第33話:第2ゲーム、最後の日
3日目も、浦見の様子は変わらなかった。テントから出てきた坂井が、目をこすりながら声をかける。
「……おはよう、おじさん。今日も昨日と同じかしら?」
「……まあな。他にやれることもねえ」
渋い顔をして、彼は返す。その姿も、いつもと同じだ。けれど。
「少しくらいは、休みを取ってもいいんじゃない? あの黒い人たちも、追ってきている感じはしないし……」
男を気づかって、少女は言う。テントから出てきたホリーも、もの言いたげに彼を見つめた。少年たちは、まだ起きていないのか、テントの方に動きはない。
「……俺は、止まるべきじゃねえと思ってる」
そこにいるのが、見慣れた少女たちだけであることを確認して。浦見は小さな声で告げた。
「これは鬼ごっこだ。馬鹿なことかもしれねえが、最低限。動き続けていたいんだよ」
坂井の目つきが厳しくなる。彼女はこのゲームに参加する気などない。そのことは理解した上で、男は本気で話していた。
「鬼は、あの黒い奴らだ。あいつらは俺たちを追いかけている。俺たちがルールに則っている間は、その速度は変わらない。歩きでも十分に逃げられるだろう。だが、もしも足を止めたなら。奴らはそこを目指してくる」
「そんな、まさか……」
坂井が反論しそうになる。その後ろで。ちょうど起床して、テントから這いだしてきた深命が、2人の話に口を挟んだ。
「……やっぱり、そうか。あなたが、何も考えずに動き続けるなんてこと、するはずない。始めから、僕たちのことを守ってくれていたんだね」
浦見が眉間にシワを寄せる。坂井はそれを見て、ため息をついた。
「私はどうしても、まともに参加する気にはなれない。でも、おじさんの見立てなら信じるわ」
男は何も答えなかった。テントの入口。布がめくれて、根巳たちも出てくる。立ち上がって、背を伸ばしている彼らを横目に。浦見はテントを片付けた。中に入って支柱を抜き、体の上に覆い被さる布の下から抜けだす。ペグがわりの小枝を抜いて、広がった黒い布をたたむ。彼の行動に、口を出す者はいなかった。
「……よし、行くぞ」
やがて。作業を終えて、男は告げる。彼は支柱にしていた枝を布で包んで、深命に渡した。
「どんなに長くても、期間は今日の夜までだ。気合いを入れて、あと少しだけ頑張ろうぜ」
子供たちが黙って頷く。根巳がそれまでと同じように、気楽な口調で言葉を発した。
「つまり、今日を乗りきれば終わりってことでしょ? そのくらいなら、大丈夫! おじさんもいるし、なんとかなるよ!」
1/則る
「規準・規範として従う」
2/見立て
「こうだろうと予測すること」
3/ペグ
「テントを張るときに用いる杭」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




