81話 共闘
マグヌスゲッコーの下を通り抜け少し歩いていた先にゴブリンの骨のような物が散乱していた。白骨化しておりかなりの時間が経過していることが見てとれた。
「これ何の骨?」
春奈が不思議そうに問うたが、全員分からず何とも言えなかった。でも、今まで骨なんて無かったのでこの先に何らかのモンスターがいるのは確実で俺たちの間に緊張が走った。
「いつでも戦えるようにね」
俺たちはユースの指示に従いアイテムを手にしていつでも戦えるようにした。俺は豪嶽砕を擦り合わせ、勝は不撓の拳を嵌め、透は蒼紋の杖を構え、春奈は銀翼の天使を展開しながら剣箔を抜いた。俺たちはいつでもどこからでもモンスターが襲って来ても大丈夫なように全方向に意識を向けた。少し歩みを遅めながら進むとそこには足が異様に発達し爪も鋭利で翼が退化したカラスのようなモンスターがいた。そのモンスターは三メートルほどあり、目はギョロギョロと焦点があっておらず色んな方向に向いていた。だが、俺たちに気がつくと一気に目の焦点が合い咆哮してきた。
「ガァ゛ァ゛ァ゛ガァ゛ァ゛ァ゛」
明らかにヤバい見た目に逃げようかとも考えたが、ユースは雷王の剣で全身に雷を纏った。やる気なんだと思うと同時に全員にアークシィリュームを発動させた。このモンスター相手に手を抜いている場合じゃないことは全員が察していた。そのモンスターは俺たちが向かってくることを察知したのか頭を下げて姿勢を低くし突進でもして来そうな体勢を取った。だが、その構えは咆哮による攻撃だった。
「ガァ゛ァ゛ァ゛!!!」
さっきとは比べ物にならないほど大きな咆哮に俺たちは咄嗟に耳を塞いだ。そのモンスターはここぞとばかりにその強靭な足による攻撃をしてきた。俺たちを蹴り飛ばそうとして来たり突進して来たりした。だが、俺たちもそんな安直な攻撃をくらうほど弱くはない。そのモンスターの外見に気圧され一時はヤバいと思ったが、安直な攻撃が多く後隙も大きいため案外簡単に討伐することが出来た。
「コイツの見た目めっちゃ嫌いや。それよりコイツなんて名前のモンスター?」
「マンニャコルビスよ。ダンジョンの環境に適応して飛ぶことをやめたカラスよ。きっと、手前にあった骨もコイツが食べたやつでしょうね」
俺の問いにユースが答えてくれた。本当に何でも知っているなと感心したが、俺はそこまでモンスターを覚えられる記憶領域を持っておらず毎回ユースに教えて貰えばいいやと思った。再び攻略を再開しようと進み始めたが、少しすると行き止まりにぶつかった。もうここは何もないかと思っていたその時、勝が壁にもたれ掛かるとその壁が不自然に動いた。俺たちはここに何かあると確信した。俺が爆発魔法で壁を崩すと中には宝箱が一つあった。
「俺が開けてもいいか?」
勝が遠慮がちに俺たちに問うて来たが俺たちは勝が見つけたのだからと遠慮することなく開けるように言った。宝箱を開け中にあった物を取り出した勝が俺たちに見せてくれた。それは上下に刃がついている両刃剣であり近接職の勝にはピッタリだった。
「おー似合ってるじゃん」
「うん似合ってる」
「マジ? いい感じ?」
俺たちが勝とアイテムのことを褒めると勝は嬉しそうに笑った。これで本当にここにはもう何もなくなり来た道を戻っている時、そう言えばユースが競技会でゲットした二つのアイテムのことを聞いていないと思い聞くことにした。
「なぁユース、競技会でゲットしたアイテムどんなだった? 薙刀ともう一つあるだろ。俺たちにだけ教えてくれよ」
「そう言えば言ってなかったわね。ダンジョンで見つけた薙刀の方は蒼火の薙刀って言って青い火を纏う薙刀で、競技会から貰ったのは護守の髪飾って言うアイテムで一度だけ致命傷になるダメージを肩代わりしてくれるっていう星座級のアイテム。どう凄いでしょ」
「「「おぉー」」」
俺の万物潰崩も星座級だが、この雰囲気では何となく言い出しづらいなと思ったが、別に言わなくていいかとなった。そこから元いた三叉路まで引き返すと行かなかった右の道を進み始めた。しばらく進んだがモンスターがいないため不審に思っていると道の先から人の声がした。その声はモンスターと戦っているようだったが、助けを求めるような悲痛の声ではなく仲間とモンスターに勝つための精一杯の努力が感じられる声だった。俺たちは助けなくては大丈夫かと別の道を行こうとしたが、もしかしたら助けが必要な状況になるかも知れないと近くで待機することにした。その間休憩もできるし助けが必要になったら助けられるしで一石二鳥だった。ゆっくり腰掛けて休憩していると次第に話し声がなくなった。歓喜の声もなかったのでそんなに強いモンスターじゃなかったのかなと思い近づいてみることにした。するとさっきより小さな声で話しておりモンスター討伐出来たんだなと思った。俺たちは必要ないかなと違うところに行こうとした時声をかけられた。
「え!? ユースさんと小出さんっすよね? ちょ、マジラッキーじゃん! え、俺たちの戦い見ててくれたんすか?」
見事な金髪ギャル男がテンション高そうに話しかけて来た。今の時代こんなスタンダードなギャル男いるんだと驚いた。
「ごめんなさいね戦いは見てないわ。あなたたちが戦ってる声が聞こえたから近くで待機してたの」
「そうだったんすね。ちなみに、この先ちょっとだけでいいんで共闘とかしてくれないっすか? うちのグループの奴らも絶対喜ぶんで!」
ユースは俺たちにどうするという顔で見て来た。俺たちは別にいいんじゃないかと返した。俺たちのことを慕ってくれているっぽいから悪い奴ではないと判断したのだ。
「分かったわ。それよりそのグループの仲間は?」
「さっき戦った所でモンスターの戦利品見てるっす。実は俺そういうのは苦手で、だから後ろからモンスターが来てたりしないか確認しに来たら皆さんがいたって感じっすよ」
「そうなのね。それじゃあ仲間の所まで案内してくれる?」
「お安い御用っすよ!」
少し歩くと開けた空間に出た。その空間の中央に火魔法の光源がありそこにいることが分かった。
「みんなービッグニュース! まさかまさかのユースさんと小出さんたちが共闘してくれることになりました!」
「「「えー!?」」」
そこには時代を感じさせないギャル達がいた。男二女二のグループで全員がギャルというこの人たち平成を生きているのかと思うほど見事なものだった。
「そう言えば自己紹介がまだだったすね。俺は真島晴人で、こっちが中川美希に芦田桜、最後が和田拓人っす」
「「「よろしくお願いします!」」」
見た目とは違い礼儀正しい挨拶に人は見かけによらないということを実感させられた。俺たちも自己紹介をしないとなと思ったが、真島に俺たちのことは知ってるからと止められた。とりあえず挨拶だけ済ませ一緒に攻略を再開した。道中アラネアや小型のモンスターがいたが、こんなの狩ってる時間はないというユースの指示でどんどん奥に進んだ。しばらく奥に進んでいるとまた開けた空間に出た。だが、そこには火魔法による光源が一つあった。俺たちが真島たちより前に誰かいたかと問うたが、そんなはずはないと驚きと不安が入り混じったような顔で言った。
「魔法が使えるモンスターは天災級以上だから気をつけてね」
ユースの言葉に俺たちは頷いた。ひとまず相手がどんなモンスターなのか知ることが先決だと観察した。だが、ダンジョン内は暗くその火魔法も小さかったためどこに魔法を使っている主がいるのかまでは捉えられなかった。どうしよかと悩んでいるとユースが言った。
「逆に奇襲してみる?」
まさかの提案に驚いたが、それしかないかとも思った。その時、俺の独自魔法であるヌラ・レフラリフレクティブを使えば安全に確認出来ると考えみんなに言った。
「俺が近づいてモンスターの正体を探るからみんなはここで待ってて」
真島たちは小声で反対したが、ユースは俺を信じているため後押ししてくれた。俺はみんなから少し離れた場所でヌラ・レフラリフレクティブを発動させ火魔法に近づいたが、辺りにモンスターはいなかった。だが、無数のモンスターと思しき骨が散らばっていた。俺は何となく上を見てみると、そこには大きな口を開けているマグヌスゲッコーのようなモンスターが天井に張り付いていた。俺はみんなの元に戻りそれを伝えた。
「天井にマグヌスゲッコーみたいな奴が張り付いてた。春奈の万感リングでなら見えると思う」
春奈は視覚を調整し俺が見たモンスターを見た。
「本当にいる……それとあの火魔法、ベロの先端がそう見えるだけだわ」
衝撃の事実に俺たちは驚愕した。チョウチンアンコウのように体の一部を擬似餌のように進化させているモンスターがいることは初耳だったのだ。
「マンクシャマレオーミスだわ。カメレオンみたいに体の色を背景と同化させ、舌先をモンスターを誘き寄せるのに使うの。ここの個体はおそらくマグヌスゲッコーのように足裏が天井を歩けるように進化したんでしょうね。そこまで強くはないから真島くんたちだけでも倒せるわよ。私たちがサポートに回るから安心して」
「マジっすか?」
「マジ」
真顔で言うユースに真島たちは覚悟を決め一歩を踏み出した。さすがに見えなくては戦いづらいだろうと火魔法でマンクシャマレオーミスが見えるようにしてあげた。全貌が見えるようになり気がついたが、そいつの大きさは五メートルはあろうというぐらいデカかった。マンクシャマレオーミスは暗いのに慣れていたからか急な光源の出現に目を塞いだ。真島たちはその隙を見逃さず魔法で攻撃し始めた。マンクシャマレオーミスは自慢の舌を使った攻撃を繰り出したが、真島たちに簡単に防がれた。ユースの言う通り本当に弱いんだと思っていると、真島たちもそう思ったのか魔法の威力を強めた。マンクシャマレオーミスは力尽きたのか天井から落っこちて来た。
「弱くね?」
真島たちもあまりの弱さに驚いていた。そりゃあれだけ警戒した相手がこんなに弱かったらそんな反応にもなるかと少し納得した。
「それじゃあコイツの後始末お願いね。私たちは別の所行くから」
「「「ありがとうございました!」」」
真島たちはしっかりと頭を下げて礼を言った。俺たちは真島たちに別れを告げ次なる所へと向かった。
次回もお楽しみに




