90話 乱入
校内選抜二回戦三回戦とユースたちは勝ち続け駒を進めた。暇な時間は俺が魔法を教え四人がそれを実践してを繰り返し続けること早く二日。四人の魔法は飛躍的に成長し同じく魔法を教えていたすみれちゃんも飛躍的に成長した。ユースたち四人は実戦で魔法を瞬時に使っても違和感なく戦えるようにまでなり、すみれちゃんは火と水に加え風魔法も使えるようになった。みんなの成長を見て心が満たされていた時、死嫌のリングが光り輝いた。何だ何だと慌てているとじいちゃんと武帝、シロが一斉に叫んだ。
(ヤバいぞ健ちゃん! 龍じゃ! 龍が来るぞ!)
(おい健斗構えろ! これはマジでヤベーぞ)
(健斗逃げて! 早く逃げて! あんな相手勝てっこない!)
死嫌のリングの反応と三人の異様なまでの慌て具合に俺も心拍数が上昇し慌てているとユースが驚きながら言った。
「どうしたの!? 何があったの!?」
「分からない……でも、死嫌のリングが反応してる……」
そう言った時、実戦場の上空に空間の切れ目のようなものが現れた。その場にいた皆がその空間の切れ目に注目した。
(ヤバいヤバい!)
(何だってんだよ!)
(健斗逃げて! 早く!)
シロの言葉通り逃げるべきだと思っていたのに現状に本能が危険信号を発しているのか足が全く動かなかった。頭も何も回らずただその空間の切れ目を見つめていると、その空間の切れ目からワイバーンに似た頭部を持つモンスターが現れた。
「龍だ……」
ユースや周りの人たちもただ呆然と見つめながら口にした。俺はもう立っていられず尻餅をつきそうになった時、シロが言った。
(健斗逃げて! 逃げられないならせめてみんなを守るかして! ただ立ち尽くしてないで行動して!)
シロの言葉にハッとした。俺は実戦場のみんなを守るためにプライシディウムを作り出した。龍が空間の切れ目から完全に姿を現した。体は細長く伝承や創作物で見た通りの見た目だった。でも、唯一違うのは生物としての本能が全力で警戒信号を鳴らしているのだ。実戦場にいた者は膝から崩れ落ちていたり、泣き出していたりとカオスそのものだった。すると、その状況を一変させるように龍が喋り始めた。
「先日、我が同胞がこの地に降り立ち屠られた。一人の少年の手によってだ。我はその少年を探している。見た感じこの中にいそうだが、どうだ? 我が恐ろしくて名乗り出すのは無理だろうな。だが、その少年には名乗り出してもらわねばならん。もし、名乗り出さないもしくは、誰かが匿っている場合、ここら一帯を焦土と化すまで焼き尽くしてくれる。さぁ名乗り出よ。我が同胞を屠った強き人間の少年よ」
あの龍が言っているのは俺のことだと理解できた。でも、龍相手に名乗り出るほどの勇気を持てないでいるとユースが俺を抱きしめた。ユースに抱きしめられると不思議と勇気が湧いてきた気がした。それに、俺が名乗り出ないとみんな殺されてしまうというのも要因の一つだっただろう。
「生きて帰ってきてね」
ユースの言葉に頷き風魔法で龍の前まで飛び上がった。
「貴様か、我が同胞を屠った少年というのは」
「そうです」
「よい。それではついて来い。他の者たちには手は出さん」
俺は龍の言う通りついて行った。龍が空間の切れ目に入ると俺もそれに続いて入った。中は雲の上にある幻想郷のような感じだった。神話の時代にありそうな建物に神殿のような場所だった。こんなにも恐ろしい龍がこんなにも綺麗で幻想的な場所に住んでいるのかと思っているとじいちゃんたちが言った。
(ここはカイルムじゃな)
(カイルムだな)
(カイルムだ)
三人とも何か知っているようだったから聞きたかったが、独り言を言って怪しまれたらと思うと何も言えなかった。龍は黙ってどこかに向かっているようだった。目の前には大きな建物がありそこは王の玉座がありそうな雰囲気の場所だった。龍はその玉座がありそうな場所に行った。俺は風魔法で離れないようについて行くと、そこには金で出来た何の形も模していないオブジェクトのようなものがあった。何だと思っていると龍がその金のオブジェクトに巻きついた。人間で言うイスのような感じなのだろうと思っていると龍が喋り始めた。
「話をしようか強き少年よ。まずは名乗らなくてはな。我は龍とドラゴン、ワイバーンその他の龍種を司る原点の龍だ。人間は始龍や龍帝、龍王など様々な肩書を我に付けたようだが、そんな話をしたいわけではない。少年よ名は何と言う?」
「小出健斗です」
「小出健斗か。ならば健斗、貴様ら人間にとって我ら龍種はどのような存在だ?」
龍からのまさかの問いに驚いたが、変に取り繕えばボロが出ると思い真実を話すことにした。
「えーと、人によれば格好良くその強さに惚れ込む存在ですが、一方では大切な人を龍種に失われたことから恨んでいる人もいます。私が以前ワイバーンを討伐したのも、国がワイバーンによる被害を恐れて発令した討伐依頼に従ったまでです。私たち人類は自衛をしただけです」
「そうか。だが、もう少し相手の言葉を聞いてくれてもよかったんじゃないか?」
龍王の問いかけは明らかに俺たちが龍種に対してどんなふうに思っているのか理解していないようだった。
「失礼ですが、目の前に自分の天敵が現れて反撃しない逃げない隠れない動物はいません。私はそのうちの反撃を選んだだけです。それに、攻撃してきたのは向こうの方です。自分たちが生きるために最善を尽くした結果です」
「確かに一理ある。我が同胞がすまなかったな。だが、我らとて同胞を失って悲しむ者や怒りを覚える者もいる。そのような者たちを抑えるのは決して容易いことではない。そこでだ健斗、貴様には決闘をして欲しいのだ。同胞を殺され貴様を殺したいと思っているワイバーンたちが多々いる。いつ人間界に被害が出るか分からない状況だ。我らとしてもそれは避けたい。互いに戦力を失い憎しみを増幅させるだけの復讐は何も生まん。だからこそ決闘なのだ。やってくれぬか?」
「いやいや俺のメリット微塵も無いじゃないですか。それなのに決闘をしろなんて無茶ですよ。それに、そっちが始めたことなのに何でこっちが責任取らなくちゃいけないんですか? こっちの方が責任とって欲しいぐらいですよ!」
俺は思っていることを言った。相手が龍王だからと臆するのではなく人類代表としての意気込みを持ち堂々と反論した。すると、龍王が金のオブジェクトから少し離れて近くにあった扉を開けた。そこには金銀財宝と様々なアイテムがあった。
「メリットはこれだ。ここにあるアイテムのどれかを決闘をした報酬として与える。勝ち負けは関係ない。ただし、負けた時は死ぬ時だと心得ておくように」
「いや、それでも釣り合わないって。こっちは命かけてるんだぞ。そっちもそれ相応のリスク負ってくれよ」
俺がそう言うと龍王は少し考えた。そして結論を出した。
「それならアイテムに加えて条約を結ぼう。互いに不可侵で尚且つ平等な条約を。名前は人龍平等不可侵条約で良いだろう。詳しいことは追々決めて行くとして、これなら文句はないだろう?」
「それに相互援助も加えて互いに助け合う関係にしよう」
今ならこっちの要望も通ると思った俺はそう提案した。すると、龍王は言った。
「いいだろう。だが、互いに助け合うということは龍たちが他の強大な存在と戦う時にも来てもらうことになるが良いのか?」
「そ、それは人間には荷が重いな……」
「それなら互いに取捨選択出来る権利を持たせるか。人間界がピンチになっても弱い龍種は助けに来ず、強く人間に協力的な龍のみ来させる。同様に龍界がピンチになれば貴様のように強い人間がこちらに来て助けてくれる。これなら相互援助と言えるのではないか?」
「確かにならそれなら決闘してもリスクリターンが合ってる。これで決まりだ。それで決闘をしたいってワイバーンとはいつやるんだ?」
「そのワイバーンたちを呼ぶ。その中から一体と決闘してもらう。準備をしておけ」
龍王がそう言うと耳をつんざくような超音波のような咆哮をした。咄嗟に耳を塞いだけどそれでもなかなかに辛かった。何か一言言ってくれても良かったんじゃないかと不満に思った。でも、これから決闘が始まるのだと気持ちを切り替えた。
次回もお楽しみに




