第59話:ゲームクリア?
「だるまさんがこ~ろんだ!」
参加者の数が減ってきたころに、歌のリズムが変化する。浦見は内心で舌打ちした。
(……タイミングをズラそうとしてんのか。俺たちが慣れたところを狙って……)
彼の横に、坂井が並ぶ。違う歌が聞こえていても、その足取りには迷いがなかった。
「……なんて顔、してるのよ」
歌と同時に、声が聞こえる。聞き覚えのある声に、男は苦い顔をした。
「あなたのことだから、このくらい予想してたでしょ。リズムが変わる前に、クリアすれば良かったのに」
話しながら、彼女は彼を追いこしていく。その表情は、明るかった。
「知ってたわ。あなたはそういうことができないって。……でも、あの子たちはもういない。あなたなら、この言葉の意味が分かるわよね?」
そう言って、坂井はバケモノの肩に触れる。その姿が、白い光に包まれて消えた。それと同時に、歌がやむ。
(……そうか、あいつは。追いかけてこいって、言ってんのか)
バケモノの顔がこちらを向く。赤い目を見つめながら、彼は思考を続けた。
(俺はいつでもクリアできる。だが、あいつらを置いてはいけねえ。どこかで振り返って、現状を確認する必要があるとは思ってたが……。あいつはきっと、そうさせないために伝えたんだな)
彼女の言葉を、彼は疑っていなかった。そんな嘘をつく意味はない。まして。
(どいつもこいつも、まだガキだ。あいつからすりゃあ、保護対象だろ)
男はとうに悟っていた。坂井が子供たちに優しい理由は、おそらく。
(俺と同じ、立場だからだ)
歌が流れ始める。早口のそれが終わる前に、浦見はホリーの手を掴んで、目の前のバケモノに向けて伸ばす。
(あいつは、見た目は若くとも、中身はそうじゃねえ。俺と同じ大人で、できることなら、子供は守りたいと願っている)
2人の手がバケモノに触れる。柔らかい皮膚の感触を、一瞬だけ感じとって。彼らは光に包まれた。
(……ああ、やっぱりな)
白い光の中で。男は初めて、背後に目を向ける。まだ、生き残っている参加者はいた。だが、そこに十矢と深命はいない。その事実が鉛のように、彼の心を重くする。
(……なあ、坂井。お前も同じ気持ちだったか? それとも、お前は……)
白い光が視界を埋める。そして気づけば、彼は再び、四角い部屋の中にいた。灰色の鉄板に囲まれた、無機質な部屋。そこには先に坂井が来ていて、彼を見つけてニッコリと笑う。
「……ああ、良かった。あなたが私を信じてくれて」
1/足取り
「歩くときの足の運び方。歩調」
2/現状
「現在の状態、ありさま」
3/悟る
「隠されているもの、また自分の運命などについて、それと気づく。感づく。察知する」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




