第41話:事情判明
床を這う大きなイモムシが、列車の模型にぶつかりながら通り抜けていく。模型が大きく揺れて、その中にいた6人は、とっさに姿勢を低くした。
「……おい、お前ら。平気か?」
イモムシが去ってから、浦見は子供たちに声をかける。男と同じ場所にいた3人は、揃って首を横に振った。彼らの姿を見て、浦見は告げる。
「よし。俺は向こうの様子を見てくる。念のために、お前らはここから動くなよ」
そう言ってから、彼は身を屈めたまま、運転席の方に向かった。十矢と深命は、互いに体を寄せあって、床の上でしゃがんでいる。
「……2人ともいるな。ケガはねえか?」
「……はい、なんとか」
男の言葉に、深命が答える。彼は側にいる友人から手を離さずに、目線だけを動かした。
「……やっぱり、おじさんには伝えておくべきですよね」
「いや、無理にとは……」
「いいんです。……瑠衣の望みでもあるし」
口ごもった浦見に向けて、少年は真顔で言う。十矢も小さく頷いた。そして彼は、か細い声で言葉を落とす。
「……何も言わないで、気づかってほしいっていうのは、ワガママだから」
そう前置きしてから、少年はゆっくりと、彼が思い出したことを喋った。学校では1人ぼっちだったこと。暗いと言われて避けられていたこと。そして。根巳に持ち物を隠されたことも。
「……覚えてるのは、それだけなんだ。でも……」
「僕も同じ記憶を持ってる。だから事実なんだと思う。……もっとも、その頃の僕は。自分には関係のないこのとだと思って、関わらなかったけど」
深命が彼の後に、言葉を続ける。浦見は渋い顔をした。
「だから十矢を守ってんのか。せめてもの罪ほろぼしとして」
図星を指されて、深命が目を伏せる。男は自分がいた方を見ながら、話を進めた。
「確かにそういう話なら、根巳の前ではできねえな。それでお前らは、どうしたいんだ。このまま、あいつから距離を取り続けられると思ってんのか? 今はいいが、この状況に慣れてきたら、あいつは絶対に事情を聞きだそうとしてくるぞ」
彼の指摘は正確だった。少年たちは、顔を見合わせて黙りこむ。それを見て、浦見はため息をついた。
「……まあ、いい。これはお前らの問題だからな。俺の協力が必要なら、そう言ってくれ」
彼の口調はぶっきらぼうだったが、その根っこには優しさがあった。2人の少年は、それを感じて顔を上げる。男は構わず、元の位置に戻っていった。
「……僕は、あの人のことは信用してる」
「……うん。ボクも」
浦見の姿が、完全に見えなくなると同時に。深命がポツリと言葉を落とす。十矢も同意の言葉を返して、それを最後に、彼らは再び口を閉じた。
1/前置き
「文章や談話などで、本題に入る前に述べること。また、その言葉」
2/罪ほろぼし
「善行をして過去の罪のつぐないをすること」
3/図星を指す
「物事を推察してぴたりと言い当てる」
4/指摘
「大切な点や注意すべきこと、欠点や過失などを具体的に取り上げて指し示すこと」
5/ぶっきらぼう
「物の言い方や挙動などに愛想がないこと。また、そのさま」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




