第34話:鬼ごっこの終わり
6人は、朝から晩まで歩き続けた。
「こんばんは。そしておめでとう。幸運にも、君たちは生き延びた!」
真夜中。聞き覚えのある電子音が森に響く。だが、今回は違うところがあった。
「……いや。ただ1人にとっては、これは幸運ではないのかもね? 素晴らしい。最高の見世物だった! 僕の立場上、贔屓は良くないことだけど……。それでも、せめて。惜しみのない称賛を贈らせてもらおう。初めてのゲームで、反則スレスレの攻略法を見つけるなんて……! とてもすごいことだ。そしてとても面白かった!」
電子音が高くなる。性別も年齢も分からないが、その音には明らかに感情がこもっていた。子供たちが、浦見を見る。電子音は、構わず続けた。
「その調子で、次も頑張って。出口は右だよ。まっすぐ行ってね」
音が切れる。始まったときと同じように、唐突に。男はため息をついて、右に曲がった。
「……今のって、褒められたのかな?」
歩きながら、根巳が口を開いた。坂井は険しい顔をする。
「こんなことをする奴に褒められても、嬉しくないわ。そうでしょ、おじさん」
「……どうでもいいさ」
浦見は前に進みながら返す。
「奴らが何を考えているのかは知らんが、今までどおりならこの先に出口があるんだろう。まずはそこを目指そうぜ」
男が言ってから、しばらくして。森の中に、建物が見えた。中くらいの大きさの倉庫。青い屋根に、赤い錆が目立つ銀色の壁。両方とも、トタンで作られている。彼は警戒しながら、扉を開けた。中には既に、数人ほどの参加者がいる。誰も彼もが疲れているようで、見知らぬ人間が入ってきても、声すら上げない。
(……仕方ねえよな)
浦見は子供たちと共に、部屋の隅に固まった。安心すると同時に、男は強い眠気に襲われる。
(……変な話だ。飲み食いの必要はないってのに、これだけはある、なんて……)
目を閉じて、思考しながら。男は夢も見ない、深い眠りに落ちる。寝息を立て始めた彼に、両側から寄り添って。坂井とホリーも、寝ることにした。
「……仲いいよね。おじさんのことを考えたら、当たり前かもしれないけどさ」
その様子を見て、根巳が羨ましそうに呟く。深命と十矢が、彼の手を引いて、少し離れた場所に位置取る。
「僕たちも、こっちで少し休んでいよう。みんなが集まるまで、まだ時間はあるだろうし」
深命の提案に、反対の声はなかった。少年たちは浦見たちから距離を取って、3人でまとまって寝る。トタン作りの倉庫の中で、彼らだけは、心に余裕があるようだった。
1/惜しみ無い
「出し惜しみしない」
2/称賛
「褒めたたえること」
3/唐突
「だしぬけであること。また、そのさま。突然」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




