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アルカディアリベル  作者: 描空


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85話 静観

 逆さのダンジョンの攻略授業が終わり少し経った。学校内ではもう既に競技会の校内選抜の話で持ちきりだった。俺以外のいつメンのみんなはいつも以上に実戦授業に打ち込んでいてやる気を感じた。俺としてはみんなやる気あっていいなと見ていた。その時、クラスメイトの前田が話しかけてきた。前田とは選抜戦以来話しておらず少し久しぶりに思えた。


「小出くんは今年も競技会出るの?」


「いやー今年は出ないかな」


「え!? なんで? 勿体なくない?」


 前田の意見は何度も言われたためもう返答もワンパターン化してきていた。でも、同じ返答だと味気ないなと思い少し変えてみることにした。


「自分で言うのはなんか変な感じだけど、俺恵まれてるから他の人にチャンスあげようかなって。それに俺以外の人にも活躍して欲しいからさ」


「そうなんだ。でも、小出くん以外の人は小出くんが背負うはずだった期待を全て背負うことになるんだよ。その重圧の中でみんないい戦績残せるかな?」


「確かに……」


 前田の視点には気づいていなかったが、俺にはそんなこと関係ないしどうしようも出来ないためなんとも言えなかった。


「まあそのぐらいのプレッシャーでコンディション悪くなったりいつも通りのこと出来なくなるようじゃ、本当に強いモンスターの前に立ったら呆気なく死んじゃうかもね」


 案外怖いこと言うだなと驚いたが、実際そうだろうから的を得ている発言だと感心した。もしかしたら前田はそこそこ優秀な攻略者になるかも知れないと思った。間藤さんのギルド、烈火の鳳仙花にでも紹介してあげようかなとも思った。でも、まだまだ学生だからちゃんと攻略者として経験を積んでからだな。なんて考えているとユースたちが休憩がてら俺と前田が何を話していたのか話しかけてきた。俺が校内選抜のことだと言うとみんな攻略授業で時間が空いたからか、チャンスだと競技会に出るように言ってきた。俺はみんなのしつこい勧誘から逃げるように風魔法で空中に飛び上がった。


「卑怯だぞー!」


 みんながそんなことを言ってきたが、俺は耳を塞いで何も聞こえないようにした。そんな感じで空中にぷかぷか浮かんでいたら授業が終わった。ひとまず俺への勧誘は止まったと思っていたのに更衣室で着替えていると普通に勝たち以外のクラスメイトからも遠回しに競技会に参加して欲しいという言葉を投げかけられた。でも、俺は適当に受け流しみんなは少し残念そうにしていた。別に俺が出なくてもユースとかが活躍してくれるだろうからいいだろうと思った。ユースならヨハネス夫婦の娘だし実力もあるし俺と同じぐらいの活躍は出来るだろう。期待もそれなりに引き受けてくれるだろうからユースに頑張ってもらうしかない。今日はなんとかみんなの勧誘をのらりくらりと躱し家まで帰って来られた。この心労を癒してくれるのはシロしかいないとシロに会いに行った。


「シロー」


 俺はすぐにシロに抱きついた。シロは頭を俺に寄せて癒してくれているようだった。俺は心が満充電されるまでシロを抱きしめ続けた。シロは何の文句も言わずに抱きしめられていて本当に優しいなとしみじみ思った。しばらく抱きしめているとシロが話しかけてきた。


「競技会何で出ないんだ?」


 シロもそのことについて聞いてくるのかとガッカリしたが、シロたちには本当のことを話してもいいだろうと思った。


「競技会の運営があからさまに対戦で誰が誰と当たるか操作してたりしたから嫌になったの。競技会も視聴率取らなくちゃいけないからって思いがあったんだろうけど、さすがに運営の大人たちの汚いところが見えちゃったから出場する気にはなれないなって」


「確かに。人間は自分たちの利益しか考えないような奴が多いからな。人間同士でもそう思うんだから相当だろうな。それじゃあ競技会に出ない間何するんだ? 一緒に遊びながら訓練でもする?」


「うーんまぁその時になったら考えるよ。とりあえず今はシロのもふもふを堪能する」


「はいはい」


 シロはそこからはずっと黙ってただ俺が満足するまでもふもふさせてくれた。ひとしきりもふもふして満足した後はシロと鬼ごっこをしたりボール遊びをして楽しんだ。シロに別れを告げ競技会のこと校内選抜のことなんて考えずにその日は眠りについた。


 翌日からはみんな俺を校内選抜にエントリーするように言ってこなかった。みんなようやく諦めてくれたのだと少し安心したと同時にもっと早くから諦めて欲しかったなと不満も感じた。でも、いつまでもそんな気持ちじゃ自分の心に悪影響だとそんな感情を振り払った。学校に着きいつも通り朝のホームルームが終わると塩田先生が勝を呼び出した。何かあったのかなと思っているとユースが言った。


「何不思議そうな顔してるの? 逆さのダンジョンでゲットした両刃剣の鑑定が終わったから取りに来るように言われただけでしょ」


「あぁ言われてみれば」


 勝が両刃剣のアイテムをゲットしていたことをすっかり忘れていた。どんな性能なのかも分かっていない状況だったからこれは楽しみだとワクワクしながら待っていた。しばらくして勝が教室に両刃剣を持って帰ってくるとクラスのみんなから羨望の眼差しを向けられていた。勝は少し表情が緩んでいて嬉しそうにしていた。


「早く教えてくれよ」


 俺が勝に言うと勝は嬉しそうな表情のまま説明を始めた。


「名前は凍界無別(とうかいむべつ)って言って、自分より前にある物全てを凍らせるっていう性能の星座級アイテムでした!」


「「「おー!」」」


 俺たち以外にもクラスのみんなからも賛辞の言葉が投げかけられた。まさか星座級だとは思っておらずみんな素直に褒めることした出来ないのだろう。玄人級ならそこまで欲する人は多くない。英雄級ならかなりの人が欲しいと思う。星座級からはほとんど手に入らないから現実味がないのだ。神話級なんて数十億といる人口の数人しか持っていないのだから無い物として扱っている人が多い。大体そういう風に感じている人が多い。だから、星座級を手にした勝はみんなから驚かれ賛辞を贈られているのだ。俺からしても星座級は良いなと思った。でも、俺に戦力が集中するよりみんなが一緒に強くなってくれる方が全体的に見れば戦力増強に繋がるからよしとした。


 凍界無別を手に入れた勝は実戦授業の最中一人でずーっとどうすれば使えるのか試していた。それと、自分より前にある物全てを凍らせるため誰も前にいてはならず離れて試すしかなかったのだ。俺はそんな勝が寂しくないかと時々調子はどうか、進捗はどうか聞きに行っていた。勝はイマイチ上手く力を発揮出来ておらず不機嫌になっていた。俺は色々アドバイスした。豪嶽砕のように特殊な感じかも知れないし、孤高の先達者みたいに特定の条件下でしか発動しないのかも、といったようになるべく結果をすぐに求めるのではなくゆっくり丁寧にやればいいんだと諭しながらアドバイスをした。勝は理解してくれ少し軽い気持ちで力はどうすれば使えるのか試し始めた。両刃剣を振ってみたり地面に突き刺してみたりゲームみたいに楽しみながらやっていた。その時、両刃剣が中央で二つに分かれた。俺の豪嶽砕のように二刀一対の剣になり俺たちは興奮を隠しきれなかった。


「すげぇ! 二パターンで戦えるってことじゃん!」


 俺たちは興奮し続けながらもどうやって力が使えるか試した。勝がニヤニヤしながら二つに分かれた両刃剣を両方とも地面に刺すと、両刃剣が刺さっている空間だけ真っ白になった。俺たちは何が起こったのか理解出来ないでいたが、試しにその空間を触ってみると痛いほど冷たかった。勝は両刃剣の片方を抜いてみると何事もなかったかのように普通の状態に戻った。


「これって剣を刺した所より前の空間にある物全てを凍らせるタイプ?」


 勝は俺の言葉を聞くと少し離れた場所に片方の剣を突き刺した。すると、再び空間が真っ白になった。俺の予想は合っていたようで勝は剣を抜いた。


「これやべーな」


「やべーな」


 俺たちは凍界無別のヤバさを実感したと同時に星座級からは別格の性能なんだなと認識した。こう思うと万物潰崩はまた違ったヤバさだと感じた。もっと他の星座級のアイテムも知りたいという知的好奇心が沸々と湧いてきた。こういうもの攻略者を続ける一つの理由なんだろうなと学生ながらに思った。

次回もお楽しみに


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