第13話:生存者(前編)
「……よし。長いこと、ここにいても仕方ねえ。なにより、さっきの奴がまた来るかもしれねえからな。先に進むぞ」
しばらくして、浦見は2人に声をかけた。坂井は頷き、ホリーを連れて歩きだす。彼は2人の後ろについて、周囲を見張りながら移動した。鳥の声のような奇妙な音が、森に響く。木々の枝葉に遮られて、光も差さない薄暗い森。その不気味さに、坂井は息を詰めていた。そんなとき。枝の隙間から見える空に、灰色の煙が立ち上るのが見えた。
「……人がいるの?」
坂井が呟き、そちらに向かう。茂みをかき分けた先には、古い山小屋が建っていた。小屋の前には広場があって、たき火を燃やす少年が座っていた。
「……あ! お姉さんたちも、巻きこまれた人?」
金髪の少年は、やってきた2人を見て明るい表情を浮かべる。坂井は彼から離れた場所で、ホリーと一緒に立ち止まった。その横を抜けて、浦見が彼に近づく。
「……お前も突然、ここに連れてこられたのか?」
「そうだよ。おじさんもでしょ?」
少年は笑顔で、話を続けた。
「オレとルイとアキで、今まで頑張ってきてたんだ。ホントは後、2人いたけど……」
彼が寂しそうな顔をする。浦見は目を細めた。
「……そうか。それは辛かったな」
「まあね。でも、それで思ったことがあるんだ。どうにかして、ここにいる人たちと助けあえたら、もっと生き残りやすくなるんじゃないかって」
「……で、こんなところで火をおこして、人を呼ぼうとしてたのか。それはいいが……」
話の途中で、横の草木が揺れる。浦見は素早く行動した。血のついたナタを持った黒タイツの人物が、草の中から飛びだすのと同時に。彼は横から勢いよく、その人影を殴りつける。黒い人影は体勢を崩した。その体は、地面につく前に消える。ポカンと口を開けて、その光景を見ていた金髪の少年が、全てが終わってから声を上げた。
「……すっげー! おじさんなんかやってたの?!」
「……まあ、色々とな」
苦笑しながら、浦見が告げる。
「それよりお前ら、俺たちを狙う奴がいることは知ってたか?」
「いや? 今の人は、初めて見たけど……」
彼の言葉に、金髪の少年はキョトンとする。浦見はそれを見て、ため息をついた。
「……そうか。煙は確かに人目に付くが、それは追っ手にとっても同じだ。身を守る力がねえとキツイぞ」
「……んー? じゃあ、おじさんがここにいて、火を見ててよ。お姉さんたちは、中で休んでいいからさ。オレたちが先に確認してるし、安全だよ、ここ!」
少年は胸を張って話す。その言葉を聞いて、坂井とホリーは顔を見合わせた。
1/人目に付く
「他人が目を向けたときに気づく。目立って見える」
2/胸を張る
「自信に満ちた態度をとる」
この後書き内での説明は、1はコトバンクの『デジタル大辞泉』から、2は『精選版 日本国語大辞典』から引用したものです。




