第26話:相談(前編)
「……それ、何?」
「黒いテントだ。木の枝を使えば組み立てられる。今夜からは、これを使え」
帰ってきた浦見に、ホリーが聞く。彼は、たたんだ黒い布を見せながら言った。その言葉を聞いて、根巳が顔を明るくする。
「やったー! わりと大きそうだし、きっとみんなで休めるよね! ねえねえ、今夜はおじさんも一緒に寝ようよ。一晩くらい、別にいいでしょ?」
「……悪いが、それはできねえ相談だ。これはお前らだけで使え」
黒いテントを深命に渡して、男は告げる。そして彼は話を続けた。
「心配すんな。お前らも聞いただろうが、このゲームの期間は3日だ。てことは、徹夜は2回……昨日を除けば、あと1回だ。そのくらいなら、何とかするさ」
「……でも!」
「……仕方ないよ。浦見さんに、任せよう」
納得できない様子の根巳に、深命が告げる。十矢も横で頷いていた。坂井は相変わらず、厳しい表情のままで口を開く。
「……ねえ、おじさん。そんなことより、食べ物や飲み物を探すのが先じゃない? 確かにペットボトルはあるけど、あれじゃ絶対足りないわ。ここには、おじさんも含めて6人もいるのよ」
「……まあ、そうなんだが」
浦見が腕を組む。彼は重い声音で続けた。
「なんつーか、森の中で探すより、あいつらを倒した方が早え気がしてな。俺も、この状況に毒されてるのかもしれん」
男の返答を耳にして、坂井が眉間にシワを寄せる。反対に、根巳は能天気な声で叫んだ。
「え? ……それ、めちゃくちゃ良い考えじゃん?! おじさんがいれば、楽勝でしょ! 欲しい物、何でも手に入れられるんじゃない?」
「ちょっと、あなたね……!」
坂井が声を荒げて、根巳に詰め寄りかける。浦見は彼女の前に手を伸ばして、その行動を制止した。
「まあ待て。……正直な、俺も同じようなことを考えたんだ。お前たちには隠れてもらって、俺だけで奴らと戦えば……最悪、失敗しても、俺が殺されるだけで済むだろうと」
彼の言葉に、少女の顔が青ざめる。彼女と手を繋いでいるホリーが、男を見上げて呟いた。
「……でも、私は。おじさんがいなくなったら、悲しいよ」
素直な言葉に、浦見も含めた全員が黙る。その場を沈黙が支配して、根巳が気まずそうに目を伏せた。坂井と深命は彼に冷たいまなざしを向けて、十矢はオロオロとし始める。そして男はしばらくして、頬をかきながら言葉を発した。
「……あー、まあ、なんだ。俺だって死にたくはねえからな。それは最後の手段にするさ」
1/能天気
「軽薄でむこうみずであること。のんきでばかげていること」
2/制止
「他人の言動を押さえとどめること」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




