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アルカディアリベル  作者: 描空


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91話 決闘

 龍王が超音波のような咆哮で俺と決闘をしたいワイバーンに召集をかけてしばらく経った。体をほぐしたり深呼吸をしたりして決闘の準備をしていると遠くからワイバーンの羽ばたきと思しき音が聞こえてきた。龍王のいる部屋から外を眺めると遠くに黒い塊が見えた。目では全然数は分からないのに羽ばたきの音はなかなかに大きく聞こえてきているため、かなりの数のワイバーンがいるのではないかと思った。


「来たか。決闘場に案内する。ついて来い」


 龍王に促され決闘場に向かった。そこは現実のコロッセオのようにかなりボロボロの実戦場のような場所だった。過去数多の決闘が行われたんだと確信した。


「ここではどんな魔法もアイテムも使って良い。だが、決闘相手のワイバーンは殺さないでくれ。同胞がまたこの世を去るのを見たくはない。相手のワイバーンにも殺さないように言う。だから貴様も頼むぞ」


「分かった」


 そんな話をしているとワイバーンたちの羽ばたきの音がかなり近くまで近づいていた。十体はいるんじゃないかと思うほどの音圧にワイバーンたちが来ていた方を見ると、黒や茶、赤褐色のワイバーンが予想通り十体ほどいた。それらのワイバーンは俺を見つけると鋭い眼差しを向けてきた。龍王に比べれば大したことないなと思っていると、龍王がワイバーンたちに指示を出した。俺を殺さないこと、決闘する者をひとり選ぶことなどを指示すると、ワイバーンの中で一番大きな黒い個体が俺と決闘をするように決まった。


「健斗よ、もう一度言うが殺しは無しだ。自分がワイバーンより強いということを証明すればそれでワイバーンたちは従う。分かったな?」


「分かった」


 龍王は本当に仲間想いなのだろうなとしみじみ思った。俺と黒いワイバーンが決闘場で相まみえるとワイバーンは威嚇してきた。俺は最善を尽くすために劣覆拳を嵌め、豪嶽砕を擦り合わせた。両者準備が出来たのを確認した龍王が決闘開始の合図を出した。ワイバーンは開始の合図と同時に火のブレスを撃ってきた。俺はプライシディウムを作り出し防いだ。その間にアークシィリュームを発動させいつ攻撃されても大丈夫なようにした。ワイバーンはブレスが効かないと分かったのか噛みついてこようとしたが、俺はそれを避けて腹に豪嶽砕を叩き込んだ。だが、そのワイバーンの腹は硬い表皮で覆われておりダメージは通らなかった。ワイバーンは小さくすばしっこい俺を捕捉出来ず探し回っていた。俺はワイバーンの図体のデカさを利用して尻尾の付け根あたりに隠れて雷の古代魔法を準備し終えた。


「こっちだよ間抜け!」


 俺は風魔法で空中に飛び上がり笑みを浮かべながら言った。すると、ワイバーンは口を大きく開けてブレスを吐こうとしたが、その大きな口は良い的となり俺は雷の古代魔法を口の中に撃ち込んだ。


「グガア゛ア゛ア゛」


 さすがのワイバーンも体内は弱いのか痛そうにしていた。その間にじいちゃん直伝シクットソルを作り出した。これを見て降参すると思っていたが、ワイバーンは無謀にも突っ込んで来た。俺は本当にいいんだなとシクットソルを撃ち込もうとした時、龍王が尻尾でワイバーンを地面に撃ち落とした。


「馬鹿者があんな魔法に突っ込む奴がどこにおる! 感情に支配され冷静さを失うなと何度も言っているだろうが! 健斗も殺しは無しだと言ったのにあれは何だ!? あんなのワイバーンなんか骨すら残らんぞ」


 龍王にそう言われシクットソルがそれほど高威力なのだと知った。それと同時にじいちゃんはどんなバケモノ魔法作り出したんだと畏敬の念が湧いてきた。


「これにて決闘は終わりだ。この人間は貴様らワイバーンより強いこれでいいだろ」


 ワイバーンたちは何だか怒られている子どものような雰囲気を纏っていて少しかわいく思えた。龍王はワイバーンたちに帰るように命じた。ワイバーンたちは素直に帰って行った。なんか龍王は龍種を纏めるお母さん的な立場なんだなと思った。


「貴様、今我を母を見る目で見ていたぞ。そんな目で我を見つめるな」


「あっ、ごめんなさい」


 思っているだけのつもりだったのにまさかそんな風に見つめていたとはと自分に驚いた。


「それより決闘は終わったのだ約束のアイテムと条約を結ぶぞ」


「はい」


 龍王は初めに俺をアイテムと金銀財宝が入っている部屋に案内した。そこは見たこともないアイテムや金銀財宝が所狭しと敷き詰められており見ているだけでも恍惚としてしまうほどだった。俺の反応を見た龍王は何だか嬉しそうに言った。


「これほどの物人間界では見られまい。存分に堪能すると良い。我はその間に条約の条文と用紙を作成する。魔法で作るゆえ最後に貴様にも手伝ってもらうからそれまで自由に選んでおけ」


 そう言われ俺は部屋の中にある物全てを見る勢いで目を皿にして何かいいアイテムがないか探した。俺がアイテムを探し始めるとじいちゃんたちが興奮気味に話し始めた。


(こりゃ凄いのぉ……まさかカイルムにこれほどの金銀財宝とアイテムがあるとはのぉ)


(ほんとすげーな! こんなの空想上でしか見たことないぞ。この中からアイテム一つ選べって方が無理だろ)


(あれもこれも良さそうで何を選べばいいのか全然分からないね。この中のアイテムもしかしたら全部神話級ってこともあるんじゃない?)


「確かに……」


 そう思うとどれを選ぶかで俺の運命が変わる気がしてどれを選ぶべきか迷いに迷った。


(健ちゃんがこれだと思ったのにするんじゃ)


(そうだぞ。アイテムを選ぶ時に直感に勝るものはないからな)


(手に取ってみたほうがもっと確かに何か感じ取れるんじゃない?)


 シロの言った通り一つ一つアイテムを手に取ってみることにした。剣から杖、槍、盾など様々なアイテムを手に取ったが、これだとビビッときたものは無かった。ダメかーと腰を下ろそうとしたが、さすがにここで腰を下ろして何か壊してしまったらヤバいと思い何もない壁際の所まで行き腰を下ろした。ふーと息を吐き近くを見渡すと、金銀財宝や他のアイテムとは比べ物にならないほど古く色褪せている本があった。外見は忘れられた記憶の断片(アルカディアリベル)に似ていて親近感のようなものを覚えた。それを手に取り中を見ようとしたが、どうやってもその本は開かなかった。何で開かないのかと疑問に思っていると龍王がやってきて言った。


「健斗よこっちへ来い。貴様の出番だ……ってそれにするのか?


「え? あぁなんかこれが目について」


「我はここにあるアイテムについて何も知らないから何のアドバイスも出来ないから自分で決めるんだな。さ、こっちへ来て条約にサインしろ。条文は話し合って決めたことしか書いておらん。それと、相互援助は人類に対してではなく健斗個人に要請する。それは健斗が要請する場合も同じだ。種族に対してではなく個人だ。分かったな?」


「分かった」


 龍王は机の上に条約の用紙を魔法で作り出しており、それにサインをするように言っていた。俺はサインをしようと思ったが、書く物がなく困惑していると龍王が言った。


「この用紙に手を押し付けてマナを流せ。それがサインとなる」


「へー凄い魔法だな」


「当たり前だ我は龍王と崇められる存在だからな」


 本心から感心していると龍王が続けた。


「それよりアイテムはそれで良いのか?」


「んー……これの使い方が分かればなって」


「どれ貸してみろ。我がみてやる」


 龍王がその本を手に取り少しの間目を瞑った。何か分かればと願っていると龍王が言った。


「どうやらミトロシスグリーモという魔導書らしい。開く時にミトロシスと唱えれば使えるようになる。我らの時代の魔法がここに書かれているらしいから相当なものだろう。これにするか?」


「はい!」


 龍王の時代の魔法が使えるなんて神話級確定であり、テンションが上がらないわけがない。


「もうやるべきことは無くなったな。皆の元に帰るか? それとも我に何か聞きたいことでもあるか?」


「またここに来るにはどうすればいいですか?」


「あはは! また来たいか。気に入った。目を閉じろ貴様にここに来れる魔法を教えてやる」


 俺は言われた通り目を閉じた。すると、龍王は俺の頭に手を置いた。その手はゴツゴツしていて冷たかった。そんなことを考えていると頭の中に龍王が使っていた空間の切れ目のような魔法が流れ込んできた。


「元いた場所を想像しながら試してみろ」


 俺は龍王に流し込まれた空間の切れ目のような魔法を使った。すると、目の前に空間の切れ目が現れた。


「まさか一度で出来るとは……貴様に出会えて良かった。さ、そこを通れば元いた場所に戻れる」


「ということは頭の中でイメージした場所に移動出来る魔法ってことですか!?」


「いかにも。さ、皆貴様を心配しているだろう。早く安心させてやれ」


「はい。また来ます」


 空間の切れ目を通ると実戦場の上空に出た。咄嗟に風魔法で浮遊し落下は防げた。辺りを見渡すと実戦場には誰一人いなかった。俺は不思議に思いスマホを開くと夥しい数のメールと電話がかかってきていた。とりあえず家に帰ろうとそのまま飛んで家に帰った。


「ただいま」


 家の扉を開けると父さんと母さんがリビングから涙を浮かべながら飛んできた。二人は号泣しながらどこに行っていたのか心配した無事で良かったと言った。俺は何が起こっているのか把握出来ないでいたが、とりあえず父さんと母さんに謝り落ち着くまで抱きしめた。

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