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アルカディアリベル  作者: 描空


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88話 成長①

 昼休憩が始まり食堂に行くとありえないほどの人数で食堂は埋め尽くされていた。いつもなら実戦授業が時間より早く終わったりしてある程度人が少ない時間帯に食べれたりしていたのだが、このようなイベントの時は事前に抜け出しておかないと食堂に収容出来ないほどの人が集まるのを忘れていた。


「どうする?」


 俺がユースたちに聞くとみんな何とも言えないようで結論が出なかった。お腹は空いているが、この人数の中昼ご飯を食べる気にはなれないようだった。どうしようかなと悩んでいるとユースが言った。


「先に健斗に魔法教えてもらってから食べるのだと一回途切れちゃうから効率悪いよね」


「そうだなぁ……どうするか」


 俺たちは食堂の隅でどうしようか悩んでいたが、こうしていても状況は好転しないと思いとりあえずご飯を買う列に並んだ。長らく待っているとようやく俺たちの番になった。俺たちはいつもと変わらないメニューを頼みどこに座るかと見渡したが、座れる場所は一切無かった。どこかいい席は無いかと思っていた時、妙案を思いついた。席が無いなら作ればいいのだと。俺は食堂の邪魔にならない場所にプライシディウムを作り出しそれを人数分触れる長いイスと広いテーブルに変えた。


「みんなこっち」


 俺がそう言うと、みんなは俺の昼ご飯が宙に浮かんでいることに目を丸くしていた。俺はきちんとみんなに説明をした。


「プライシディウムだよ。保護バリアのあれ」


 みんなはまだ疑っているようだったけど、俺が座って見せたことでようやく信じてくれた。ご飯を食べ始めたが、みんな未だにイスとテーブルを気にしていた。透明だからとは言えそこまで気になるかと思った。ガラスみたいな物だと思えばそこまで気にならないのになとも思った。ご飯を食べ始めてから少しした時、観客席で俺に話しかけてくれた一年生の女の子が座る場所が無く困っていた。俺が声をかけようとしたその時その子と目が合った。その子もユースたちと同じように目を丸くしていた。側から見ればトレーに乗ってるご飯と俺たちが浮いているように見えているだろうから驚くのも無理はないだろう。


「座るところ無いんだったらこっち来なよ」


 俺がその子にそう言うとその子はトレーが浮いているのを不思議そうに見つめながらこっちに向かって来た。ちょうど俺の隣が空いていたため座るように促した。


「ここ座れるよ」


「え……す、座れるんですか?」


「試しに俺が座ってみるよ」


 俺が一瞬だけそこに座って見せるとその子はようやく信じたのかゆっくり腰を下ろした。トレーも俺たちのトレーと同じように並べて置いた。


「えっと、ありがとうございます」


「いいよいいよ。そう言えば俺の友達紹介してなかったからするよ。こっちからユース、春奈、透、勝って感じ」


「えっと、桜田すみれって言います。な、仲良くしてください」


 俺がみんなの紹介をしたのに続いてこの子も自己紹介してくれと思っていたが、俺の願望通り自己紹介してくれて良かったと安心した。


「すみれちゃんって言うのね。よろしくね」


 ユースが笑顔で挨拶を返したのに続いてみんなも挨拶をした。そこからユースと春奈の視線が俺に向いた。


「健斗、すみれちゃんとはどういう関係なの?」


 ユースの問いに俺は真摯に答えた。


「えっと、ユースが戦ってる時にすみれちゃんが話しかけてくれたんだ。それで今さっき困ってそうだったから呼んだだけだよ」


 ユースと春奈は疑いの目を向けて来たが、すみれちゃんが反論してくれた。


「小出先輩が言ってることは本当です。私が個人的に小出先輩の強さをテレビで見て憧れてたから話しかけただけです」


「別にそこは疑ってないわよ。健斗が歳下に手出すようなクソ野郎なんじゃないかって疑ったのよ」


「健ちゃんはクソ野郎なんかじゃないわよ。ユースだって一年関わってきて分かってるでしょ!?」


「それは分かってるけどこんな可愛い子に急に声かけたんだよビックリもするって」


 そんな感じでユースと春奈が言い合いをしていると透と勝が申し訳なさそうに謝った。すみれちゃんは何とも言えない苦笑いで頷くしかなかった。


「この二人はおいてといて、すみれちゃんって得意な魔法とかある? もし良かったらこの後俺暇だから四人に魔法教えるんだけど一緒にやる?」


「いいんですか!?」


「「えー!?」」


 ユースと春奈は驚いていたが、そんなこと気にせずすみれちゃんの答えを求めた。


「一緒にやる?」


「是非お願いします!」


 というわけですみれちゃんも一緒に俺の暇つぶしでやることになった魔法教室に参加することになった。昼ご飯を食べ終えた俺たちはグラウンドに行くことにした。訓練場で行うことも出来たが、魔法に適した場所とは言えないためある程度何でもしていいグラウンドにしたのだ。


「それじゃあまずは火魔法からいこうか。と言っても適当にするんじゃなくていつも以上にゆっくり丁寧にマナを感じながらやるように。四人はそのままやってて俺はすみれちゃんに色々教えるから。何か聞きたいことがあれば言って」


「「「はーい」」」


 ユースたち四人は俺の指示通り始めたが、すみれちゃんはまだ一年生ということで上手く出来ないようだったので補助してあげた。


「まだマナがどんな感じか分からないだろうからマナを流してみるね。何かが体の中を駆け巡るからその感覚を掴んで。ちょっと肩に手置くけど、そこからマナ流すから安心して」


「はい分かりました」


 俺はすみれちゃんの両肩に手を置きマナを流した。間藤さんがやってくれたものの請け負いだが、効果的なのは理解していたのでやってみた。マナを流し続けること数分、すみれちゃんはマナを感じ取れたのか反応を示した。


「凄い……」


「どう感じ取れた?」


「はい。何となくですけど感じ取れました」


「それがマナなんだ。今四人はそのマナを特定の場所に集中させて火のイメージを乗せてるんだ。やれるかな?」


「やってみます」


 そこからしばらくの間すみれちゃんはマナを集めることだけに集中した。四人はと言うと、いつもとは桁違いの大きな火魔法を作り出していた。その大きさは一メールほどでかなりの熱量を放っていた。


「よしそれじゃあ今度はその大きさの火魔法を瞬時に作り出せるようにしてみて。いつ何時モンスターが襲ってきても十分な火力で反撃出来るように」


 すみれちゃんを見てみると、まだマナの感覚を掴めていないのか眉間に皺を寄せていた。


「手貸して」


 俺はすみれちゃんの右手のひらを上にして手の甲から支えるように触れた。俺は自分がマナを集中させる感覚やそのマナにイメージを乗せる感覚を伝えられればと思い試した。俺の手越しにすみれちゃんの手にマナを集中させ火魔法を作り出すとすみれちゃんは目をキラキラさせていた。


「これが魔法……」


「そう。何となく感覚掴めるかなってやってみたけどどうだった?」


「さっきより分かりやすかったです。自分でもやってみます」


 そんな感じで四人とすみれちゃんを交互に見ることになった。四人に指示を出したらすみれちゃんを見て、そこから四人にまた指示を出してと一時間ほど続けた。その結果、すみれちゃんは小さいながらも自分で魔法を作り出せるようになり、四人は瞬時に大きな魔法を作り出せるようになった。そんなことをしていると春奈の対戦が近づいてきた。春奈が実戦場に戻ろうとした時、俺たちはちょうど休憩中だったから区切りもいいし今日はここまでにした。春奈の対戦で成長した姿が見られると思うと親や師匠という立場の人の気持ちが分かる気がした。

次回もお楽しみに


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