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アルカディアリベル  作者: 描空


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74話 二度目の選抜戦

 ワイバーンの討伐報酬を貰ってから特段めぼしい出来事はなくしばらくが過ぎた。そして、今年も選抜戦の時期がやってきた。クラスのみんなは選抜戦に対する思いが込み上げてきており日々の授業にもいつも以上のやる気を見せていた。選抜戦は競技会とは違い不正と思われるようなことはないので今年もエントリーする事にした。武帝が言っていたことを思い出した。俺が強くなりみんなを守れるようになれということを。そのためにはまだまだ足りない。ようやっとワイバーンを倒せるようになった程度ではみんなを守れるぐらい強いとは言えない。みんなを守りながら倒せるようにならないと十分とは言えないだろう。なら、競技会に出た方がいいのではないかとは思うが、俺にもプライドというものがある。競技会は人間の醜いところを全面に感じるため生理的に嫌だ。したがって、最もアイテムを入手しやすく性能も保証されている選抜戦が最適解なのだ。ダンジョンではアイテムの数も少なく性能もピンキリだから良い選択とは言えない。

 この間ワイバーンを討伐した時に実力を世間に認められたため俺一人でもダンジョンに行けるようになったと思うとユースに言われた。ダンジョンに一人で行っても楽しくないだろうし、危険だしで良い事より悪い事の方が多いだろうからダンジョンには言っていない。ヴェナトレスの一件もあるのでその方が安全という点もある。


「今年も選抜戦始まるからエントリーする奴は忘れないようにな」


 塩田先生の言葉にクラスのみんながエントリーに向かった。一年の頃は自分に自信のない弱々しい生徒だったのに、みんな今となっては自信を持って前向きに挑戦出来るようになっており人間として成長したなと実感した。みんなに負けていられないと俺も誰を守れる強い人間になるべく経験を積みアイテムを入手すべくエントリーに向かった。職員室には物凄い数の数の生徒がいてこの時間にはエントリー出来ないことを察した生徒が何人も教室に戻って行った。俺は風魔法で人の上をいい感じに飛びエントリー用紙をゲットし必要事項を書き込み塩田先生に提出した。ユースたちにもエントリー用紙を取ってくれと頼まれたので同じように飛んでみんなに渡した。四人も必要事項を記入したので俺が同じように塩田先生に提出した。これでエントリーは終わったので後は当日まで待つだけとなった。


 競技会一年の部が始まった。去年まで母俺たちがあっち側だったんだなと思うと時間の流れる速さに何とも言えない感情が込み上げてきた。一年生の中で特に凄いと思うような生徒はいなかった。去年の俺とユースみたいな逸材がいたのは本当に珍しい事だったんだなと思った。これなら去年の先輩たちが一年の部を見に来ないのも納得だ。なら何故俺がここにいるのかと言うと、シンプルに今年の一年にどんな人材がいるのか気になったからだ。いい人材がいれば、俺が所属している近接戦闘部に勧誘しようという目的もあっての事だ。残念な事に俺の目が肥えているのかいい人材は見つけられなかった。今年の一年は三十人ほどしかエントリーしていなかったので案外すぐ終わった。優勝した一年を部活に誘おうかなとも思ったが、魔法使いだったので断念した。


 本番の選抜戦二年の部が始まった。今年のエントリー人数は過去一らしく百五十人にもなった。一年の頃から約三倍にもなっており学年のほとんどの人がエントリーしている事になる。この中からトップ10しかアイテムを貰えないと考えると普通の人にとってはダンジョンの方がマシなのかなとも思った。でも、手を抜いてアイテムを譲るような行為は対戦相手にも失礼だし、エントリーした以上貰えるアイテムは貰わないと損だ。


 一回戦目が始まり実戦場に降りると観客席から俺に対して黄色い声援が送られてきた。競技会みたいだなと思いやる気が出てきた。金田先輩や藍先輩もこんな思いをしていたのかなと思っていると対戦が始まった。相手は近接職だったため氷刃剣で相手する事にした。久しぶりに使う氷刃剣の感触は懐かしさすら感じるほどだった。相手の隙に反撃を入れつつ攻撃をいなしているといつの間にか相手は体力を消耗して片膝をついていた。相手がギブアップを選択すると観客席からは再び黄色い声援が送られてきた。いい気分になり自然と笑みが溢れた。みんながいる観客席に戻ると勝と透は羨ましい旨の言葉を投げかけてきたが、ユースと春奈は自惚れるなとお叱りの言葉を投げかけてきた。そんなに調子に乗っていた自覚はなかったが、忠告は素直に受け入れる事にした。反論しても口論になるだけだと思ったからだ。


 二回戦目が始まった。ユースたちは他の生徒に負けるほど弱くはなく二回戦目も勝利を重ねた。ユースも観客席から黄色い声援が送られていたが、あくまで無関心というか反応しないようにしていた。俺の対戦の番になったので実戦場に降りるとユースの時より大きな黄色い声援が送られてきたが、調子に乗っていたら足元を掬われたり自分の実力を発揮出来ないと考え集中する事にした。相手は魔法使いだったので速攻を仕掛けた。相手は反応出来ていたが、対処法がなくそのままやられた。二回戦目も勝ち抜き三回戦目が始まった。三回戦目も難なく勝ち抜きその日はそれで終わった。エントリー人数が多くなったことで一日の試合数も増やさなくてはならないため一人の対戦数が少なくなってしまった。見ている方は試合数が多く見応えのある一日だっただろうが、やっている側からすれば試合数が少ないため消化不良感が否めない。


「みんな物足りなくない?」


 帰り道ユースが俺たちに問うと俺たちは確かにと頷いた。みんな同じことを思っていたようでユースの家で体を動かす事になった。多少消化不良感は解消されたが、それでもまだ物足りなかったのでシロにジャーキーとボールを渡すついでに目一杯遊ぶ事にした。


「シロー」


 忘れられた記憶の断片(アルカディアリベル)の中に入りシロの所に遊びに行くとシロが俺に覆い被さる勢いで飛びついてきた。シロの勢いに負け背中から倒れるとシロは手に持っていたジャーキーに気がついたようで目をキラキラさせていた。


「それ!」


「そうジャーキー。あげる」


 ジャーキーを取り出しシロにあげるとシロは美味しそうに俺の手から食べた。空いている片手でシロの頭を撫でていると幸せを実感した。それからシロと飽きるまで遊びに遊び尽くした。もうこれ以上は無理だと思うぐらい遊びまくったので消化不良感はとうの昔に感じなくなっていた。シロを撫でている時にはもう感じていなかったかも知れない。そのぐらいシロは俺にとって心の栄養となっておりシロがいて良かったと心底思った。シロを目一杯抱きしめ匂いを嗅ぎ心の栄養補充をし終えるまで抱きしめた。シロに感謝を伝え現実に戻ると幸せな感情はそのままでこれでしばらくは大丈夫だと確信した。

次回もお楽しみに


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