89話 成長②
春奈の対戦が始まった。どんな戦いを見せてくれるのか、俺が教えた魔法は見せてくれるのかワクワクが止まらなかった。じいちゃんも俺に魔法を教えていた時はこんな気持ちだったのかなと思った。でも、俺の場合は弟子の成長を見守る師匠って感じではなく弟子の成長に驚かされてばかりの師匠って感じだったなと思い出した。そう思えば俺は師匠泣かせな弟子だったのかもなと思っていると春奈が戦い始めた。銀翼の天使で高く飛び上がり相手が攻撃出来ない場所まで離れると相手は火魔法や爆発魔法を撃ってきた。だが、相手はあまり魔法を得意としていないのか春奈の所まで魔法が届いていなかった。春奈はその隙に出来る限り高威力で広範囲な火魔法を撃つための準備をしていた。さすがにそんなにやらなくてもいいんじゃないかと思うぐらい大きな火魔法を作り出した春奈は言った。
「降参する? それとも足掻いてみる?」
「降参します」
相手が降参を選んだことに心から安心した。もし、対抗策も無いのに降参しないバカだったら見るに耐えない惨状になっていただろう。俺以外にユースたちもほっとしたのか安堵のため息をついた。春奈が戻ってくると俺たちは同じ学校の人相手にあんな魔法使うんじゃないと怒った。春奈はきちんと反省してくれたようで一安心した。きちんと自重することも教えないとなと感じた。
春奈の対戦が終わりしばらく他の人たちの対戦を見ながらその人がどんなアイテムを持っているのかなど観察眼を養う訓練をしている最中春奈と勝、透は午前中とは比べ物にならないほど集中しており、そのおかげからどんなアイテムでどんな魔法のレベルなのかピタリと当てるようになった。観察眼はもう十分なほど養われたと感じた俺はこれをもっと発展させることにした。
「それじゃあ次は、対戦で使われた魔法をそっくりそのままの威力大きさ精度になるようにしてみようか。ただし、他の人に迷惑にならないように大きすぎる魔法や爆発魔法とかは雷魔法はこのぐらいかなって頭の中でイメージするだけに留めるように」
そこから春奈たちは俺の指示に従った。すみれちゃんはと言うと、まだ一年生なため別の指示を出すことにした。
「すみれちゃんは、対戦してる人たちに負けないように魔法のイメージをしてみようか。例えば、今戦ってる人が魔法の準備をし始めたらすみれちゃんも始めてその速さを競うんだ。もし、誰にも勝てない状況だとしても魔法のイメージは続けること。私ならここで魔法を撃つって感じでもいいし、この相手ならこうやって魔法撃つみたいに色々考えること。聞きたいことがあれば何でも聞いて」
「はい」
すみれちゃんも俺の指示に従い観察眼と魔法に慣れる訓練を始めた。これならみんなの魔法をもっと発展させてあげられると確信した。しばらくみんながどんな感じでやっているのか見ていたが、春奈たちは結構上手く出来ていた。ユースも雷魔法以外の魔法にも挑戦していて好印象だった。すみれちゃんはと言うと対戦で魔法が使われるのに合わせて手のひらに小さな火魔法を作り出していた。魔法を作り出すスピードは対戦している人たちより一拍遅いが、一年生でしかも今日は魔法を使い始めたにしては十分過ぎるほどだった。ここから自分の力でより洗練された魔法使いになれれば俺がいなくても強くなれると確信した。
「小出先輩」
「どうした?」
すみれちゃんに呼ばれた。
「火魔法と水魔法のイメージの違いに何となく違和感があって」
「もうちょっと具体的に教えてくれないか?」
「火のイメージをマナに持たせるのは上手く出来るんですけど、水のイメージをマナに持たせるのが出来ないんです。なんか集中させたマナが散乱しちゃうって感じで」
すみれちゃんの言い分は分かったが、俺がやる場合そんなことにはならないし透たちからもそんなことは聞いたことがない。尾形先生なら知っているかもしれないが、今聞きに行くのはどうかと考え自分で結論を出すことにした。マナが散乱する場合出来る対処法は、さらに多くのマナを集中させて散乱しても魔法が作り出せるようにするか、マナが散乱する前に水のイメージを持たせることしか思いつかない。それだと根本的な解決にはつながらずすみれちゃんのためにならないと考えているとふと思うことがあった。
「どんな感じのイメージしてる?」
「川を流れる水をイメージしてます」
それがマナが散乱してしまう原因なのではないかと思った。マナに流れる水のイメージを持たせることで集中させたマナが流れる水のイメージに引っ張られて流されているのだと結論付けた。
「多分その流れる水のイメージが悪いんだと思う。水槽に溜まってる水とは池の水みたいに動いてない水をイメージしてやってみて」
「分かりました」
すみれちゃんは俺の指示通り水魔法を作り出すと手のひらの上に水の玉が現れた。
「出来ました!」
「良かった。多分だけど、マナが流れる水のイメージに引っ張られてどこかに行っちゃってたんだと思うから、今度からマナを集中させた後も意識しながらやってみて。他の魔法使う時にも役立つかも知れないし」
「流石小出先輩ですね」
「まぁね。それじゃあ引き続き頑張って」
「はい」
すみれちゃんと話している間、春奈たちは俺に指示されたことを黙々とやり続けており、目では対戦を見ながら手元では使われている魔法を作り出し続けていた。その様子は少し不気味にも思えた。でも、これが出来るようになれば戦っている相手が瞬時に魔法を撃ってこようとしても、反射的にその魔法を打ち消せるほどの魔法で対抗することが出来るという意図もあるのだ。しばらくそのまま放置しているといつの間にか透の対戦が近づいてきていた。透はそれに気がつき控室に向かった。今の今までやっていた成果が出ればなと思っていると透が実戦場に出てきた。
透の対戦が始まると、透は開幕地面から木を生やし対戦相手に向かって撃ち込んだ。相手は風魔法で飛び上がり避けた。透もさっきまでやっていたように相手の魔法をコピーするように風魔法で飛び上がった。相手が先に最高到達点に達していて魔法を先に撃たれると思っていると、透は相手より僅かに先に火魔法を撃った。相手を見続けいつ魔法を撃ってくるのか把握していたから出来たことだろう。相手は魔法を先に魔法を撃とうとしていたのに透が先に魔法を撃ってきて驚いていた。透と対戦相手の魔法がぶつかり合い対消滅を起こすと、透は相手がその対消滅に気を取られている間に魔法の準備をしていたのか地面に降りたと同時に雷魔法を撃った。相手はモロにくらったが、立っていた。だが、かなりふらふらでもう戦えないと思っていると鷲田先生が透の勝利を宣言した。相手は負けたことで意識が切れたのか倒れそうになった。でも、透が木を生やして支えてあげていた。そんな所まで見ているなんてと心底驚かされた。
透が観客席に戻ってくるとユースたちに褒められとても嬉しそうにしていた。俺も透を褒めた。きちんと相手を見ていて瞬時に対応出来ていたことや気を配ることも出来ていたことを褒めると本当に嬉しそうにしていた。誰かに物事を教えることの良さと教えた相手が成長する感動を初めて知った。これからも色々教えてあげようと思った。
次回もお楽しみに




