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アルカディアリベル  作者: 描空


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78話 性能確認

 アイテムを選んだ翌日、俺たちは今日はどうやって選抜戦の間暇を潰しておこうかと思いながら教室でスマホをいじっているとユースが教室に入ってくるとすぐに俺たちに歩み寄り周りには聞こえないように少し小さな声で言った。


「アイテムの性能試すために今からダンジョン行くんだけど一緒に行く?」


 俺たちはユースの提案に首を縦に振った。でも、選抜戦期間だからと言って勝手に抜け出すのは良くないのではないかと危惧しているとユースが察したのか説明してくれた。


「昨日のうちに塩田先生から許可貰ってるし、今回もお父さんたちも一緒だから大丈夫。それに、今回はアイテムの性能確認だけだから夕方には帰って来るし。両親にはその旨伝えておいてね。みんなには内緒だけど」


 そう言うユースの表情はみんなに内緒だということを後ろめたい気持ちや申し訳ないという感じではなく、自分たちだけいい思いを出来るという優越感に浸っている感じだった。俺たちはユースに誘われるがまま荷物を持ち教室を後にした。みんなから不思議な目で見られていただろうがそんなこと気にしないようにした。校門にはいつもながらの黒塗りの高級車が止まってた。俺たちはもう慣れたものだと車に乗り込んだ。


「今回はなんて名前のダンジョンに行くんだ?」


 俺がユースに問うとユースはスマホの画面を見せながら言った。


「ここ。獣傷(けものきず)のダンジョン。あんまり難易度は高くなくて駆け出し攻略者が多いダンジョンで、その分攻略し尽くされてるからどこにでも攻略情報が載ってる超初心者攻略者向けなの。物足りないかも知れないけど怪我するよりマシでしょ」


「どのぐらい進むんだ?」


「特に決めてないから時間が許す限りかな」


 勝が問うとユースはあやふやに答えた。その回答で今回のダンジョンが本当に簡単なんだと理解した。もうちょっと歯応えのあるダンジョンでも良かったんじゃないかと少し不服に思った。でも、口に出しては雰囲気が悪くなるのは火を見るより明らかだったため何も言わないようにした。しばらくの間揺られていると停車しドアが開いた。着いたのかと車を降りるとそこは一面畑でポツンと森がある場所だった。どこかで一度は見たことがある景色に和やかな気持ちでいるとユースがその森に進み始めた。俺たちもユースに続いて森に入ると、地下シェルターへの入り口のようなコンクリートで出来た無骨な入り口が目に入った。だが、トールさんたちも守衛のような人も誰一人おらず不審に思っているとユースが言った。


「お父さんたちは中で待ってるから。こんな目立つ場所にいたら人だかりになるでしょって気を遣って言ったんだろうけど、平日の午前中なんてそんなに人いないだろうからそんなに気にしなくてもいいのにね」


 そんな話をしつつダンジョンの中に入ると中から結構大勢の声が聞こえてきた。なんだか楽しそうな声と甲高い声が聞こえてきていたので俺たちはなんとなく嫌な予感がした。その声の間近まで来ると人だかりが出来ていた。案の定その中心にはトールさんたちがいた。非常に困った表情をしていたが、俺たちにはどうすることも出来ず何も言わずにスルーすることにした。ダンジョンの前にいる守衛がいないのを不審に思っていたが、トールさんたちがいるという珍しい状況なら職務放棄しても仕方ないかと思った。


「それじゃあみんな各々新しいアイテム試そっか」


 と言われたが俺のアイテムは孤高の先達者ということで一人じゃないと効果が発動しないし先生の言ってた感じから装着者が一人でピンチになった時に助けてくれるタイプであろうから試せないなと諦めていた。ならみんなのアイテムがどんな物なのか見ておくようにした。まずは勝の賢杖から見ることにした。勝はまだそこまで魔法の扱いが上手くないから苦戦してたらアドバイスしてあげようと思った。勝が賢杖を使い始めると今までとは見違えるほどの威力で魔法を撃てるようになっていた。俺も驚いたが、勝は俺以上に驚いていた。


「エグくね?」


「エグい」


 そこから勝は風魔法を試してみたり爆発魔法を試してみたりした。まだ扱い慣れていない魔法はそこまでだったが、賢杖を介することで使えるようになったこと自体が凄いことであり勝は喜んでいた。次は春奈のアイテムを確認することにした。俺が春奈の後ろから近づいていると春奈が振り返って言った。


「やっぱり来てた」


 万感リングを使って何らかの感覚を鋭く調整していたのだろう。俺が春奈の背後五メートルぐらいのところにいたのに振り返ったのが何よりの証拠だろう。俺は春奈に近づき聞いた。


「何の感覚を鋭くしてたんだ?」


「今は嗅覚。そんなにめっちゃ鋭くしてるわけじゃないから犬みたいにいろんな情報が分かったりはしないけど誰の匂いがするとかは分かる。なんか普段と全然違くて楽しい」


「そっか。ちなみに視覚調整したらどのぐらい先まで見えるんだ?」


「ちょっと待ってね」


 春奈は目を瞑りしばらく黙った。調整するのに少し時間がかかるのだろうと黙って待っていると春奈が目を開けた。


「えっとね、奥の茂みに鬱蒼のダンジョンにいたウサギと似てるウサギがいるのが分かるぐらい見えるね」


 そう言うユースの視線の先を見たが目を細めても全然見えずどの辺りにいるのか教えてもらっても分からなかった。万感リングの性能は予想以上かも知れない。さらに、第六感も調整出来るのだから俺の死嫌のリングと似たようなことも出来るかも知れない。次はユースの感雷の帯電槌がどんな感じなのか見に向かった。すると、ユースは全身に雷を纏っており周囲の空気までバチバチと帯電していた。右手に雷王の剣左手に帯電槌を握っておりユースが雷そのもののような感じだった。


「ユース、どうだ?」


 俺がユースに問うとユースは俺の方を振り向くことなく雷を纏いながら答えた。


「いい感じ。今この纏ってる雷全部槌に溜まってるやつだから雷王の剣使ってないんだよね。でも、帯電しかしてくれない攻撃専門って感じかな」


「雷王の剣と役割被ってる気がするけどどうなの?」


「被ってるところも多いけど、単純に攻撃だけなら雷王の剣発動させなくていいから別のところに集中出来るから用途と時と場合によるかな。魔法使いながら帯電槌で戦うことも出来るから結構便利だよ」


 言われてみれば確かにそうだ。俺がみんなのアイテムを確認しているとみんなが俺にアイテムの効果を見せて欲しいと言ってきた。俺はこのアイテムが一人でピンチの時しか効果を発動しないことを言うと残念だとしょんぼりしていた。最後に透のアイテムを確認することにした。でも、透のマナの熟練者は目に見える物ではないため確認のしようがなかった。俺の孤高の先達者と同じだ。それからみんなはダンジョン内にいる獣のモンスターを相手に色々試していた。みんな楽しそうにしており見ていて微笑ましかった。そんなことをしているとトールさんたちがやってきた。ようやく解放されたのかと思っているともう帰る時間だと言われた。もうそんなに時間が経っていたのかと驚いたが、早く帰らないとなと帰り支度を済ませダンジョンを後にした。

次回もお楽しみに


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