第35話:次の部屋へと
「……おじさん、起きて」
坂井の声が聞こえてきて、浦見は目を開けた。トタンの床が目に入る。
「……ああ、悪いな。もう朝か」
そう言ってから。彼は彼女の顔色が、少し青ざめていることに気づく。
「なんかあったか?」
「……いいえ。ただ、悪夢を見ただけよ」
少女は明らかに、無理をしているようだった。男は目を細め、周囲を見回す。参加者たちは浮かない顔で、少年たちも元気がない。
(……夢、ねえ)
彼には心当たりがあった。自身も眠っている間に、警察官として働いていたころのことを思い出していたから。
「……あー、なんだ。まあ、気にするな」
頭をかきながら、浦見はゆっくりと立ち上がる。その姿を見て、少年たちが寄ってきた。
「……ねーねー、おじさん。向こうに抜け穴があったんだって。見に行かない?」
比較的、元気な根巳が彼の手を引く。男はため息をついて、彼と一緒に歩いていった。倉庫の左奥、隅の方に人が集まっている。
「すまねえな。通してくれ」
声をかけながら、彼は参加者たちの間をかき分けて進んだ。床の端に、四角い穴が空いていて、そこにハシゴがかかっている。
「さっき急に、床が動いて……」
前の方にいたポニーテールの女性が、小声で呟く。浦見は体の向きを変えて、ハシゴを伝って下りていった。暗い縦穴を通った先は、パステルカラーの物に囲まれた空間になっている。ザッと見ただけでも、今までに比べて、色々な形の物がたくさんあった。
「……あー、あー」
ノイズ混じりの音が、室内に響く。聞き慣れてしまった電子音に、男は渋い顔をした。
「テステス。えー、お知らせです。次のゲームに参加する人は、すぐにハシゴを下りてください。その倉庫は、30分後に壊れます。繰り返します。次のゲームに……」
上が少し騒がしくなる。浦見は舌打ちをして、ハシゴの下から横にズレた。上から、人が1人ずつ下りてくる。最初は根巳だ。彼は男と目が合うと、困ったような顔をした。
「……今の、おじさんも聞いた?」
「それを俺に聞くってことは、お前らも聞いたんだな。向こうはどうなってる?」
「もう、大混乱だよ。下りる下りないで、言いあってる。オレたちとあの人たちは、すぐに動けたんだけど……他の人は、まだ無理かな」
彼がそう言う間に、深命と十矢が下に来る。彼らに続いて、坂井たちも降りてきた。
「……なんで、お前ら……」
「おじさんを1人にできないでしょ」
苦々しげな男に向かって、少女は淡々とした声で告げる。その後ろで、ホリーも黙って頷いていた。




