第19話:追っ手との遭遇、2回目
3人が森を歩いている途中で、頭上の枝が軋んだ。ミシリという音が聞こえてきて、浦見は反射で顔を上げる。木の上には、いつの間にか、黒い人間が乗っていた。それと目があって、彼は大声で叫ぶ。
「逃げろ!!」
上から人が下りてくる。彼はその場に留まって、真っ黒な人物を迎え撃った。上からの衝撃に耐えようとして、男は人影と揉みあう形で、その場に倒れる。
(くそ。こんなところで、やられてたまるか……!)
黒い人間は、片手に包丁を持っていた。性別も分からない人物は、浦見の上に乗った状態で、彼を包丁で刺そうとする。だが、浦見に手を押さえられたせいで、それはできなくなった。その一方で、彼の側には勝算が残る。
(よし。これならいける……!)
相手の武器を封じたまま、男は勢いをつけて頭突きする。黒い人影が怯んだ。その瞬間に、彼は体勢を入れ替える。下から上に位置を変えた浦見は、そのまま黒い包丁を奪い取る。包丁が手から離れた途端に、人影は指先から霧になって消えていった。
「……死ななくても、武器が無くなればそれでいいのか?」
包丁を持った状態で、男が呟く。近くの草むらが揺れて、そこに隠れていた少女たちが顔を出した。
「……おじさん、平気?」
「ああ、俺はな」
ホリーの問いに答えながら、浦見は手にした包丁を見た。真っ黒な刃には、何かを切った跡が残っている。
「……置いていくのは危なそうだな」
周りにある木々の葉をちぎって重ね、彼は包丁の刃の部分を包む。草むらから外に出ながら、坂井は横目で男を見た。
「……ほんと、良かったわ。おじさんが話の分かる人で」
彼女は顔や頭についた葉っぱを取りながら、言葉を落とす。浦見は何とも言えない顔で、そちらを見た。自分の体についた葉を、あらかた取り終えた坂井は、今度はホリーの世話をしている。
「……そろそろ帰るぞ」
太陽が見えないせいで、時間の経過は分からない。ただ、まだそれなりに明るいので、日は沈んでいないのだろうと。そう判断して、彼は2人に声をかけた。
「暗くなる前に、戻らねえとな。結局、食べ物は見つけられなかったが……」
「仕方ないわよ。無事に帰れるだけで、ありがたいわ」
ホリーの手を取って、坂井が微笑む。
「飲み水はあるんだし、どうにかなるわよ」
「……そうだな」
彼女の言葉には、本人の希望もこめられている。浦見は、そのことを察していた。彼は葉っぱで覆った包丁をしまって、2人と共に小屋に帰る。森の中からは相変わらず、何かも分からない生き物の声が聞こえてきていた。
1/迎え撃つ
「攻め寄せてくる敵を待ちうけて戦う」
2/勝算
「相手に勝てる見込み。勝ち目」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




