第30話:埋葬(後編)
冷たくなった子供の体を、穴の中に横たえる。そして浦見は、穴の横に積み上げられた土を、遺体の上に被せ始めた。重苦しい沈黙が、周囲を満たす。
「……その子、笑ってるよね」
その空気に。根巳は耐えられなくなって、口を開いた。亡くなった少年の体は、もう半分ほど埋められている。
「おじさんがいたから、だよ。だからさ、その……」
「……ああ。そんなことしか、できなかったな」
低い声で、男は返す。根巳が精一杯、気づかいながら話していることは、彼にも伝わっていた。ただ、それでも。悔しさは消しきれず、浦見は手を動かしながら続ける。
「分かってるさ。俺だって。これはどうにもできないことで、誰にも罪はないんだと。……ただ、目の前で死ぬのを見ちまったからな。割りきれねえのも、確かなんだ」
男の言葉に、根巳が泣きそうな顔をする。その横にいた深命は、黙って動きだした。彼は少し離れた場所から、花を探して摘んでくる。
「……それなら、これも。お墓に供えてあげてください」
子供の遺体が埋まった、小さな山の上に。花を置いて、彼は浦見と目を合わせる。
「僕たちもあなたと同じです。あなたが救えなかったことを気にするのなら、一緒に背負いますから」
「……いや、お前たちには……」
「いいえ。彼の言うとおりよ。おじさんだけが、責任を感じることはないわ」
深命の言葉を、否定しようとした男を遮って。坂井がハッキリとした声で告げた。側にいたホリーが、大きく頷く。
「……そうだよ。おじさんは1人じゃないんだから」
2人にも言われて、浦見は無言で目をそらす。十矢がオロオロとしながら、口を開いた。
「……あ、あの。だったらみんなで、この子のために祈らない? だって、お墓も作って、お花もあって。他にできることがあるとしたら、それだけだから」
その言葉に。異を唱える者はいなかった。小さな土の山に向かって、6人は揃って手を合わせる。死した子供が、安らかに眠り続けられるように、願いをこめて。
「……よし、ここまでだ」
やがて男が、動きだす。彼はまだ、浮かない顔をしていたが。それでも自分が動かなければ、子供たちも動けないということは分かっていたから。
「こいつには悪いが、同じようにならないためにも。俺たちは前に進むしかねえ」
重い声音で、彼は告げる。そしてゆっくりと立ち上がった。坂井がホリーを連れて、男に寄り添う。少年たちも、それに倣った。こうして6人は、墓を後にして森の中に消えていく。墓の上に乗せられた花が、そよ風を受けて少しだけ動いた。
1/異を唱える
「反対の意見をいう。異議を唱える」
2/浮かぬ顔
「心配事などがあって晴れやかでない顔つき。沈んだ顔つき」
3/倣う
「すでにあるやり方、例をまねて、そのとおりにする。手本としてまねをする」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




