第43話:異変(後編)
「それはいいけど、どうやって入るの?」
坂井は苦笑を浮かべて言った。
「箱の外側に、ハシゴか階段でもあればいいけど。何もなかったら、中には入れないと思うわ」
「……う。確かに……」
正しい指摘に、根巳が落ちこむ。その間に、浦見は十矢と深命を連れて戻ってきた。2人の少年は、男を両側から挟んで、くっついている。その姿を見て、根巳は少し気まずそうにしながら聞いた。
「……あ、ルイ! こっちに来て、大丈夫なの?」
「……うん。浦見さんが一緒なら」
怯えながらも、十矢はしっかりと頷く。その手は男の服を、しっかりと掴んでいた。根巳はそんな友人の様子から目をそらして、少し拗ねた口調で話す。
「……そっか。確かに、浦見さんって強いもんね」
「それに信頼できるから。……裕太も分かってるだろ? この人がいてくれたおかげで、僕らはここまで生きられたんだって」
彼の言葉に、今度は深命が言い返した。彼は浦見から離れて、根巳の前に立つ。そして身を屈めて、片方の手を差し出した。
「子供っぽいワガママは、そこまでにして。一緒に、このゲームをクリアする方法を考えようよ」
「……もういいよ!」
深命が伸ばした手を、振り払って。根巳は立ち上がり、叫んだ。そのまま彼は、外に飛びだす。
(オレはおじさんには頼らない。ううん、誰にも頼らない。オレは1人で生き残るんだ)
イモムシはまだ、ドールハウスの方にいた。だから平気だと、そう思って。彼はびっくり箱の方に向かう。
(……階段か、ハシゴ。ハシゴなら、入り口にあったから。あいつの目に映らないようにして、持ってくれば)
少年が箱の裏に回り、その外側に背をつける。彼には1つだけ、考えていないことがあった。人が来たことで、びっくり箱のフタが開く。その中から、バネのついた人形が顔を出した。笑っている、ピエロの人形。その目が根巳に向けられて。
「見ぃつけた」
不気味な声が、頭の上から聞こえたときには、すでに。彼の視界は、人形によって塞がれていた。
「……あれ? え、鬼って、あいつだけじゃ……」
「そんなルール、あったっけ? かくれんぼの鬼は、増えるものだよ」
ニヤニヤと。笑うピエロが、口を開ける。大きく開いた口の奥には、鋭い歯が並んでいた。
「や、やだ、やめ……」
少年は、最後まで言いきることもできず。ピエロに頭から食われてしまった。叫び声も、響くことはなく。その場には、赤い血が少し垂れただけ。少年を飲みこんだ人形は、満足そうに笑いながら、再び箱の中にもどっていった。
1/指摘
「大切な点や注意すべきこと、欠点や過失などを具体的に取り上げて指し示すこと」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




