第2話:おじさんは幼女を見つけたようです
(しかし暗いな……電気は通っていないのか?)
外と同じ、黒い壁。床も同じ色で、来た道が分からなくなる。
(こんな状況で、宝探しなんかできるのか? そもそも宝って、何なんだ)
ディスプレイに映った影は、宝の形状を伝えなかった。それで探せると、本当に思っているのだろうか。
(もしかしたら。宝探しではなく、俺たち全員を殺すことが目的なのかもしれない)
白い部屋にいた人々は、若くても20代。今の浦見より年をとっている者は、いなかった。主催者が誰かは分からないが、どこかで出会っていて、憎まれるようなことをしたのかもしれない。
(って、考えてても、分からねえな)
彼には自分の記憶がない。誰とどんな関わり方をしていたのか思い出せないのでは、心当たりを探すこともできないと。そう思って、男はビルの外に出る。駐車場の方から、錆びた鉄の臭いがした。そちらに向かうと、閉じたシャッターの隙間から、赤黒い液体が流れ出している。
「……な、なんだよこれ……。どうなってんだよ……!」
滲みだす液体……血だまりの前で、金髪の男が腰を抜かしている。浦見は少し迷ってから、その男に声をかけた。
「どうかしたのか」
「……っ?!」
男が飛び上がり、逃げだす。けれど動揺していたせいか、その動きは鈍かった。よろよろと立ち上がり、ほうほうの体で逃げ出す彼を、浦見は追わない。
(無理もねえ。これは、本物の血だ)
赤い液体の前にしゃがんで、彼はそれを確かめる。ここで人が死んでいて、金髪の男はその一部始終を目撃した。そう考えれば、怯えるのも当然のことだ。
(アイツが俺を、主催者と勘違いした可能性もあるしな)
街は静まりかえっている。あの場にいた多くの人々は、どこに行ったのか。殺されたのは、何人か。
(まずは情報を集めねえとな)
浦見は周囲を警戒しながら、道を歩く。道路に車の姿はないが、念のため。歩道を選んで、彼は進んだ。道の先、十字路の真ん中に、何かある。小さな、丸い塊。近づいてみると、それは小学生くらいの女の子だった。体を丸めて、横たわっている。
「……おい! 大丈夫か?」
子供が、こんな場所にいるわけがない。そう思いながらも、彼は声を張り上げて駆け寄った。少女が目を開けて、まばたきする。
「どこか痛いところはないか」
彼女の前で膝をついて、浦見はその目を見ながら言った。蜂蜜色の髪に、エメラルドの瞳。人形のように整った顔をした子供は、黙って彼を見上げている。
「お前、名前は? 親はいるのか?」
「……ホリー」
透きとおった美しい声で、彼女は答える。宝石のような目に、浦見は吸い込まれそうになって手を伸ばした。
1/一部始終
「成り行きの初めから終わりまで」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




