第3話:おじさんは幼女に話を聞きます
「ホリーか。俺は浦見だ。ここは危ない。俺と一緒に、来てくれないか?」
金髪の少女は、無言で伸ばされた手を取った。それを肯定と受け取って、男は彼女を抱え上げる。
「……よし。いい子だ」
女の子は、あまり口を開かない。無表情で、彼を見つめている。その姿は西洋の人形と見間違えそうなほどだった。
「君はどこから来たんだ。あの真っ白な部屋にいたのか?」
「……知らない。目が覚めたら、あそこで寝てた」
「そうか……」
浦見は彼女の答えを聞いて、考え込む。その直後に、甲高い呼び出し音が響いた。彼は驚き、音がした方に目を向ける。ビルの壁面に取り付けられたウインドウに、白い文字が映った。
「おめでとう! 1人目の通過者が出たよ!
通過できる人の数には限りがあるから、
みんなもこの調子で頑張ってね。
残り人数:39人」
そんな文章を見て、男は渋い顔をする。主催者の目的は不明だが、早くしないと自分も少女も脱出できなくなると思って。
(俺だけなら、まだいい。だが……)
彼は横目で、腕の中にいるホリーを見た。彼女は文字を見ているが、はたして理解しているのか。表情からは伝わってこない。
「……なあ、ホリー。宝物って、何か分かるか?」
問いかけに、少女は首を横に振る。無理もないと、浦見は思った。
(となると、これからどうするか……)
建物の中と外。どちらも危険だが、それでも外の方がいいだろうと。結論づけて、彼は再び歩きだす。視界の隅に映る路地裏で、誰かが自販機の下をあさっていた。浦見はその人物に話を聞こうと思って、自販機に向かう。茶髪の青年は、彼の目の前で硬貨を取り出した。それは、くすんだ古い5円玉。
「……あれえ? 確かに光ってたんだけどな……」
アスファルトに座った彼は、古い硬貨を見てガッカリする。それでも彼は諦めきれず、その5円玉を、穴が開くほど見つめていた。
「でもこれ、何だっけ……。俺、なんか覚えてるような……」
「あー、ちょっといいか」
浦見が男に声をかける。その瞬間に、彼は叫んだ。
「……そうだ、アレだ! ばーちゃんから貰ったやつ!」
男が声を上げた直後に、2回目の呼び出し音が鳴る。それと同時に、ウインドウに映る数字が変化した。1人から2人。39人から38人。
(……これは、つまり)
浦見はウインドウを見て確信する。男は宝を見つけたのだと。喜ぶ青年は、彼らには気づかず、立ち上がってガッツポーズをする。そして硬貨を握りしめて、その場を離れた。
「……あっ! おい、ちょっと……!」
声をだしても、もう遅い。茶髪の男は行ってしまった。突然すぎて、追うこともできず。浦見はそこで立ち尽くす。ホリーは感情の読めない目で、彼の観察を続けていた。




