第36話:ゲームが始まるまでの一幕
「……しっかし、今まで以上にわけの分からん場所だな、ここは」
側にある、大きなクマのぬいぐるみを見上げて。浦見が呟く。薄いピンク色の床の上には、他にも様々な物が乗っていた。
「なんか、オモチャ箱みたいだよね。ほら、向こうには列車の模型があるし」
周囲を見回して、根巳が言う。十矢と深命は、少し離れた場所にいた。
(……なんかあったのか?)
以前に比べて、距離を感じる様子。その姿に、男は目を細める。彼は根巳に気づかれないように、十矢たちに近づいて話しかけた。
「……おい。お前らは何を、思い出した?」
床に置いてある大きな積み木を持ち上げようとして、苦労している。そんな根巳を見ながら、浦見は小声で問いかけた。十矢が目を伏せて、体を縮こまらせる。
「……すいません。それは、言えないんです。個人の事情ですし……。そもそも、この記憶が本当に正しいのかも、僕たちには確信が持てないので」
彼の代わりに、深命が答える。男はため息をついて告げた。
「……分かった。話す気になったら、教えてくれ」
そんな話をしている横で。積み木を運ぶのを諦めた根巳が、ビニール製のボールを転がして、ホリーのいる場所まで運んでくる。ホリーは大きなボールを見上げて、その表面を指先でつついた。
「ピー、ガガー……」
そこに、先ほどよりノイズが強くなった電子音が割りこむ。男は険しい表情を浮かべた。
「お知らせ、お知らせ、オシラセデス。ゲームに参加しない場合は、強制的に、殺しマス。ハシゴをおりて。オリロ。オリロ、オリロ、オリロ……」
不気味な電子音と共に、上の階から重い物が落ちるような音が聞こえてくる。浦見は声を張り上げた。
「……おい、お前ら! こっちに来い! 集まった方が、安全だ!」
坂井とホリーが、慌てて彼の言葉に従う。根巳も2人の後についてきた。その姿を見て、十矢が深命にしがみつく。浦見は黙ってこっそりと、十矢たちと根巳の間を遮るように移動した。2人は安心したような顔で、彼を見る。上からは、他の参加者たちが1人ずつ、下りてきていた。彼らはみな、青ざめた顔をしている。
(……何があったのか、想像はつくが……)
男は腕を組みながら、ハシゴを伝う人々を見つめた。オリロと繰り返す放送は、まだ続いている。
(その気になりゃあ、俺たち全員を殺すことも、簡単にできるだろうに。この放送を流してる奴は、どうしてゲームに拘るんだ?)
彼が首を傾げる前で、参加者たちは1人ずつ下に移動してきた。やがて、下りる人もいなくなり、上から重い物が崩れたような音が聞こえてくる。放送もブツリと切れて、後から下に来た参加者たちは怯え顔で下を向いた。
1/確信
「かたく信じること。信じて疑わないこと」
この後書き内での説明は、コトバンクの『精選版 日本国語大辞典』から引用したものです。




