第50話:選択(前編)
「……とりあえず、座りましょうか。僕たちがここにいることも、すぐにはバレないと思いますし」
深命の提案で、5人は部屋の真ん中に集まり、輪になって床に腰を下ろす。そうしながら、十矢は不安そうな顔で言った。
「今って、どのくらいの人が残ってるんだろ」
「……さあね。私たちがいた場所は、あのイモムシに襲われていたし……多分みんな、食べられてるわ」
暗い顔をした坂井が、彼の問いに答えて俯く。ホリーはその手に、そっと自分の手を重ねた。その様子を見ながら、今度は浦見が口を開く。
「……残ってる奴がいるとしても、そいつは個人行動だろうな。ここと、前にいた場所以外に……大勢で隠れられそうなところはない」
「つまり、僕たちがここにいることは、いつかバレると……?」
「そうなるだろう。あいにくと、俺たちはかなり目立っちまった」
深命の質問に。肯定を返して、男は続ける。
「だから、まあ……こうなったら、道は1つしかないな」
「……それは?」
彼と少年の視線がぶつかる。浦見は深々と、息を吐いた。
「……地下室に入って、扉を閉める。あの高さなら、一方通行になるって話は、前もしただろ。それは他の奴だって同じだ。出られない落とし穴みたいな場所だが、鬼が入ってこない限り、安全は保証されている。そして最も重要なのは、鬼を連れてこようとしても、その前にそいつが見つかるってことだ。鬼がいる方に、自分から向かっていくことになるからな」
「……でも。もし、それでもいいって人がいて。地下室に鬼が入ってきたら?」
十矢が怖がりながら聞く。男は子供たちを見ながら告げた。
「そりゃあ全員、死ぬだろうよ。……だから俺は強制しねえ。決めるのは、お前らだ」
淡々とした声が室内に響く。十矢はギュッと、両手を握りしめた。
「私はおじさんに付いていくよ」
そんな中でも。ホリーは今までと同じように、すぐに返す。5人の中で1番幼い彼女は、柔らかな笑みを浦見に向けた。
「だってそれは、死ぬときも一緒だってことだから。怖くないよ」
「……ええ、そうね」
坂井が横から彼女に抱きつき、顔を寄せて話す。
「私も最後まで、ホリーちゃんの側にいるわ」
少年たちが黙りこむ。浦見はそれまでと同じ口調で、言葉を添えた。
「……こいつらはこう言ってるが、別に好きにしていいからな。お前ら2人だけで隠れるのなら、他にも候補はあるだろう。なんなら、次の隠れ場所を、一緒に探してやってもいい。だから、まあ……後悔のない、選択をしろ」




