第27話:相談(後編)
「……だったらさ。今までどおりで、いいんじゃない?」
やがて。淡々とした声で、深命が言った。
「あの人たちは、これまでも僕たちを襲ってきたし。それはきっと続くと思う。逃げながら、どうしようもない時にだけ戦えば、おじさんの負担も少なくなる。僕はそう思うけど」
「ええ、そうね」
坂井が彼の言葉に頷き、根巳を見すえて告げる。
「おじさんにとって、私たちは足手まといなんだから。せめて迷惑にならないように、余計なことはしないでおきましょ」
「……そこまでは言ってねえだろうよ」
浦見はとっさに、ため息をつきながら口を挟んだ。
「根巳の話も、ホリーの話も。どっちも正しいと、俺は思う。だから折衷案としては、深命の話が1番だろうな。……つーことで、もう少し歩くぞ。俺たちは一応、追いかけられているんだからな」
彼の言葉に、文句を言う者はいなかった。男を先頭にして、彼らは再び進み始める。土の道を踏みしめながら、十矢が小声で呟いた。
「……それにしても、不思議だよね。ここってどう見ても外なのに、いくら歩いても人がいないの。おじさんたちに会うまで、ボクたち誰も見てないよ?」
「それはさあ、みんな隠れてるからじゃない? おじさんみたいに、あの黒い奴と戦える人なんて、そんなに多くないでしょ」
根巳が気楽な声で返す。十矢は目を伏せて、言葉を続けた。
「でも、たとえ隠れていたとしても……。森の中を、歩いてるんでしょ? だったらさ、ボクたちみたいに火をおこしたり……おじさんみたいに目印をつけたり、そういうことをするんじゃない?」
「……もし、そういうことをしてたとしても」
黙っていた深命が、そこで話に割りこんだ。
「そんな人は目立つから、あの黒い人に見つかって、殺されているんじゃないかな。だから僕たちは幸運なんだよ。黒い人と会う前に、おじさんに見つけられたんだから」
「なるほど、確かに! じゃあホントに、良かったな〜」
根巳が軽い口調で返す。背後の会話を聞いていた浦見は、黙って口元を引きしめた。
(……別に今だって、絶対安全なわけじゃねえが)
黒い人影が、どんな原理で、どう動いているのか。それは彼にも分かっていない。ただ、ゲームの性質に沿った動きをすることで、生き残る確率を上げているだけだと。男は思って、深々と息を吐き出した。
(……だが、まあ。あまり追い詰めても、良くねえよな)
子供に現実を突きつけすぎても、ロクなことにはならないだろうと。思い直して、浦見は何も言わなかった。
1/足手まとい
「物事をするときに、じゃまとなること。また、そのもの」
2/折衷案
「相反する案の中ほどをとって、折り合いをつけた案」
この後書き内での説明は、1はコトバンクの『精選版 日本国語大辞典』から、2は『デジタル大辞泉』から引用したものです。




