第40話:もう1度、みんなで(後編)
列車の模型は、窓や入り口のところに穴が開いていた。そのためか、ドールハウスとは違って、他の参加者の姿は見えない。坂井たちが着いたときには、運転席の中で、少年たちが向かいあっていた。
「……あ。おじさんたちも、来たんだ」
黙ったまま俯いている十矢と、心配そうに彼を見つめている根巳。そんな2人の間で、挟まれていた深命が、3人の方を見て言った。
「いいの? 集まってても……」
「ええ。私たちがいた所は、もっと人がいたもの。……それよりも、十矢くんは大丈夫?」
穏やかな笑みで、坂井が返す。十矢は胸元で手を合わせたまま、小さな声で呟いた。
「……ごめんなさい」
「さっきから、ずっとこんな感じなんだ。虫が苦手なのかなぁ」
彼の言葉に続けて、根巳が軽い口調で話す。浦見はあえて追求せずに、座席の方に目を向けた。
「……なら、外が見える向こうより、ここにいた方がいいだろうな。根巳、行くぞ。窓に穴が開いてても、床に座れば見えなくなるだろ」
「そっか。席に隠れることになるから……。でも、ルイはほっといていいの?」
「僕が見ておくから、平気だよ。……瑠衣のことを思うなら、今はそっとしておいて」
声をかけられた少年は、離れがたい様子を見せる。だが、深命の後押しもあって、何度も振り返りながら座席の方に向かった。そして、列車の床に座りこみながら。根巳は肩を落とし、言葉を発した。
「……どうしたのかな。ルイもアキも、変わっちゃった」
「……色々あって、混乱してんだろ。無理もねえよ。こんな場所じゃな」
彼の隣に並んだ浦見が、気づかうように声をかける。坂井が反対側に移動して腰を下ろし、足を伸ばした。
「あの子たちには、本人にしか分からない苦労があるんでしょうね。……それかあなたが、何かしたか」
「オレは覚えてないんだよ〜! なんで、それぞれで思い出すことが違うの?」
涙声で、根巳が言う。坂井はその背を撫でながら、柔らかな声で続けた。
「ほら、泣かないの。男の子なんだから、しっかりなさい」
その言葉に、浦見は目を細める。彼女の態度には、どこか余裕があった。
(……まるで、母親を見てるみてえだ)
そう思ってから、彼は苦笑を浮かべる。
(もし、坂井の年齢が、見た目どおりじゃなかったとしても。悪いことじゃねえだろう。今はむしろ、良い方に働いてるみたいだしな)
彼女に慰められて、明るい顔になった根巳を見て。男は気を取りなおし、座席の上から顔を出して外を見た。黒いイモムシは方向を変えて、元のルートに戻っている。
1/がたい
「動詞の連用形に付いて、その動作の実現が困難であることを表す。…しにくい。…するのがむずかしい」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




