第25話:調達
「つーことで、ここからは離れるぞ」
浦見は言って、右に曲がった。子供たちが、彼の後からついてくる。
「……なんか、道が分からなくなりそう。ねー、おじさん。目印ってどうやって付けてたの?」
その道中で、根巳が聞いた。男は振り返らずに返す。
「目印なんざ、要らねえだろ。戻っても小屋はないんだからな」
「え、でも……」
金髪の少年は、不安そうな顔をする。横にいた十矢が、気づかうように彼を見た。
「大丈夫。他にもきっと、同じようなところがあるよ」
「……だよね! ありがと、ルイ」
友人の言葉に、根巳は明るい表情になる。それを横目に見ながら、深命は男に近づいた。
「……浦見さんは、どう思います?」
「小屋はあるかもしれねえが、頼る気はねえな」
小さな声で問いかけられて、彼は同じだけの声量で答える。側にいた坂井が厳しい目をした。
「昨日のことは知らないけど、私はおじさんを信じてるから。外で寝る方が安全なら、我慢するわ」
「僕も同じ気持ちですけど……」
深命は、そっと後ろに目を向けた。少し離れた位置で、根巳が十矢と並び、支えあって歩いている。
「裕太は多分、無理ですよ」
「……まあ、だろうな」
男はため息をついた。
「だから、見つからねえのが1番だ。もしくは、既に壊されているかだな」
彼がそう言った直後に、乾いた枝を踏む音が横から聞こえる。浦見はとっさに、懐に手を入れた。
(……誰だ?)
黒い拳銃を取り出しながら、男は音がした方を見る。木々の向こうから聞こえる音は、ゆっくりと彼らに近づいてきていた。
(先手を打つか)
浦見は覚悟を決めて、子供たちを置いたまま行動する。木を盾にしながら、彼は音が聞こえる方を覗いた。黒い人影と、目線が合う。
「……っ!」
考えるより先に、男は体を動かしていた。手にしていたのが拳銃だったのも良かったのだろう。懐から抜いて、弾を撃つまで。時間はさほどかからなかった。人影の肩に弾が当たる。黒い人間は、それで動きを止めた。砂が崩れるように、影はサラサラと消え去っていく。浦見は拳銃を構えたまま、ゆっくりと息を吐きだした。
「……他にはいねえな?」
周囲を見る。動くものは、何もない。その代わりに、人影が消えた場所には、畳まれた布が落ちていた。男は、それを拾って開いてみる。真っ黒な布は、広げると大きなテントになった。
「……木の枝を支柱にすれば、使えそうだな」
呟いて、浦見は布をたたみ直す。それを持って、彼は子供たちのいる場所に戻った。
1/支柱
「物を支えるために用いる柱。つっかい棒」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




