99話 準備
塩田先生から修学旅行の日程などを話されてから一週間が経とうとしていた。クラスでは今でもいつ修学旅行に行くのか、どこに行くのか、ダンジョンはどんなダンジョンに行くのかなどの話題で持ちきりだった。俺たちの間でも事あるごとに修学旅行の話題になりもう話すことがなくなるほど話し尽くしていた。さすがの高校生でももうそろそろ新しい情報が欲しく感じてきていた頃、塩田先生が帰りのホームルームで話を始めた。
「はいみんな何となく察してるんじゃないかと思ってますが、修学旅行の日付を発表します!」
「「「うおおお!」」」
俺を含めたクラスのみんなが歓喜の声をあげた。割れんばかりの声に塩田先生は耳を塞いだ。塩田先生は耳を塞ぎながら俺たちが落ち着くまで待ってから話し始めた。
「修学旅行は再来週の金曜日から沖縄に行きたいと思います!」
「よおおおし!」
「やったー!」
「沖縄ヒャッフォー!」
一人一人個性的な喜び方に自然と笑みが溢れてきた。塩田先生はみんなの反応に嬉しそうな表情を浮かべていた。みんなが落ち着くと塩田先生が話を続けた。
「日程は言ってた通り一週間まるまるで、真ん中三日のダンジョン攻略はマングローブ林のダンジョンに行くことになっている。攻略授業の短縮版って感じだけど、地域によってダンジョンの性質の違いやモンスターの特徴の差異を知ってもらうためのものだからそこまでガチにならなくても大丈夫だ。もちろん普通に攻略したい奴はしてもらって構わん。ざっくりとした説明はこれぐらいだが、質問あるか?」
春奈が手を挙げ質問をした。
「最初の二日間はどこに行くんですか?」
「首里城とか平和記念公園とかに行く。最初の二日間は普通の高校の修学旅行と大して変わらない内容で、沖縄版攻略授業を三日間やって、最後の二日間は自由に沖縄を楽しめ。ただし、全て自己責任だ。学校側もある程度の責任は負うが、個人的な責任は各自で負うことになってもらってる。楽しみ過ぎず羽目を外し過ぎず節度ある二日間にしてくれたら先生たちは何も言わない。他に質問ある奴」
前田が手を挙げ質問した。
「その学校がある程度の責任を負うってどんな事なんですか?」
「例えば、ダンジョンに行って怪我をしたとかは個人の責任だが、他所様に迷惑をかけたりお店の人に迷惑をかけるっていうのは学校側の指導不足として一緒に責任を負う。大抵の場合は個人で責任を負ってもらうからはしゃぎ過ぎないようにな。この最後の二日間は修学旅行に含まれているようで含まれていないただの滞在時間だから学校が責任取ってくれるなんて思ってる奴は考え改めるように。他には?」
みんな質問したいことがなくなったのか誰も手を挙げなくなった。塩田先生はそれを確認して教室を後にした。俺たちはついに沖縄に修学旅行に行けるのだと興奮冷めやらぬ感じで授業が始まるまでずーっと話し続けた。自由時間に行ってみたい場所や食べてみたい物、買いたいお土産などこの短い時間では語りきれなかった。授業が始まり強制的に話を中断されたため不完全燃焼感が強かったが、それは修学旅行への期待度の高さの裏返しでもあった。
学校が終わり部活に向かった。俺と勝は修学旅行に何を持って行くか、何を買うかなどの話をしていた。しばらくそんな話をしているとどのぐらいの着替えを持っていけばいいのだろうという話になった。一週間まるまる滞在するわけだし七日分の着替えと二着ぐらい寝巻きを持って行った方がいいのかななどと話をしたが、荷物がとてつもない量になるのではないかという考えに至った。二泊三日でも結構な量の荷物に加えてお土産もあってスーツケースにようやく収まるぐらいなのに一週間なんてと考えていると、塩田先生に質問しておけば良かったと後悔した。まぁ明日にでも聞けばいいかと気持ちを切り替えて部活に取り組んだ。いい感じに汗をかき帰っている途中、勝が妙案を思いついたような表情を浮かべた。
「なぁさ、服を圧縮出来る簡易的な圧縮袋ってあるよな。それ使えばまだマシになるんじゃないか?」
「確かに。でも、ズボンは二着とかにして上をいっぱい持って行く方がスペースも取らないし圧縮もしやすいからその方がいいんじゃね?」
「そうだな。それと別に海パンも持っていなくちゃだしなるべく少なくした方がいいな」
「俺も海パン用意しなくちゃじゃん」
「沖縄行くのに海行かないなんて勿体ないからな。明日みんなにも話すけど、エメラルドビーチって所がめっちゃ綺麗だからそこ行こうと思ってるんだ。これがそこの写真」
勝がスマホで写真を見せてきた。そのビーチの海水は透明度が高過ぎて太陽の光が海を宝石のように輝かせているように見えるほど綺麗だった。こんな綺麗なビーチに行けるなら誰でも来たいと思うだろう。でも、その分人も多くなるだろうからそれだけが心配だ。
「綺麗だな。でも、こんなに綺麗なビーチ人めっちゃ来そうだけど大丈夫か?」
「大丈夫だって。それに、人が多過ぎたらちょっと離れればいいし。それでも無理なら健斗の風魔法でみんな運んでくれよ。出来るだろ?」
「まぁ出来るけど」
「ならそれで決まりだな」
そんな話をしているといつの間にか家のすぐそこまで来ていた。俺たちは別れを告げ家に帰った。
「ただいま。母さん海パンってどこにある?」
「おかえり。海パンなら物置の中にあるわよ」
「はーい」
俺は庭に出て物置の中を探した。物置の中にはいろんな箱がありその前面に山や釣り、雪などと書かれており何用の物が入っているのか一目で分かった。海と書かれた箱を取り出し海パンを出し箱を戻した。
「あったー」
「はーい」
海パンを自室に持って行き、他に必要そうな物はないか調べたりした。調べてみると絆創膏や消毒液などと書かれていたが、治癒魔法で事足りるため持って行く服を選別することにした。なるべく薄くて暑くない服を選びスーツケースに試しに入れてみることにした。それでも七日分の着替えと寝巻き、下着やタオルなどを入れるとスーツケースの余白はほとんどなくなった。勝が言ってた圧縮袋が家にないか母さんに聞くことにした。
「母さん服を入れる圧縮袋ってある?」
「あるわよ。海パンに続きどうしたの?」
「修学旅行だよ。再来週の金曜日から行くから」
「ああ。そんなメール来てたわね。圧縮袋ならそこの棚に何個かあるわ」
母さんが指差す棚を見てみると圧縮袋が三つだけあった。とりあえずこの三つでどのぐらい変わるのか試してみると、ほとんど余白が無かったスーツケースにかなりのスペースが生まれた。圧縮袋の性能に感心した。これならこの三つだけでもいいかもなと思った。もし、入らないお土産があったとしても手で持てばいいしそんなに気にすることはないなと楽観的に考えていた。最悪誰にも見られない場所で忘れられた記憶の断片に収納すれば何でも持って帰れるし大丈夫だ。そんな事を考えていると透から着替え何着持って行くかというメールが届いた。俺はスーツケースに入れた服を全て数えてメールを送ると、透からやっぱりそのぐらいになるよねと帰ってきた。俺は勝から教えてもらった圧縮袋を試してみるように送った。透からありがとう試してみると返ってきた。そんな事をしていると晩ご飯の時間となり母さんの手料理を堪能することにした。
次回もお楽しみに




