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アルカディアリベル  作者: 描空


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96話 問答

 いつも通りの土日を過ごしいよいよ登校日になった。塩田先生の話通りならちゃんと各クラスに俺が戻ってきても質問したりしないように言ってくれているはずだが、年頃の男子が龍という存在の話を聞けるチャンスがあるのに自ら手を引くだろうか。否そんなわけないに決まっている。俺であっても親しい仲の人になら聞きたいと思うし、噂程度でもテンションが上がる。そんなビッグニュースを書きつけるのは光正の人たちだけに留まらない。テレビ局やマスコミなどももちろん取材に来るだろう。学校が説明してくれるとは言っていたが、どうなることかと心配していると学校に行く時間になった。いつも通りみんなと集まり歩いていると、みんなに取材とか大丈夫かなと本心を漏らしてしまった。


「大丈夫だって。それに私たちがいるじゃん!」


「そうだよ。健ちゃんのことは僕たちが守るから」


「いやいや、健斗が心配してるのは周りの人たちをだろ。健斗は風魔法でどこにだって逃げれるんだから」


「「確かに」」


 勝の言葉に春奈と透は納得した。事実だけど俺のことももっと心配して欲しかった。そんな話をしていると学校がもう目と鼻の先にまで近づいてくると、周りにいる人たちが俺の方を見てヒソヒソ話しているようだった。その時聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「小出せんぱーい!」


 そう叫ぶのはすみれちゃんだった。すみれちゃんはダッシュで俺の胸に飛び込んできた。あまりのスピードと衝撃に俺が体勢を崩しそうになると勝と透が支えてくれた。


「ひ、久しぶりすみれちゃん」


「生きてて良かった。本当に生きてて良かったです……」


 そう言うすみれちゃんは目に涙を浮かべていた。こんなに心配してくれる人がいっぱいいて俺は幸せ者だなと思っていると、いつの間にか周囲に人だかりが出来ており口々に龍のことを聞かれた。塩田先生が言っていたことは何の効果も無かったなと思っていると、すみれちゃんが辺りを見回して驚いていた。すみれちゃんが俺から離れたその隙に風魔法で人の上を飛んで下駄箱まで行き上靴に履き替えた。このまま人だかりがみんなの邪魔にならないようにとクラスに入り鍵を閉めた。集まっていた人だかりは次第に散っていき鍵を開けた。クラスのみんなに迷惑かけたなと思っていると春奈たちも教室に入ってきた。


「みんなさすがに自重した方がいいとか思わないのかしら?」


「ほんとだよ! いくら気になるからってあれはないよ」


 そんな話をしていると塩田先生がやって来た。


「小出大丈夫だったか? 物凄い人だかりが出来てたけど」


「俺は大丈夫でした。それより学校の人たちにはちゃんと質問とかしないようにって言ってくれたんですか?」


「それがだな、先生たちで話し合った結果小出が投稿してくるまでは小出の話題は一切出さないようにしてたんだ。だから、今日のホームルームから言うことになってる。でも、その分小出に迷惑をかけた奴は減点対象になるってことになってるから安心してくれ」


「そうですか。それはいいんですけど、マスコミとか大丈夫ですか? 色んなところから取材が来そうですけど」


「それも大丈夫だ。学校側が全て対応するし、一切情報は渡さない。そもそも先生たちも全然知らないから何も言えないのが事実だしな。もし、取材がしつこかったら言えよ。ちゃんと対処してやるから」


「分かりました」


 そんな話をしていると朝のホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴った。塩田先生がクラスのみんなに俺と話した内容を伝えてくれた。そして、最後にクラスのみんなに俺が困っていたら助けてあげてほしいとも言ってくれた。クラスのみんなは各々返事をしてくれた。みんな本当に優しいなと嬉しい気持ちで心が満たされていると、廊下側の窓からホームルームが終わったであろう生徒が俺の顔を一目見ようと何人か集まっていた。塩田先生は減点されることをひけらかしながらその生徒たちに教室に戻るように促した。ここからしばらく大変だろうなと思うと気分は良くなかった。


 実戦授業が始まりいつも通り授業を受けている間は誰からも質問さらたり視線を感じたりすることなくいつも通り授業を受けられた。今日は尾形先生の魔法の授業であり、俺は尾形先生に実力を買われてクラスのみんなに魔法を教えていた。校内選抜の時に透たちに教えたやり方でやってみたが、みんなかなり苦戦しているようだった。どうすればもっとみんなに合った方法で教えられるのかなと考えていると透が言った。


「多分だけど普段から魔法使ってないからいまいち感覚取り戻せてないんだと思う。今みたいな訓練っていう感じじゃなくて、楽しみながら学べるって方向にシフトした方がいいと思う」


 俺は透の指示に従いみんなに楽しく魔法の感覚を体に覚えさせる方法を考えた。それは、俺の火魔法をみんなの水魔法で消すというものだ。これなら自然とマナの流る感覚も取り戻せるだろうし、どうすればもっと水の威力を上げられるのかなど試行錯誤する力もつくだろう。思い立ったが吉日ということで早速みんなに試してもらうことにした。その結果、みんなとても楽しそうに魔法を使って俺の火魔法を協力して消すことに成功した。そんな楽しい時間が続けば良かったのだが、そううまくはいかなかった。


 クラスのみんなから俺の耳にこんなニュースが飛び込んできた。それは、校長先生と教頭先生、鷲田先生が俺が無事に帰って来たことを報告する会見を開いたことだった。スマホで一部始終を見ていたが、とてつもない数の記者に囲まれていたが、先生たちは一切俺のことは喋らなかった。会見はそれっきりで終わってしまった。おそらくこのまま続けていても先生たちは何も喋らなかっただろうし、先生たちもそこまで暇じゃないのだろう。今度会ったらお礼を言わなくちゃいけないなと思った。


 昼休みになりみんなで食堂で昼ご飯を食べていると、食堂が賑やかな騒がしさから外にあるものに興味を示す騒がしさに変わった。外に物珍しいものでもあるのかと思って見てみると、校門の外に夥しいほどの記者がいた。これだけの記者がいればみんな騒がしくもなるなと思っていたが、記者の人たちはこのまま俺が出てくるまでずっと校門で待機してるのかと思うと何だか不憫に思えてきた。記者の人たちは俺が出てくるまで帰れないだろうし、下校時間になっても俺たちは記者の人のせいで帰れない。これは由々しき事態だと思った俺は一人で塩田先生に助けを求めに職員室に向かった。


「塩田先生、校門の前に記者の人たちが大勢いるんですけど、どうしたらいいですか?」


 俺の言葉に職員室にいた先生たちは校門の方を見て頭を抱えた。すると、塩田先生が近づいてきて言った。


「何も心配することはない。先生たちに任せなさい」


 そう言う塩田先生はいつも以上に頼もしく思えた。塩田先生は他の男の先生を連れて校門まで行き記者の人たちに帰るように言っていた。しばらく記者の人たちは粘っていたが、次第に諦めたのか帰っていった。塩田先生たちが帰ってくると俺は先生たちに感謝を述べた。先生たちは当然のことをしたまでだと微笑みながら言ってくれた。午後の授業が始まり職員室を後にした。午後の授業もいつも通り受け放課後になり、部活に行き勝と帰路についていると記者の人たちが俺たちの周りを囲んだ。口々に何があったのか聞いてきたが、俺は全てを無視して一喝した。


「黙ってください!! みなさん仕事で来てるのは分かってますが度が過ぎてます。ただの高校生にそんなに付き纏わないでください。記事には俺が無事に帰ってきたってだけ書いてください。世間の皆様はそれ以上の情報を求めるでしょうが、俺は話したくありません。回答は以上です。失礼します!」


 俺は勝の手を握り風魔法で後をつけられないように飛んで帰った。家につくと俺は勝に謝った。勝は別にいいさと笑って許してくれた。俺は本当に恵まれていると心から思った。家に入りシャワーを浴びながら今回の件で取材が来なくなったらなと思ったが、まだしばらくは続くだろうなと嫌な気持ちになった。

次回もお楽しみに


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