第55話:第3ゲームの終わり
話すことも、やがて尽きて。暗闇の中で、彼らはただ、待っていた。そして。地下室の扉が開くこともなく、その時は唐突に訪れる。
「パンパカパーン! おめでとう! 今、生き残ってる君たちはゲームクリア! 次のゲームに進めるよ。引き続き、頑張ってね〜」
これまでもたびたび聞こえてきた、奇妙なほどに明るい声。それが響きわたると同時に、地下室の中は明るくなる。
「っ、く……」
眩しさに目を細める。そして、その瞬間に。浦見は昔のことを思いだした。
『……助けて』
誰かに腕を。いや、服のすそを掴まれた。それはいつ、どこで、誰に――
(……関係ねえ)
男は頭を振って、脳裏に浮かんだ過去の情景を追いはらう。
(俺には必要のねえもんだ)
記憶にある手は、とても小さかった。それが何より、彼の胸を波だたせる。
(バカバカしい。こいつは誰かの、代わりなんかじゃねえ)
男の隣には、もはや見慣れた少女がいた。金髪碧眼の、美しい子供。目を細めて、その顔を見ながら。彼はゆっくりと深呼吸する。
「……また、扉があるな」
しばらくして。明かりに慣れた浦見は、部屋の中を見回して言った。その目線の先。反対側の壁には、古い木製のドアがある。そのことを確かめて。坂井は立ち上がり、歩きだした。
「どうせ進むしかないんでしょう? はやく行きましょ」
作り物のような笑みで、そう告げて。彼女は向こう側にたどりつき、扉に手をかける。反対に。男は動かず、青い顔をした少年たちを見た。
「……立てねえのなら、手を貸すが」
「……平気、です」
硬い声で呟いて。深命は、十矢と支えあいながら立つ。その様子からは、明らかに。無理をしていることが分かった。
「……なあ、ホリー」
浦見は渋い顔のまま、少女に声をかける。
「お前さんは、帰りたいのか?」
「……私は」
彼女はそれまでと何も変わらず、無色透明な声で答える。
「これから先も、おじさんについていきたい。帰るときは、一緒がいい」
「……そうかよ」
男は真顔で、少女と向かいあう。扉の前にいる坂井たちの視線も無視して、彼は真剣な声をだした。
「だがな、ホリー。覚えておけ。もし、1人しか帰れねえなんて話になれば……」
2人の目が合う。黒と緑の視線が交差した。
「俺はお前を優先する。そうなったら、迷わず進め」
浦見の言葉に、ホリーは肯定も否定も返さなかった。そして、彼も。言うだけ言って、少女を抱え、3人が待つ扉に近づく。そこは狭い室内だ。声は聞こえていたはずだが、誰も何も言わなかった。
1/脳裏
「頭の中。心の中」
2/情景
「心にある感じを起こさせる光景や場面」
3/波だつ
「心が動揺する」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




