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アルカディアリベル  作者: 描空


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73話 討伐報酬

 ワイバーンを討伐した二週間後、世間が俺に対して興味を失ってきた頃に塩田先生から告げられた。


「小出、この間ワイバーンを討伐しただろそのワイバーンの調査が終わりその討伐報酬が贈呈されることになった。今度の土曜日に県の攻略者委員会で贈呈されるらしいから予定空けておくようにな」


「はい分かりました」


 あまりにも唐突な話にとりあえず返事をしたが、こちら側の都合なんて考えていないのだなと思った。でも、普段普通に働いている人たちがわざわざ俺のために動いてくれるのだからこっちが合わせるのが道理ってものかと思う事にした。そこから土曜日までどんな物が貰えるのか楽しみに待った。そんな俺を見てユースが言った。


「攻略者委員会から貰えるのはアイテムじゃなくて企業から提供されてる補助器具が一般的よ。補助器具って言ってもアイテムと同じような効果だからそんなにガッカリする必要はないわ」


「へー、ちなみに補助器具ってどんな物なの? リングとかネックレスみたいな感じ?」


「そうね基本的には小型な物が多いわ。身につけていても体の動きを阻害せずにサポートするのが目的だから」


 そう言われると補助器具はアイテムの欠点である数の少なさと貴重性という面を克服した完璧な物だと感じた。その補助器具はなんという会社で作られているのか気になりユースに聞いた。


「そんなすごい物なんて会社が作ってるの?」


「プロディティオ社よ。ダンジョン、攻略に関してやっていない事はないって言われるぐらい日本最大手の会社よ。所属している攻略社がゲットしたアイテムの売買から攻略者の斡旋、さっき言った補助器具の開発とまぁ本当にやってない事は犯罪ぐらいね」


「そうなんだ。ちなみにそのプロディティオ社はどのぐらいのダンジョンを保有してるの?」


「詳しくは知らないけど日本のダンジョンの十個に一つはプロディティオ社の管轄下だって言われてるわ」


 そんなにも保有しているダンジョンが多いとは思っておらず驚いた。日本にダンジョンがどのぐらいあるのか知らないが、十分の一も保有しているのは流石日本最大手と言ったところだ。そんな話をしていると勝が言った。


「でも、プロディティオ社って黒い噂もあるよな」


「それって根も葉もない噂でしょ? 日本最大手がそんなことしたら信頼ガタ落ちだからしないと思うけど」


「火のないところに煙は立たないって言うだろ。それに、ダンジョン、攻略に関してやってないことはないって言われてるぐらいだから闇オークションでもやってるんじゃないか?」


「それももしかしたらって話でしょ。今度補助器具貰う健斗が不審感抱いちゃうでしょ」


 ユースがそう言いながら俺を見たが、俺としては別にどっちでも良かったから肯定も否定もしなかった。俺が話を続けなかったからその話題はここで終わった。


 攻略者委員会から補助器具を貰える土曜日になった。指定の時間に攻略者委員会を訪れるとテレビ記者の方たちがいて色々な質問を受けた。でも、指定の時間に遅れそうになったので質問には後で答えると伝えその場を切り抜けた。攻略者委員会の建物に入ると案内役の人に導かれ一室で待機しておくように言われた。何故待機するのか問うと記者の方たちが押し寄せておりその対応をしなくてはならないかららしい。俺のせいなのかは分からないが、迷惑をかけてしまって申し訳ないと思った。


「お待たせしました」


 案内役の人が戻ってきて別室に案内してくれた。その部屋に入ると、部屋半分は記者の人たちで埋め尽くされておりカメラと人で圧迫感があった。案内役の人に案内され椅子に座っているとベテラン職員のような風貌の年配の方が部屋に入ってきた。手にはアタッシュケースが握られており記者の人たちに一礼をした。そして、記者の方たちに仰々しい挨拶をして本題に入った。


「此度のワイバーン討伐に多大な貢献をした光正大学附属高等学校二年の小出健斗氏にプロディティオ社が開発した補助器具の贈呈を行います」


 立つように促された俺はその人の隣の位置に立ち、その人がアタッシュケースを開け俺の方に向けてくれた。中にはリングとブレスレットがあり飾り気はないが、高級感の感じる見た目だった。俺が手に取ればいいのか分からず固まっているとシロが言った。


(それ、嫌な感じする)


 シロの言葉に俺は余計どうすればいいのか分からず固まっていると年配の方がアタッシュケースごと俺に渡してくれた。俺は自然に受け取ると記者の方たちは一斉にシャッターを切った。記者会見ってこんな感じなんだろうなと思ったと同時にフラッシュの眩しさと視線に耐えているんだなと思った。ひとまずアッシュケースを受け取ったがどこに置こうかと思っていると案内役の受け取ってくれそのまま持っててもらう事にした。学生にこういうことをやらせるのなら事前にもっと教えておいて欲しいなと思った。そんなことを思っていると俺の発言を求められ記者の方たちの前で話をする事になった。


「えっと、こういう機会は初めてですのでどのようなことを話せばいいのか分からないので多めに見てくれるとありがたいです。

 まず、今回私がワイバーンを討伐出来たのは自分一人の力だけではありません。一般の攻略者の方と光正の皆さんのおかげです。私はトドメを刺したに過ぎません。ですので、出来ることならワイバーン討伐に関わった全ての人に補助器具を贈呈していただきたいですが、高価な物ですので簡単にはいかないのでしょう。ですが、補助器具は一般の攻略者の方はもちろん攻略校に所属している皆さんにも多大な効果が得られると思います。いつの日かこの補助器具が当たり前になるのを楽しみにしています」


 こんな感じでいいかなと思い下がろうとした時、記者の方から質問が投げかけられた。


「小出さんはどのようにしてその強さを手に入れたのですか? 競技会での目覚ましい活躍もあり世間はその秘密を知りたがっているようです。何か一言お願いします」


 俺は少し考えた。じいちゃんや武帝のことを言うわけにもいかないのでどうしようかと思ったが、そんなに黙っているわけにはいかないのでそれっぽく答える事にした。


「私は知り合いの方に様々なことを教えてもらいました。特段何かしたわけではありません。地道な努力の結果芽が出たと言えると思います。何か一つアドバイスをするのであれば、昔ご活躍された攻略者の方にお話を聞いてみると面白いと思いますよ。学びになることも多いでしょうし」


「ありがとうございます」


 そこから多数の記者の方が質問をしてきたが、全員の質問には答えられずどうしようか困っていると攻略者委員会の年配の方が場をおさめてくれた。討伐報酬の贈呈は終わり待機室に戻らされた。すると、再びシロの声が聞こえてきた。


(それ、なんか嫌だ。なんて言えばいいのか分からないけど人間の嫌なところが凝縮されてる感じがする)


「それってどういうこと?」


(分かんない。けど、普通の事じゃないから絶対に付けないほうがいい)


 シロの野生の勘を信じる事にした。しばらく案内役の人が来るのを待っていると年配の方がやってきた。


「表は記者の方が多いので裏手から案内しますのでこちらに」


 おそらく案内役の人が記者の方を抑えているのだろう。こちらの年配の方だとそれほど大勢の方を抑えることは出来ないだろうから変わったのだろう。裏口に案内されると年配の方は最後まで見送ってくれた。俺は記者の方について来られたら面倒だと風魔法で家に帰った。補助器具はベッドの下に封印して触らないようにした。でも、勝たちが家に遊びに来た時に見つかっては面倒だと思い忘れられた記憶の断片(アルカディアリベル)の中に収納して誰にも触らせないようにした。

次回もお楽しみに


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