第24話:朝の森
森に、うっすらと日が差しこむ。坂井は目を開けて、体を起こした。草むらから頭だけを出して、彼女は霞む目で周囲を見る。
「……おじさん……?」
「おう、起きたか」
木にもたれて、座っていた浦見が顔を上げる。彼は疲れた様子も見せず、言葉を続けた。
「水は……向こうに置いてきちまったな。最初の予定通り、川を探しに行くか?」
「……本当にずっと起きてたの?」
少女は男の問いに答えず、真剣な顔で質問する。浦見は目を細めた。
「……そう言っただろ。おかげで、俺たちの選択が正しかったことも分かったぞ」
その言葉を耳にして、坂井が首を傾げる。彼女の隣にいたホリーが、目をこすりながら起き上がった。少し離れた草むらが動いて、少年たちも顔を見せる。
「おはよー、おじさん……。昨日、どうだった?」
根巳がアクビをしながら口を開く。男は立ち上がって、山小屋の方を指さした。
「気になるなら、見にいくか? 水のボトルくらいは、拾ってこられるかもしれねえしな」
「うん、行くー」
根巳が頷き、彼が示した方向に向かう。他の2人もついていった。そして、山小屋が目に入ったところで、彼らは固まる。
「……マジ?」
根巳が震えた声で呟く。浦見は坂井とホリーを連れて、少年たちの後ろから話しかけた。
「残念ながら、マジだ。昨日の夜に、奴らが大勢でやってきてな。あっという間に潰されていた」
そう言いながら、彼は少女たちを置いて、壊れた山小屋に近づこうとする。その背に向かって、深命が聞いた。
「……あの、何をされるおつもりですか?」
「ああ、いや。ホリーが置いてった、ペットボトルを探そうかと……」
「それなら僕が持ってきてます。飲み水は大切ですから」
彼は淡々とした声で言って、道を戻る。根巳が気の抜けた様子で、言葉を落とす。
「……そういや、お茶のボトル、あったね。アキはすごいな。オレは必死だったから、何も考えてなかったや」
「……まあ、あれ1本じゃあ足りねえが」
浦見は足を止めて、渋い顔をした。彼の手元には、黒い人影が落とした武器が残っている。
(もしかして、欲しいモンを思い浮かべながら奴らを倒せば、それが落ちるかもしれねえのか? ……次に黒い影に会ったら、試してみるか)
深命が草むらの中から、ペットボトルを見つけだす。それを持って、戻ってくる少年を見つめながら。男はそっと、ため息をついた。
(……って、馬鹿か、俺は。会わねえのが1番いいだろうに)
どんなに強い武器があっても、1人では限界がある。そう思って、彼は思考を切り替えた。




