第21話:移動(前編)
山小屋の扉を開けたまま、少年たちは小屋の床に座って、男を見つめた。
「いいか。まず、ここのことはアイツらにもバレている。絶対に安全な場所とは言えなくなった。それは分かるな?」
浦見の言葉に、彼らは揃って頷いた。男は腕を組みながら続ける。
「だが、野宿もやめた方がいい。体力を削ることになる。1番いいのは、ここから離れた森の中に、休める場所を作ることだ」
「……どうやって?」
根巳が小さな声をだす。彼はすっかり落ちこんで、気力も無くしてしまっていた。その様子を見て、浦見はできるだけ、優しい声音で話してやる。
「細かいことは俺がやる。とにかく、日が沈む前に行動すべきだ。動けねえなら、俺が背負っていってもいいが」
「……平気。頑張る」
根巳はか細い声で言って、ゆっくりと立ち上がった。その体を、十矢が支える。
「……おじさん。私たちは?」
外で隠れていた坂井たちが、草むらから顔だけを出して聞いた。浦見は後ろを見ずに答える。
「そりゃあ全員、俺の目の届く範囲にいてもらうさ」
そんな話をしている間に、深命が先に外に出る。その後に、根巳と十矢がついてきた。浦見は周囲を見回してから、口を開く。
「……なあ、坂井。俺が目印をつけた場所、分かるか?」
「ええ。見てたから。でも私たちが歩いたところに、寝られそうな場所なんて無かったわよ?」
少女が考えながら呟く。男は、すぐに言葉を返した。
「そうだな。だが、安全なのは確かだろう。何より今から、まったく知らねえ場所には行けん。草を束にして寝床にすれば、多少はマシになるはずだ」
その話を聞いて、根巳が頬を膨らませる。それでも、彼は何も言わなかった。坂井がホリーを連れて、森の奥へと消えていく。その背を見ながら、深命がポツリと言葉を落とした。
「僕たちが扉を開けなければ、あのまま小屋にいられたのかな」
「それはねえ」
自分の横を通り抜けていく少年たちに向けて、浦見はピシャリと告げる。
「あの小屋は見つかったらアウトだった。前にも言ったが、外から火をつけられただけで死ぬからな。……だから、お前らには悪いが、俺は離れることも考えていた。木の枝を折って目印にしたのも、戻りやすくするためだ」
彼の言葉に、少年たちが目を見開く。十矢が震えながら言葉を発した。
「……最初から、全部? おじさんは、こうなることを知っていたの……?」
「……俺は最悪の場合を考えてた。それだけだ」
赤色に染まる森を見ながら、男は目を細める。
「お前たちも、アイツらも。全員守るには、こうするしかねえんだよ」




