95話 テレポート
じいちゃんとミトロシスグリーモの魔法を色々試した後、ベッドでしばらくゴロゴロした。今の時間は午前十時、学校や職場に行って人が少なくなる時間帯。龍王から教えてもらったテレポート出来る空間の切れ目の魔法を試すには絶好のタイミングだ。とは言え道路の真ん中にテレポートするわけには行かないので裏路地や小道などにテレポートすることにした。駅の人気が少ないであろう場所を思い浮かべた。そして、龍王が俺の頭に流し込んだ空間の切れ目を作り出す魔法を使った。すると、目の前に空間の切れ目が現れ早速空間の切れ目の中を覗いてみた。空間の切れ目に頭を突っ込んでみると人気のない小道に繋がっていた。俺は首を引っ込めその魔法を消した。こっちでもきちんと機能して良かったと安心したのと同時にもっと他の場所にも試してみたいなと思った。
その時ふと思った。逆にめちゃめちゃ近くにこの魔法を作り出したらどうなるのかと。ものは試しだと自室を思い浮かべながら魔法を作り出した。すると、目の前に二つの空間の切れ目が現れた。一方の空間の切れ目に腕を入れてみると、もう一方の空間の切れ目から腕が飛び出してきた。そのもう一方の空間の切れ目から出てきた腕を触ってみると、ちゃんと感覚があり不思議な感じがした。その時邪な考えが浮かんできたが、すぐにそのような考えは払拭した。思春期だからといって魔法をこんな使い方をしてはいけないと自分を責めた。
気を取り直して、この魔法はかなり自由が効く魔法であり思い浮かべるだけでそこに行くことが出来るらしい。だが、一つ試していないことがある。それは行ったこともない場所に行けるのかどうかだ。今までの感じからしたら思い浮かべるだけで空間の切れ目が現れるのだからいけそうなものだが、例外もあるかも知れない。いざという時に適当な場所を思い浮かべて逃げられないということがあってはいけないため確認してみることにした。
スマホで適当に人がいなさそうな場所はどこかなと探していると南極が出てきた。南極なんかに行く理由もなければ行きたいとも思わないが、試してみるにはちょうどいいと思い南極を思い浮かべて魔法を使ってみることにした。すると、目の前に空間の切れ目が現れた。マジで出来るとは思っておらず困惑したが、試しに腕だけ入れてみることにした。南極だから一瞬だけと決め腕を入れてみると、冷凍庫の何倍も冷たい空気が俺の腕を覆った。一瞬とは言えとてつもない冷気に驚きと興奮を覚えた。何度か腕を突っ込んでは引きを繰り返し満足するまでやった。
他に何か確認しておかなければならないことは無いかなと考えているとこの魔法の名前やイメージの仕方が曖昧なことに気がついた。名前は分からなくてもどうとでもなるが、イメージの仕方が曖昧なのはどうかと思った。でも、行きたい場所を思い浮かべマナを頭に集中させるだけで空間の切れ目が出現するため困っているわけではないが、なんだかモヤモヤするのだ。とは言うもののカイルムにいた時間はせいぜい数時間程度なのに現実では二週間も経ってしまっていた。カイルムにいた時間を約三時間と仮定すると、二週間は三三六時間なためカイルムの時間は現実の百分の一のほどだと考えられる。ちょっとカイルムに行ったら現実では一日経っているなんてこともありそうだし安易には行けないなと残念に思った。
テレポートする魔法の試したいことや確認しなければならないことは粗方終わり暇な時間となってしまった。忘れられた記憶の断片の中にいる時間は現実の時間は進まないため何でも出来るのにカイルムときたらと思ったが、どちらにもいい点と悪い点があるだろうと一方を批判するのではなく比較して一方を責めたりしないようにした。そんなことを考えていると昼ご飯の時間となった。リビングで昼ご飯を食べベッドでゴロゴロしていると透からメールが届いた。
『そう言えば競技会のこと話してなかったから帰ったら話すね』
透のメールで思い出した。俺が龍王にカイルムに連れて行かれたのは校内選抜の途中であり、校内選抜の結果も競技会の結果も知らないのだ。スマホを使えばどこが優勝したのか調べれるが、わざわざ話してくれるのだから調べるのは違うなと思った。俺はワクワクしつつも調べるようなことはしないためにゲームをしたりして気を紛らわせた。動画も見ようかと思ったが、動画配信者が競技会の結果を取り上げている可能性もあるなと見ないでいた。下校時間になり少しすると家のインターホンが鳴った。俺が玄関を開けるとみんながいた。てっきり透だけ来るものだと思っていたから少し驚いた。ユースも迎えが来るから別にいいのだろうが、よく来てくれたなと思った。みんなを家にあげると母さんがお茶とお菓子を出してくれた。
「それで、競技会どうだったんだ?」
「まず校内選抜でユースと勝と春奈が勝ち抜いたんだ。それで三人が競技会に出たんだけど、去年ぐらい盛り上がったよ。今年は土日にもやることになったから観客も増えていい感じだったらしい。三人が頑張ってるのテレビでやってるの見たけど、ここからは三人に話してもらった方がいいだろうからバトンタッチするね」
透はそう言うと勝を見つめた。勝は俺が話すのかと一拍おいて話し始めた。
「競技会の種目は一種目変わったんだ。勝ち抜きトーナメントとダンジョン攻略、協力型モンスター討伐はそのままで、各校のモンスター攻略が魔法武道演舞になったんだ。魔法武道演舞が最初で後は去年通りの順番だった。勝ち抜きトーナメントを土日に持ってくるために金曜に魔法武道演舞をしたけど、オリンピックの空手の形みたいな感じで厳かな感じだった。それと、自分が持ってる最大限の力を披露できるから結構盛り上がったな」
勝はもう話すのが面倒になったのか春奈の肩に手を置きバトンタッチをした。
「それじゃあ勝ち抜きトーナメントを話すけど、やっぱり今年も五大校が圧倒的だったね。言っても私たち光正には敵わなかったけどね」
「おぉ凄いな。今年も勝ち抜きトーナメントは光正なのか。ちなみに個人戦は?」
「まさかの勝が一位です!」
「マジ!?」
俺は驚いて勝を見つめると勝は少し嬉しそうに頷いた。まさかの二連覇もあり得るのではないかと思った。俺が魔法を教えたからかは分からないが、確実にいい影響にはなっただろうから誇らしかった。
「次のダンジョン攻略はそこまで難しくなかったからそこまで話すことは無いかな。去年健ちゃんたちが行ったダンジョンより簡単だったし。最後のモンスター討伐はユースに任せようかな」
「任された。今年の夏はモンスター討伐は二回に分けられてて、最初は天災級で簡単だったんだけど、二回目は破滅級でしかも悪魔が相手だったの。でも、その悪魔そんなに強い個体じゃなかったからそこまで苦戦しなかったんだけど、相対した時は結構ビビったわ。まぁ勝ったんだけどね。協力したのは信神高校だったわ。私たちだけでも勝てたと思うけどね。まぁそんな結果だったから当然だけど二連覇してやったわよ。おかげでアイテムも貰えたし最高だったわ」
「おー! 良かったな。ちなみにだけど、俺が魔法教えたのって役に立った?」
俺は自分が二連覇を補助できたのか知りたくなり聞いた。
「もちろんよ」
「とっても!」
「そりゃな」
三人ともいい表情で答えてくれた。俺はみんなの役に立てたんだと嬉しくなった。
「それで三人はどんなアイテムを貰ったんだ?」
「私は煩悩のリングって言って、煩悩を消し去って目の前の物事に集中出来るっていう万能なアイテム」
「私は天使の加護って言ってネックレスのアイテムなんだけど、装着者に危険が起こった際天使が助けてくれるってやつなんだって」
「俺のは堅城の守護っていうブレスレットなんだけど、装着者が任意のタイミングで目の前に自分たちを守ってくれる半透明な壁を出せるんだって。健斗のプライシディウムのアイテム版って感じだな」
「みんな良いアイテム貰ったね」
ユースの煩悩のリングは日常的にも使えていいだろうし、春奈の天使の加護は俺の笑みの寵愛と似ているが分かりやすく強いし、勝の堅城の守護はいつでもプライシディウムが出せると考えると生存率が一気に上がるだろうから本当に良いアイテムを貰ったと思った。来年は透を出場させてあげられるようにもっと魔法教えてあげないとなと思った。そんな話をしているとすっかり辺りは暗くなりみんなで晩ご飯を食べることになった。今日の晩ご飯はみんなが競技会で優勝したのを記念するためのものらしく豪華なラインナップだった。
次回もお楽しみに




