第23話:深夜の遭遇
日が沈み、坂井たちが寝ついたころ。人の足音が聞こえてきて、浦見は顔を上げた。
(……誰だ?)
樹木の裏から、様子をうかがう。暗い森の中を、複数の人間が1列になって歩いてきていた。
(……あれは、追っ手か)
1人や2人ではない。大勢の真っ黒な人影が、無言で道を進み、山小屋の方へ向かっていく。男は冷や汗を流しながら、木の陰で息をひそめていた。
(あの小屋を目指してるのか? 何をする気だ?)
物音を立てないようにしながら、男は彼らの動きを観察する。黒い人影は彼には気づかず、その横を通り過ぎていった。足音が遠ざかる。人影は集まって、まるで黒い塊のようだ。その塊を、浦見は隠れて追いかける。塊は山小屋の周りに広がって、またたく間に小屋を飲み込んだ。その中から、屋根が割れ、柱が倒れる音が聞こえてくる。時間をかけて、小屋を潰した塊は、そこで戸惑ったような動きを見せた。
(……俺たちがいなくなったことを、ようやく知ったか。さて、どうする?)
男は草むらから、彼らの様子を覗き見る。人影は山小屋の残骸から離れて、その周囲を歩き回った。しばらくして、浦見たちが戻ってこないと察したのか。彼らは散り散りになって、そのうちの数人が元の道に戻ってきた。その間も人影は相変わらず、何も言葉を発さない。
(……もしかして、この黒い奴らは喋れねえのか? にしては統率がとれてるが)
浦見の側を通って、人影は折れた草を辿っていった。彼がいる方には、1人も来ない。そのことに、男は胸を撫で下ろした。
(……よし。今日のうちは、ひとまず何とかなりそうだな)
元の位置に戻って、彼は再び木の裏に座る。人影が去った森からは、風が木々の葉を揺らす音と、鳥の鳴き声だけが響いていた。そんな中で、浦見は腕を組んで考えこむ。
(問題は明日だ。ここも、いつまでも安全なままじゃねえだろう。ゲームの性質からしても、越せるのは一晩だけ。そう思っておくべきだ。……それと。あいつらはおそらく、群れたらヤバい)
例の山小屋は、まだ真新しかった。それを完全に破壊した、黒い塊のことを思い返して。彼は近くにある、2つの寝床を見つめた。
(1人ずつなら、俺でも戦える。だが、集まった奴らには勝てねえ。アイツらを守るなら、最低限。黒い奴らは、纏まる前に片付けねえとな)
草の寝床の中からは、微かな寝息が聞こえてきている。それは子供たちが生きている証拠だ。そのことに安心しながら、彼は夜が明けるまで気を抜かなかった。
1/残骸
「原形をとどめないほどに破壊された状態で残っているもの」
2/統率
「多くの人々をまとめてひきいること」
3/撫で下ろす
「(「胸をなでおろす」の形で)ひとまず安心する」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




