第39話:もう1度、みんなで(前編)
向こう側でズルズルと、大きな生き物が這いずり回る。その音が遠ざかった後に、浦見は再び外を覗いた。真っ黒なイモムシは、オモチャの間をむりやり抜けて、壁に向かって進んでいく。顔の位置も分からないバケモノ。だが、進行方向から考えれば、前後は判別がつけられた。
(……今なら、奴の目に入らずに動けそうだな。とはいえ……)
坂井たちはドールハウスに。深命たちは列車の模型の中にいて、それぞれの場所は離れている。
(行けるとしても、どちらか片方。……十矢の様子も考えると、今はそっちに合流すべきじゃねえな。となると……)
男はドールハウスの方に目を向ける。その横から、根巳が顔を出してきた。
「やっぱ、ホリーちゃんのことが気になる? 行ってきていいよ。オレはアキとルイのいるとこに行くから」
「……いや、それは……」
浦見は迷って、言葉を続ける。
「お前を1人にするのは、さすがに……」
「だいじょーぶだって! 任せてよ!」
少年はそう言って胸を張り、男の言葉を聞かずに飛びだしていった。残された男は、追いかけるかどうか迷って、その場で止まる。
(……いや。今、俺が追っても、あいつを警戒させるだけだな。行くなら坂井とホリーも一緒でねえと……)
最終的に、そう考えて。彼はドールハウスの方に行く。2つ折りのオモチャの家には、坂井たち以外にも、数人ほどの人がいた。
「……あ! おじさん……!」
浦見がオモチャの棚の裏に向かうと、そこで小さくなっていたホリーがパッと顔を上げた。
「……無事だったのね。良かった」
坂井も表情を和らげる。男は落ち着かない様子で、周囲を見ながら告げた。
「……ある程度まとまってても、すぐに殺されるようなことはなさそうだな。ちょっと付き合ってもらえるか?」
「いいわよ。……おじさんのことだから、あの子たちの面倒も見たいんでしょ」
苦笑を浮かべて、少女が返す。彼女はホリーの手を取ったまま、立ち上がった。
「根巳くんは、先にあっちに?」
「……ああ、まあな。あいつらだけで、解決できる問題ならいいんだが……」
「そうじゃないと思ってるから、合流したいのね。……私も同感。だから早く、行きましょう?」
ニコリと笑って、坂井が浦見の前に立つ。男はその背を見つめて、目を細めた。
(……こいつも、何か思い出したことがあるんだろうな)
明らかに、前よりも積極的になっている。そんな彼女に、彼は何も言わずに付いていく。3人はイモムシの目に入らないようにしながら、列車の模型がある場所を目指した。
1/判別
「はっきり見分けること」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




