8話 部活
栄誉のダンジョンを後にした俺たちは訓練場に向かった。道中校庭や体育館などで様々な部活動が行われており活気に満ち溢れていた。至る所から掛け声が聞こえておりその場にいるだけで何となく気分が良くなった。訓練場に着くと、そこには金田先輩と多数の先輩たちがいた。
「来たか。そっちの子たちは?」
「二人は見るだけです」
そんなやり取りをしていたら金田の後ろから先輩たちがゾロゾロとやって来た。一年生は俺たちしかおらず、気分が良いのだろう。先輩たちは心なしか嬉しそうな表情をしていた。
「それじゃあ二人も最初は見てて」
俺たちは金田先輩にそう指示され訓練場の隅で見学した。先輩たちは人によって服装が異なり実戦服を着ている人もいればスポーツウェアを着ている人もいた。そんな事に気を取られていると先輩たちが組み手を始めた。柔道や空手だと思われる動きをしている先輩もいれば、全く異なる動きの先輩もいた。近接戦闘部だから、決まった型や動きはないのだろう。自分に合った立ち方、構えを突き詰めていった結果、今の先輩のようになったのだろう。逆に柔道や空手のような動きの先輩は習っているからそうしているのだろう。
「休憩」
金田先輩の掛け声で先輩たちが水分補給をした。今のところは準備運動を兼ねた全身運動だと思われる。先輩たちもまだまだ動き足りないといった反応だった。
「三つ巴」
金田先輩の言葉に先輩たちが三人一組を作った。先ほどは二人一組だったのを三人に変えることで近接戦闘に深みを出しているのだろう。時と場合によっては二人でモンスターと戦う場面も出てくるかも知れないし、実戦は一対一だけとは限らないという事も考慮しての内容だろう。さっきまでは一人に集中していれば良かったが、三つ巴となるとそうはいかない。一人に集中していれば、もう一人からの攻撃に気づけない。だからと言って、二人に集中するのは至難の業だろう。だからか、先輩たちの中には二人と距離を取って避けるのに徹している人や、二人に攻撃して反撃を貰わないように小まめに攻撃をしている人もいる。個性出てるなと思っていると金田先輩が指示を出した。
「終了」
先輩たちは二人一組の組み手より明らかに疲れていた。神経も使うだろうし、体力も使うだろうから疲労がすごいのだろう。そんなことを思っていると金田先輩が俺と勝に近づいて来た。
「どう? 本当に序盤しかやってないけど雰囲気は分かったでしょ?」
「「はい」」
「次からは実戦を想定したメニューで木剣とか使うから。アイテム使う奴もいるけど、今日は四人も見学してくれてるから危なくないように使わせないから。もし、アイテム有りのメニューも見たいんだったら訓練場の外からになるけどそれでも良いならやるよ」
俺と勝はその言葉を聞いて透と春奈にすぐに説明した。透も春奈もアイテムを使った戦闘に興味があるのか快諾してくれた。
「金田先輩、アイテム有りのメニューもお願いします!」
「今年の一年生はやる気満々で良いね! それじゃあ早速やっちゃうから外から見ててね。もし怪我しちゃったらいけないから」
俺たちは外に出て窓から中にいる先輩たちを見た。金田先輩が始まる合図をくれた。俺たちは興味津々でその場面を見守った。
金田先輩は刀を取り出し、相手の先輩はトンファーを持っている。パッと見ではどちらが勝つのか分からなかったが、決着はあっという間だった。金田先輩は目にも止まらぬ速さで相手の懐に潜り込み一本取ってしまった。俺たちはその卓越した身体能力に最高にテンションが上がった。ひとしきりみんなと金田先輩について褒めていると、金田先輩が窓をコンコンと叩き次始まるよと教えてくれた。
次の先輩たちはどちらも杖を持っていた。俺たちはてっきりここにいる先輩たちは全員近接職だと思っていたので驚いた。さらに、その先輩たちも金田先輩のように卓越した身体能力を有していた。二人は互いに魔法を使うことなく決着がついた。一瞬で距離を詰められる相手に対して魔法なんて意味が無いと理解させられた。
「どうだった?」
金田先輩に俺たちは思いの丈をぶつけた。金田先輩たちの身体能力はどうしてそこまで高いのか、アイテムの力を見せてくれなくて残念だったなど思っていることをぶつけた。すると、金田先輩は俺たちを落ち着かせ訓練場の中に戻るように言った。俺たちは訓練場の中に戻ると金田先輩が説明してくれた。
「まず、俺とかあの魔法使い二人がどうしてそこまで速く動けるのかだけど、これはアイテムの力なんだ。と言っても、俺の刀やアイツらの杖の力じゃない。光正では毎年文化祭や体育祭とは別に学年別のトーナメント戦を行うんだ。光正選抜戦って言うんだけど、これを勝ち抜いた生徒に報酬があるんだ。それがこの指輪のアイテムなんだ。これは装着者の身体能力を乗算してくれるアイテムで、これを付けてるからあんな事ができるんだ」
突然の情報過多により俺たちの頭はパンクした。すると、金田先輩は一から説明してくれた。
「ごめん急に言っても分からないよね。まず、光正選抜戦から説明しようか。これはさっき言った通りトーナメント戦なんだけど、一年生は一年生と、二年は二年とって感じで学年で区切られてるんだ。でも、近接と後衛はある程度分けられてて、最初のうちは近接は近接と当たって、後衛は後衛と当たるようになってるんだ。でも、最後の方は近接も後衛も関係無し。報酬は順位で違って、俺たちはトップ10入りしたからこのアイテムを貰えたんだ。ここまでは良い?」
俺たちは頷き金田先輩が続けた。
「追加で説明しておくと、この選抜戦は各攻略校が行ってて、全国攻略校選抜競技会って言う全国大会もあるんだ。そこで優勝すれば、有名企業からスポンサー依頼だったり、国からのアイテム譲渡だったりと色んな事が目白押しだ。ちなみにこの競技会は一年生から出場できるが、まず校内選抜を突破しないと出場すら出来ないし、出場出来たとしても一年から三年まで混同だから勝ち進むのはまず無理だな」
そんな大会があるんだと思っていると、金田先輩は続けた。
「このアイテムなんだけど、名前はそのままなんだけど膂力増強リングって言うんだ。選抜戦を勝ち抜いた各学年のトップ10は光正が所持してるアイテムの中から好きに選べるんだ。一位から順に選ぶ事になるからなるべく上の順位の方が得は大きいね。多分、一年生のうちが一番上位狙うの簡単だから今のうちに頑張っておいたら後々みんなと差つけれるかも知れないよ」
俺たちは良いことを聞いたと心の中でガッツポーズをした。もし、選抜戦でトップ10入りしたらユースさんも俺を認めてくれるだろうしやらない手はない。金田先輩はそうアドバイスをすると、水分補給をした。そして、また俺たちに外に出るように言った。俺たちはまたアイテムの力を見れるんだと思いワクワクした。今度はさっきまでとは違い先輩たちも外に出て来た。
「ついて来て」
俺たちはどこに行くのか分からなかったが、とにかくついて行った。そこは周りに建物がない校庭のような場所だった。こんな殺風景な場所で何をするのかと思っていると金田先輩が説明してくれた。
「これからアイテムの力を最大限使うっていうだけのメニューをやる。近接戦闘部とは言うが、それだけをやる訳ではない。て言うよりどの部活でもアイテム使ってるから俺たちも取り入れてるんだ。近接戦闘だけ極めても意味が無いからな」
そう言うと、金田先輩は鞘から刀を抜き両手で握った。呼吸を整え刀を一振りすると、刀の軌道上が後から爆発した。その爆発はかなり大きく、衝撃波が飛んでくるほどだった。俺たちは初めて見るタイプのアイテムに心を奪われた。
「どう? カッコイイでしょ!」
金田先輩の言葉に俺たちはすごいカッコイイと言った褒め言葉を投げた。俺たちがアイテムの説明を求めると快く答えてくれた。
「俺のアイテムの名前は爆斬刀・真だ。さっきは斬った軌道を爆発させたけど、当てるだけで爆発させたり爆発させるタイミングをもっと遅らせる事もできるんだ。結構使い勝手良いんだ」
それから俺たちは先輩たち一人一人のアイテムをじっくり観察した。振動を起こせる物や雷を発生させる物、炎を噴き出す物など様々だ。ほとんど全てのものが目新しい俺たちにとってとても楽しい一日だった。
「今日はこれで終わり来たくなったらいつでも来てね。他の部活もあるからそっちも見てから決めてね」
「「はい!」」
「それじゃあお疲れー」
「「お疲れ様です」」
俺たちは帰路についた。今日一日は色んな事があって疲れた。でも、その分学びになったし楽しかった。勝たちも良い表情をしており最高の一日だった。父さんと母さんにも話してあげようと思った。でも、じいちゃんの事は流石にややこしいから言わないでおこう。
ゆっくりお待ちください




