……約束できるな?」
少女は男の問いに真顔で頷く。そして2人は、十字路の先へと進んでいった。
1/推測
「ある事柄をもとにして推量すること」
ーー推量とは「物事の状態・程度や他人の心中などをおしはかること」
2/起点
「物事の始まるところ」
3/探索
「未知の事柄などをさぐり調べること」
4/覚悟
「危険なこと、不利なこと、困難なことを予想して、それを受けとめる心構えをすること」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




