9話 アイテム
「みんなおはよう。今日は自分のアイテムを使って授業をする。人によってアイテムの種類が異なるから先生が複数人付いてくれる。近接系は俺で魔法系は尾形先生で、特殊系は鹿島先生って先生だ。授業の場所も違うからな。近接系と魔法系は校庭、特殊系は実戦場だ。午後は座学だから午前目一杯頑張るように」
俺たちは更衣室で実戦服に着替え校庭で待っていると塩田先生と尾形先生がやって来た。近接系と魔法系はかなり多く、クラスの八割ほどだ。春奈の銀翼の天使は特殊系に分類されており、この授業では一緒じゃないのが残念だ。名前からしてカッコイイのにそれを見られないのだから。
「全員集まったな。それじゃあ始めて行くぞ。まずお前らのアイテムは一つとして同じ物はない。だから、アイテムの力の種類や引き出し方は異なる。でも、大抵のアイテムの扱いはそんなに難しくない。力を込めたら発動したり、アイテムの力をイメージしたら発動したりと癖は少ない。たまーに癖のあるアイテムがあるけど、俺の記憶ではそこまで苦労するアイテムは無かった筈だから、そんなに深く考えず自分が思った通りにやってみたらいい。それじゃあ近接系と魔法系に別れろ」
塩田先生の指示でみんな自分のアイテムに応じて近接系は塩田先生、魔法系は尾形先生の元に集まった。俺はじいちゃんに貰った杖と氷刃剣があるのでどっちに行けばいいのか分からず塩田先生に聞いた。
「先生、俺って杖と氷刃剣あるんですけどどっちに行けばいいですか?」
「自分の好きな方でいいぞ」
「分かりました」
俺はじいちゃんに魔法を教えて貰えるから学校では近接系を教えて貰うことにした。
「それじゃあやって行くぞ。みんな自分のアイテムの事は何となく理解していると思うが、まだそんなに詳しくないだろう。だから今日は、自分のアイテムに詳しくなる事がメイン目標となる。それじゃあ俺が手本を見せるからみんな少し離れろ」
俺たちは塩田先生の指示に従い少し離れた。すると、先生は勝のアイテムと同じような拳に装着するガントレットのようなアイテムを装着した。そして、塩田先生が右拳で正拳突きをした。一瞬何も起こらないと思っていたら、急に衝撃波が俺たちを物理的に押すように押し寄せて来た。俺たちはその事実に興奮して先生に説明を求めた。すると、先生は俺たちを落ち着かせて説明を始めた。
「俺のこのアイテムは掌撃拳って言うアイテムで、拳で殴った物や殴った時に衝撃波を発生させるアイテムだ。一見すると破壊力は無さそうなアイテムに見えるが、鉄筋コンクリートも力の強さ次第で簡単に砕けるぞ」
俺たちは少し先生から離れた。流石に鉄筋コンクリートも簡単に破壊できるような危険なアイテムから距離を取るのは当たり前の事だ。塩田先生は俺たちの反応に楽しそうに笑った。
「あはは! そんなに怯えなくても大丈夫だ。それに、俺が生徒に手を出す訳ないだろ。もっと詳しくアイテムの力を発動させる感覚を説明すると、掌撃拳は力を込めて殴るって言う一連の動作を行う事で力が発動する。お前らのアイテムにも力が発動する条件がある。それはイメージを思い描く事だったり、力を込めるだけかも知れない。とにかくやらないと分からないからやってみろ。やってみても分からなかったら俺かユースにコツを聞くように」
ユースさんは急に名指しされ驚いていたが、塩田先生が頼むぞと言いたげな顔で見ると仕方ないなと少しため息をついていた。ユースさんは面倒だから話しかけないでオーラを全身に纏い誰からも相談されないようにしていた。流石にそんな雰囲気の人に話しかけるほど俺たちはバカではないので一人で試行錯誤した。
氷刃剣は魔法とは違いマナを必要としない。塩田先生の説明が正しいのであれば力と思いのみ。両手で氷刃剣を握り刀身が氷を纏うようにイメージしてみた。でも、思うようにいかなかった。なら今度は思いに応えるというのを試してみた。心の中で氷刃剣に対して力を発揮してくれと頼んでみた。それでも、氷刃剣はうんともすんとも言わなかった。俺はアプローチの仕方を変えてみることにした。俺に従わせるように力を思いっきり込めた。さらに、俺に従うように幾重にも思いを乗せた。すると、氷刃剣は刀身に氷を纏った。俺はそれを確認して氷刃剣を素振りしてみた。氷刃剣は地面を凍らせ地面に氷柱を逆さにしたような氷を出現させた。
「やったな小出! 一歩進めたな。次はもっとコンパクトにしたり思い描いた力を出現させれたら使いこなしたような物だ。みんなも小出を見習えよー」
ユースさんを除いた近接系で一番最初にアイテムの力を出現させた俺はクラスのみんなからコツを一斉に聞かれた。俺はアプローチの仕方を変えたことを教えると、みんな力を出現させることに成功した。
「よーし全員使えるようになったな! それじゃあ次のステップだ。次はその力を自由自在に使えるようにすること。じゃないと実戦で役に立たないからな」
「「「はい!」」」
俺たちは先ほどに続きアイテムの力を自由自在に扱えるように試行錯誤した。でも、繊細な力調節がかなり難しく、思った通りに力を発揮できなかった。きっと慣れもあるのだろうが、俺たちのアイテムに対する理解度の低さが原因ではないかと思った。そこで俺は勝に不撓の拳について詳しく説明して貰うようにお願いした。
「勝、不撓の拳について詳しく教えてくれよ」
「え、まぁ良いけど。不撓の拳はどんな状況でも諦めない心を持てるアイテムだけどそれがどうしたんだ?」
「そうじゃない。もっと詳しく教えてくれ。例えばどんな状況でその諦めない心を持てる力を発揮できるのかとか、その諦めない心でパワーが上がるのかとか」
「……そんなの分かんねーよ」
勝は少し考えたが答えを出せなかった。俺の考えは正解とまではいかないかも知れないが、要因の一部である可能性は十分にある。
「俺はその理解度の低さがアイテムを使いこなせない理由だと思うんだ。だから、実験台になってくれ」
「はぁ!? どう言うことだよ? それに俺のアイテムは諦めない心を持てるだぞ。今の状況で発動すると思うか?」
「それも理解度の低さからくる誤解かも知れない。不撓の拳を装着していることによって、どんな状況でも決して諦めたりしないって言う効果かも知れないだろ? それに、勝は今の状況で諦めようとしてるか? 本心はそんなこと微塵も思ってないだろ? だから、理解度を高めるにはもっとアイテム自体を深く知って俺たちもアイテムに応える必要があるんだ」
俺が熱弁すると勝の気持ちが変わったのか、覚悟が決まったのか表情が変わった。凛々しく、俺を見つめるその目線は来いと訴えているようだった。俺は深呼吸をして氷刃剣を強く握り勝に目で合図を送った。俺は助走のため勝と少し離れた。そして、助走をして勝のが頭の上で構える不撓の拳に向かって正面から氷刃剣を振り翳した。でも、俺の氷刃剣は塩田先生によって止められた。
「授業に対する姿勢としては100点だが、そこまでして確かめなくても結構。
相川、お前の不撓の拳は真正面から向かってくる相手にも決して負けない心を持てる事が分かっただろ?
小出、お前の氷刃剣は持ち主の力と思いが強ければ強いほど威力を発揮する。現に、俺の掌撃拳は凍りつき俺の手自体にもダメージを与えることに成功した。
二人とも考え、発想は文句の付け所はない。だが、お前らはまだ生徒だ。そして、俺は先生だ。お前たちを守る責任がある。今後、こういうことをする時は俺でも鷲田先生でもいいから先生にお願いするように。分かったな?」
「「……はい」」
「でも、実際お前らの行動は正しい。アイテムに対する理解度は本気じゃないと高められない。二年生でもお前らほどアイテムの理解度が高い生徒はそう多くない。このままいけば選抜戦で優勝するのは二人のどっちかかもな」
俺たちはその言葉に自然と表現が明るくなった。気分が良くなり透がどんな魔法を使っているのか見てみると、透は風魔法で校庭に小さな砂嵐を起こしていた。俺たちは苦笑いするしかなかった。午前の授業が終わり食堂で春奈の午前についても聞くことにした。
「春奈の方はどんなことやったんだ?」
「それがねー、鹿島先生が特殊系は扱い方を間違えると危険だからってアイテム使うことすらできなかったの」
「「「えー」」」
俺たちはまさかアイテムを使うことすらさせてもらえないとは思っておらず、特殊系が少しかわいそうだと思った。
「でもね、自分のアイテムがどんな事をできるのかもっと詳しく知るためにアイテム計測器っていう道具を使わせてもらったの。それによると、私の銀翼の天使は使いこなせるようになれば、羽一個一個を扱えるようになるんだって。でも、そこまで使えるようになるのはほんの一握りだし、先生たちでも難しいって。でも、可能性はゼロじゃないから私はやってみせるわ!」
春奈に負けていられないと俺たちも頑張ることにした。俺たちは午後の授業に遅れないように訓練は程々にすることにした。俺は木剣を使い、勝は不撓の拳を装着し一対一を何度も行った。午後の授業が始まる少し前に終わり教室に戻った。すると、石田先生がもう教室にいた。案外早いなと思っていると、石田先生はクラスメイトと楽しそうに話していた。仲良くなるために早く来ているのだろうと思った。チャイムが鳴り席に着くと先生が授業を始めた。
「今日はモンスターのランクについて話します。モンスターと言えばゴブリンなどを思い浮かべると思いますが、世界にモンスターはごまんといます。いや、種類はそれほど多くないですが、数が沢山います。とりあえず今日は、モンスターの種類を解説するのではなくランクについて話していきます。
まず人災級。人災級はゴブリンなどの弱いモンスターが該当します。人災級はアイテムランク凡夫で討伐する事ができます。
次は災害級。災害級はオークやオーガが該当します。災害級は玄人で討伐可能です。
次は天災級。天災級はゴーレムやガーゴイルが該当します。この辺りからパーティでないと討伐できないと言われています。天災級は一人の場合英雄で苦労して討伐可能、パーティなら玄人で苦労して討伐可能です。
次は破滅級。破滅級はヴァンパイアやミノタウロスなど知性を有しているモンスターが該当します。破滅級は一人だと星座級で苦労して討伐可能、英雄のパーティで苦労して討伐可能です。
最後は神災級。神災級はグリフォンやワイバーンが該当します。神災級は一人だと神話級で苦労して討伐可能、パーティなら星座級で苦労して討伐可能です。
みなさんの学生での目標は天災級ですね。ちなみにパーティならというのはあくまで目安ですので、みなさんでも破滅級を討伐する事も可能ではあるかも知れません。目標は高く持つ事が大事ですが、慢心して命を落とすようなことだけは絶対にしないでくださいね。今日の授業はこれで終わります」
俺たちは昨日金田先輩に言われたように別の部活も見てみることにした。魔法を使っている部活やアイテムを使っている部活など色々見たが、どこにも入りたいと感じるほど学びになりそうな部活が多かった。そこで俺は塩田先生に部活の掛け持ちができるかを聞くことにした。
「塩田先生おられますか?」
「どうした?」
「部活の掛け持ち出来るか聞きたくて」
「それなら出来るぞ。でも、二兎追う者は一兎も得ずって言うだろ?」
「それなら大丈夫です。俺、案外器用なので。それに、杖持ってるのに魔法全然じゃ悲しいじゃないですか」
「いや、辞めておいた方がいい。今後授業がもっとキツくなる。金田も二年のうちは授業でへとへとになって部活に来なかったぐらいだ。辞めておいた方が身のためだ」
塩田先生は真剣な顔で言っていたためそうなんだろうなと信じることにした。
「分かりました。そこまで言うのなら辞めておきます。もし、二年生から入りたいと思っても入れますか?」
「もちろん可能だ。でも、それまでに体力つけておけよ」
「はい。失礼します」
職員室から出て今日は帰ることにした。複数の部活に入っても疎かになっては先輩たちに失礼だし、授業がそんなにキツくなるのならそっちで事足りるかも知れないから早とちりしなくて良かったと少し思った。今日は氷刃剣を初めて使った事を父さんと母さんに話そう。勝と本気でアイテムを使ったことは先生に叱られた所だけ省いて話したら問題なしだと思いそうやって話すことにした。
ゆっくりお待ちください




