第20話:山小屋への襲撃
浦見は目印にした枝を辿って、山小屋に戻った。その途中で、小屋の方から声が聞こえる。
「アキ! もういいって! なあ!」
それは根巳の声だった。焦ったような、その口調に。嫌な予感がして、男は草をかき分けて走る。山小屋には数名の、黒い人影が貼りついていた。そのうちの1人が、ドアの隙間に手を入れて、無理やりこじ開けようとしている。中にいる深命は、必死で抵抗していたが、力の差は誰の目にも明らかだった。
(……っ、くそ! やっぱりダメだったか……!)
男は横からスピードをつけて、扉に密着している人影に蹴りを入れる。黒い人物はよろめいて、地面に倒れた。小屋の周りにいた他の人間が、一斉に彼の方を見る。数は4人。
(……ちと多いな。いけるか……?)
幸いにも、相手の動きは遅かった。それを利用して、浦見は彼らが近づく前に、1人ずつ順に叩きのめす。
「……お、おじさん……。大丈夫……?」
4人のうち、2人を地に伏せたところで。小屋の扉が僅かに開いて、根巳が深命の後ろから顔を出した。浦見は一瞬、そちらに気を取られる。その隙に、黒い人影のうちの1人が、懐から拳銃を取りだした。
「……っ!!」
浦見が息を詰める。少し離れた草むらの中から、高い叫び声が聞こえた。
「……おじさん!!」
銃を持った人影が、草むらの方に視線を向ける。男はその瞬間を逃さなかった。銃口の向きとは逆の方から、彼は人影に近づいて、もう1人の人影に向かって殴り飛ばす。2つの人影は、纏めて転がっていった。
「……もう、いねえな?」
地面に落ちた黒い拳銃を手に取りながら、浦見は周囲を見回す。強風が、枝葉を揺らして吹き抜けた。しばらく待っても、物音はしない。それで男も、ようやく安堵の息を吐いた。
「……ええと、ごめん……?」
小屋の扉がゆっくりと開いて、根巳が小さな声で言う。浦見は深々と息を吐いた。
「……気にするな。最終的には、何とかなったんだ。それより話を聞かせてくれ。あいつらは、いつ来たんだ?」
「……ちょっと前だよ。外からドアが叩かれて、その時は開けなかったんだけど……」
深命が掠れた声で返す。彼はジト目で、根巳を見ていた。
「音が聞こえなくなったから、裕太が開けてみたいって言ったんだ。それで……」
「えっ、オレのせい?! アキだって、確認したいって言ってたのに! そもそもドアを開けたのアキだし!」
金髪の少年が、必死な様子で言葉を続ける。浦見は真顔になって告げた。
「……ああ、そういう事情はどうでもいい。今は終わったことだからな。それよりも。大切なのは、これからどうするかだ」
1/一斉
「同時にそろって何かをすること」
2/安堵
「気がかりなことが除かれ、安心すること」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




