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アルカディアリベル  作者: 描空


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94話 ミトロシスグリーモ②

 じいちゃんとディオレンテカプティオーニスで遊び、ひとしきり楽しんだのち再びミトロシスグリーモに書かれている魔法を試すことにした。


「次はどんな魔法がよいかのぉ……これはちと微妙じゃし、こっちはそこまで目新しさがない。お、これならいい感じじゃぞ。名前はビチスグラビタス。マナに風魔法のイメージを持たせて、相手を空中に持ち上げて叩きつけるっていう魔法らしい。この風魔法のイメージは相手を浮かび上がらせ叩きつけることから便宜上風魔法と言ってるが、イメージとしては反重力に近いとも書いてあるの」


「反重力って面白そうじゃん!」


 反重力というロマン溢れる単語にテンションが上がった。早速風魔法で反重力を再現すべく下から上に人体を持ち上げられるほどの風を作り出した。そして、それと同じ出力の風を今度は上から下に向かって作り出した。イメージとしてはこんな感じだろうと思いじいちゃんに言った。


「じいちゃん火の玉出して、それにビチスグラビタスやってみる」


 俺がそう言うとじいちゃんは火の玉を作り出してくれた。俺はその火の玉に向かってさっきイメージしたように風魔法を使った。すると、火の玉はとんでもないスピードではるか上空に飛んでいった。火の玉用に出力を抑えるのを忘れていた。


「もー何してるんじゃ。ちゃんと対象に応じてどのぐらいが適切な出力か見極めねば」


「もう一回火の玉出して。今度はちゃんと調整するから」


 そう言うとじいちゃんは火の玉を作り出してくれた。今度はさっきの五分の一の出力でやってみた。すると、火の玉は程よいところで止まり、上から下に風魔法を吹かせ叩きつけた。火の玉はかなりの衝撃で跡形もなく消え去っていた。


「いい感じじゃな」


「これ結構使えそうだね。モンスターとかにも使えるだろうし。まぁ出力をいちいち変えなくちゃいけないのが玉に瑕かな」


「そうじゃな」


「他に面白い魔法ないの?」


「ちょっと待ってのぉ、探してみる」


 そう言うとじいちゃんはミトロシスグリーモのページをめくり良さそうな魔法がないか調べてくれている。俺はその間暇だからと今までの魔法を復習するように適当に使っていた。そこで、試しにエフージオにディオレンテカプティオーニス、ビチスグラビタスの出力を上げられるだけ上げてみようと思った。マナを集中させ、上乗せして上乗せしてエフージオのイメージを付与して作り出してみると、それはそれは大きな延々と燃え続ける火が出来た。俺はエフージオの大きさとずーっと燃えている様子をただじっと眺めているとじいちゃんが言った。


「け、健ちゃん……? どうしたんじゃ? 悩みでもあるのか?」


「え? 俺そんな風に見えてた?」


「うん。なんかぼーっとおしてるから」


「別に悩みがあるとかそんなんじゃなくて、普通にじいちゃんが魔法探してくれてる間暇だからなんかじーっと見てただけだよ」


「そうか。じゃが、もう少し待ってくれ使えそうな魔法があまりなくての。と言うより汎用性が高い魔法や使いやすそうな魔法が少なくての」


「そっか。使いやすそうな魔法が見つかったら教えて」


 俺は再びミトロシスグリーモに書かれていた魔法を使い始めた。とは言うもののディオレンテカプティオーニスは一人で使っても面白くなくエフージオもそこまで面白くない。ビチスグラビタスは攻撃系だしどうしようかと考えていると、ビチスグラビタスの対象を上空に浮かび上がらせるという部分だけ使えば面白いのではないかと思った。早速自分の真下から風魔法で自分を浮かび上がらせることにした。風魔法の出力をミスって浮かび過ぎたら怖いなと思い、最初はそこまで出力を上げずに使った。すると、普段風魔法で飛んでいる時とは少し違う感じがした。いつも飛んでいる時は斜め上に向かうように風魔法で飛んでいるため上に引っ張られる感じだったが、ディオレンテカプティオーニスはトランポリンで跳んでいるような感じだった。今度はもっと出力を上げてみることにした。さっきは一メートルも跳ばなかったが、今回は一メートル強は跳んだ。その跳ぶ感覚が楽しくしばらく跳んでいるとじいちゃんがいい感じの魔法を見つけたのか俺の方を見てきて言った。


「なんか楽しそうじゃの。それよりいい感じの魔法見つけたぞ」


「待ってました」


「名前はコゴウートゥム。これは新しい魔法というより応用のような魔法じゃ。マナを圧縮して局所的に相手に魔法を撃ったりするんじゃと。例えば火魔法の場合、マナを圧縮することによって現代で言う弾丸のようになり相手に致命傷を与えられるんじゃと。ここには弾丸なんて書いておらんが似たような攻撃手段の弓矢のようになると書いてあるな。これはモンスター相手にはかなり有効じゃろうな」


「圧縮するのはやったことないかったけど、上乗せしたマナを圧縮したらさらに威力上がるのかな?」


「それは分からんがきっと上がるじゃろうな」


 俺は試しに普通に集めたマナを団子ぐらいの大きさに圧縮してみた。もっとやろうと思えば出来るが、圧縮度合いによって違いが出るのか試してみたいのだ。団子ほどの大きさの圧縮度合いのコゴウートゥムに火魔法のイメージを乗せて撃ってみると、普通に撃つよりスピードが速く遠くまで飛んでいった。それじゃあ今度はもっと圧縮してエアガンに使われるBB弾ぐらい小さくして撃ってみた。すると、さっきよりもっと速く遠くに飛んでいった。じいちゃんが弾丸って言った理由が理解出来た。それじゃあ最後にマナを上乗せして圧縮してみた。なんと、コゴウートゥムはマナを上乗せして撃つことで本当の弾丸と見紛うほどのスピードと飛距離を有する魔法になったのだ。少年心くすぐられる魔法に心躍らせていると、火魔法を雷魔法や爆発魔法に変えたらどうなるのか気になりやってみることにした。でも、撃つだけじゃどんな感じなのか分からず的が欲しいなと思った。


「じいちゃん、プライシディウム出してくれない?」


「いいぞ。どのぐらいの距離に置く?」


「二十メートルぐらい離れた所かな」


「分かった」


 そう言うとじいちゃんは大体二十メートルぐらい離れた場所にプライシディウムを作り出した。そのプライシディウムの透明度は少し霞んだプラスチックぐらいでどこにあるのか分かる程度の透明度だった。そして、じいちゃんが的になるように火魔法を中央に置いてくれた。


「これならやりやすいじゃろ」


「ありがとう」


 俺はそのじいちゃんの火魔法の的に雷魔法のコゴウートゥムを撃った。すると、火魔法と雷魔法が混ざりバチバチと雷が火を纏ったようになった。俺は初めて見る現象に驚いているとじいちゃんが説明してくれた。


「あれは混成魔法じゃ。人によっては融合魔法や合成魔法とも言うの。原理は簡単じゃ魔法が複数個混ざることで別の性質に変化したり威力が増したりするんじゃ。おそらくミトロシスグリーモの中にも似たような魔法があるじゃろうから探そうか?」


「うん!」


 俺は初めて体験する魔法に興奮しっぱなしだった。少しするとじいちゃんが混成魔法を見つけたのか話し始めた。


「見つけたぞ。名前はイニスイスピラティオ。火と爆発魔法の混成魔法じゃ。混成魔法の名の通り二つの魔法を同時に使うことから始まりその二つを混ぜるという高度な技術が要される。じゃから出来なくとも仕方のないから気楽にやるといいぞ」


「分かった」


 俺は右手に火魔法のイメージを左手に爆発魔法のイメージを作ろうとしたが、アークシィリュームのように単調なイメージじゃないので途中で途切れてしまった。それならとアプローチを変えることにした。二つ同時に使うのは変わらないが、一つの魔法の中に二つの魔法のイメージを入れ込むことにした。すると、さっきまで苦戦していたのが嘘のように簡単に成功してしまった。


「簡単に出来てしまうんじゃな。流石健ちゃんじゃ」


「凄いでしょ」


 そこから俺は他の混成魔法も試してみようかなとも思ったが、一度に全部試してしまうとこれから先の楽しみが減ってしまうと考えた。同様にミトロシスグリーモの中にある魔法も残しておこうと考えた。


「それじゃあ俺もうそろ帰るよ」


「そうか。残りの魔法はまた今度じゃな」


 じいちゃんからミトロシスグリーモを受け取り話を続けた。


「そうだね。一度に全部教えてもらっても覚えきれないしイニスイスピラティオなんて名前——」


 俺が魔法名を言った時、イニスイスピラティオがミトロシスグリーモから射出された。幸いじいちゃんに当たることなく適当な方向に飛んでいった。俺とじいちゃんは今起こったことに困惑した。


「エフージオ」


 俺が魔法名を言うと、ミトロシスグリーモからエフージオが射出された。


「これって、そういうことだよね?」


「そうじゃろうな」


 俺とじいちゃんのテンションは最高潮に達した。まさかの発見に俺とじいちゃんは子どものようにはしゃいだ。じいちゃんが自分も魔法を撃ってみたいと言うので渡し一緒に感動を分かち合いそこからしばらく二人でミトロシスグリーモの凄さを体感した。ひとしきり楽しんだのちじいちゃんに別れを告げ現実に戻ってきた。それでも興奮冷めやらぬ感じでしばらくベッドの上でニヤけが止まらなかった。

次回もお楽しみに


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