93話 ミトロシスグリーモ①
家に帰ってきた翌日 俺は学校に行こうと朝早く起きたが、塩田先生から来週から来るように言われたのを忘れていて何だか損したような得したような何とも言えない感情を覚えた。とりあえず朝ご飯を食べることにした。
「来週から学校行くんだってね。それまで家でゆっくりしてなさい」
「はーい」
「父さん仕事行ってくるから。来週まで暇だからって遊びに行ったりして迷惑かけるんじゃないぞ」
「家で大人しくしてるよ」
「それじゃあ行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
父さんが仕事に行きゆっくり朝ご飯を食べながら今日から来週まで何をしていようかなと思ってカレンダーを見た。今日は金曜日で来週の月曜日まで今日含めて三日もある。これだけの猶予というか暇があるのだからある程度の事は出来る。何なら龍王から教えてもらった空間に切れ目を発生させてテレポート出来る魔法の検証も出来る。さらに、ミトロシスグリーモの魔法を一つ一つ試すことだって出来る。この三日は楽しく有意義な三日になるぞと確信した。朝ご飯を食べ終え自室に戻ると何から始めるか計画を立てることにした。
まず、龍王から教えてもらった魔法はまだ分からないことが多く安易に遠くまで移動して帰れなくなったらいけないので、やるにしても駅までぐらいにとどめることにした。とは言っても朝のこの時間帯は人が多いだろうし、やるにしても微妙な時間帯を狙ってやるしか無い。その反面ミトロシスグリーモは魔導書であるためベッドでゴロゴロしながらでも読む事は出来る。その魔法を試すことは部屋では無理だが、忘れられた記憶の断片の中なら試すことが出来るためミトロシスグリーモの魔法からやることにした。
「ミトロシス」
ミトロシスグリーモを持ちながらそう唱えると、普通に開けようとした時はびくともしなかったページが普通の本のようにめくれた。早速中身を拝見しようと覗き込んだのだが、何と書かれているのか全く分からずお手上げ状態だった。龍王の時代の物なのだから言語も違うだろうし仕方ないかと思ったが、諦めきれずスマホで色々検索したが全くダメだった。せっかく神話級と思しきアイテムをゲット出来たのに実践することなく宝の持ち腐れになるのかと悔しく思っているとじいちゃんが言った。
(神代文字なんていつぶりかのぉ)
「じいちゃんこの文字知ってるの!?」
俺はあまりの驚きに大きな声を出してしまった。咄嗟に口を塞ぎ母さんにはバレないでくれと思い時間が過ぎるのを待った。二階だからリビングまでは届いていないのだと安心した俺はじいちゃんに再び話しかけた。
「じいちゃんもしかしてこの文字読める?」
(そりゃそうじゃ。儂らの時代はこの文字だったからのぉ)
その言葉に一つの疑問が浮かんできた。じいちゃんはもしかして龍王の時代もとい神代の時代に生きていた人なのではないかという疑問だ。俺はその疑問を解決するためにじいちゃんの所に行った。
「ねぇじいちゃん、じいちゃんってもしかして神代の時代の人なの?」
「そうじゃぞ。言ってなかったかの?」
「言ってないよ。それじゃあミトロシスグリーモの魔法も読めるってことだよね?」
「もちろんじゃ。じいちゃんに任せなさい」
俺はじいちゃんにミトロシスグリーモを開いた状態で渡した。すると、じいちゃんはミトロシスグリーモに書かれている内容を音読してくれた。
「最初は火魔法からじゃな。これはどの時代でも廃れることなく使われるであろう魔法の一つ。魔法の原点でありこれから先の世代にはどんな進化を遂げているのか楽しみな魔法だ。ここでは私の火魔法を書かせてもらう。私は火魔法に持続性を持たせた。普通の火は燃やす物が無くなれば自然と消えるが、私は消えない火魔法を作った。その火魔法は自らマナを吸収し使用者の意思でしか止まる事はない。その火魔法の名をエフージオと名付けた。そして、これを読んでいる誰かに向けてアドバイスをしよう。エフージオはサポート魔法のようにマナを吸収して火魔法に変えるというのを頭の中でずっとイメージし続けるんだ。そうすればずっとエフージオは燃え続ける。と書かれておるの」
「アークシィリュームを発動させ続ける感じで周囲にあるマナを火魔法が吸収するようにイメージでやればいいのかな?」
「そうじゃろうな。試しにやってみたらどうじゃ?」
「うんやってみる」
俺はじいちゃんに促されるままエフージオを使えるか試してみた。イメージは自分が思っていた通りに行い頭の片隅にそのイメージを残してエフージオを撃った。見た目は他の火魔法と変わらないが、撃ったのにずーっと燃え続けていた。試しにイメージをやめてみるとふっと消えた。一発でエフージオが成功して嬉しくなった。
「流石じゃな。この調子で他の魔法も試してみるか?」
「うん!」
「そうかそうかそれじゃあどんな魔法を試してみたいんじゃ?」
「そう言われると難しいな……」
俺は少し考えた。エフージオのように一般的な魔法の派生系の魔法もいいが、龍王のテレポートのようなまったく新しい魔法もいいなと思っているとじいちゃんが言った。
「これなんて面白そうじゃぞ。ディオレンテカプティオーニスって名前の魔法で、対象が集中させているマナを奪うんじゃと」
「何それ!? どうやってやるの!?」
まさかのまったく新しい魔法がじいちゃんの口から語られ俺の興味はその魔法に首ったけになった。
「えーと、自分のマナを操作するように相手に流れているマナを操作することで自由に出来るらしい。そして、その自由に操作したマナを自分の物にするのがディオレンテカプティオーニスなのじゃと。注意書きとしてこの魔法はかなり高位のマナ感知を持っていないと使えない上、相手のマナ感知が自分より勝っていれば使えないため使うタイミングは難しいと書かれておる。言われてみれば至極その通りじゃが、モンスター相手にも使えるかも知れんし思ったより有能かも知れんの」
「確かに。じいちゃん実験台になってよ」
「健ちゃんは人使いが荒いのぉ……まぁ役に立てるのならそれでいいんじゃがな」
「ありがとうじいちゃん。これからも頼りにしてる!」
「それじゃあマナを集中させるから試してくれよ」
「うん」
そう言うとじいちゃんはマナを集中させるために目を閉じた。俺はじいちゃんのどこにマナが集まっているのか判断出来るように極限まで集中した。すると、じいちゃんの体内に流れているマナが見えた。心臓から右手に向かって流れるマナをいつもみたいに俺の右手に集まるようにすると、じいちゃんが目を見開いた。なぜかと言うと、俺がじいちゃんのマナを奪ったからだ。じいちゃんも初めての感覚だったのだろう。今までにみたことないほど驚いていた。
「す、すごかったぞ……何と言うか、その、儂が操っていたマナが磁石に引き寄せられたみたいな感じじゃった。対抗しようとも思ったがやめておいたから今度は抵抗してみてよいいかの?」
「もちろん。負けないよ」
「望むところじゃ」
俺とじいちゃんはディオレンテカプティオーニスを使ってマナの綱引きのような遊びをしていた。俺が勝ったりじいちゃんが勝ったりして楽しかった。じいちゃんは俺のマナ感知を褒めちぎってくれていたが、勝敗は五分五分だったためじいちゃんのマナ感知も俺と同じレベルなのだと感じた。じいちゃんは知った上で俺の自尊心を高めて魔法を好きになってもらうために褒めちぎってくれたのだろう。もしかしたら、 本当に俺とじいちゃんのマナ感知はとてつもないレベルなのかも知れない。




