70話 不審な男
アルトロポーファティを討伐した後すぐ俺たち学生に召集がかかった。学生が一人被害に遭ったことととかなり強いモンスターが出たことを話すためだろう。大学生になった先輩たちもやられたから一度大休止を挟むのではないだろうかと思った。そんなこと思っていると隣にいたユースが話しかけてきた。
「ねぇ、アルトロポーファティどのぐらい強かった?」
「強いって言うか厄介なタイプだった。攻撃しても全然倒れないし、そのくせに攻撃は早いし、結構骨の折れるモンスターだった」
「そりゃそうだよね。アルトロポーファティって破滅級のモンスターだからね。一人で討伐出来るなんて流石ね」
「競技会でゲットしたアイテムのおかげだよ」
多分豪嶽砕でも討伐出来ただろうけど、言う必要はないから思うだけに留めた。
「そうなんだ。どんな力なの?」
「えっと、どんな物でも潰す事ができるって感じ」
「え? 強くない?」
「うん強い。て言うか強かった」
そんな話をしていると鷲田先生が俺たちの前に出て話し始めた。
「攻略授業中に集まってもらって申し訳ない。みなさん知っているとは思いますけど、つい先ほどアルトロポーファティというモンスターが出現し討伐されました。被害に遭った方も治癒魔法で安静にしているのでそこまで心配するようなことはありませんが、大学生の先輩方が何人も安静にしている状況ですので攻略授業を一時中断します。先輩方が回復なされたら再開しますのでその間休んでいていください。一日経てば再開するつもりですので攻略中の息抜きとして使ってください」
そう言うと鷲田先生は話を終えた。それから俺たちは各クラスに分かれ担任の指示で休憩を満喫した。だが、俺は違った。
「小出ちょっといいか?」
「はい」
塩田先生に呼ばれ後をついて行くと先生たちの休憩場所に着いた。中はなんとも言えない雰囲気が漂っていたが、俺が来た途端先生たちは明るい表情に変えた。先生たちも大変なんだなと思った。
「それでどうしたんですか?」
俺が先生たちに聞くと鷲田先生が答えた。
「みんなが安静にしてる間、先生たちと一緒に見回りをして欲しいんだが、頼まれてくれないか?」
「別にいいですよ」
俺が悩む事なく答えると先生たちは一瞬驚いたが、すぐに頼りにしていると俺を頼ってくれた。
「見回りと言ってもモンスターを倒したりする必要はない。またアルトロポーファティみたいな強いモンスターがいないか風魔法で見てくれるだけでいい。もし、見たことないモンスターがいたら特徴を覚えて教えて欲しい。それと、一般の攻略者の方がアルトロポーファティの素材を取ろうとしてたら光正が討伐した個体だからと追い払って欲しい。一応先生たちと近接職の先輩たちも見回りをしてるからそんなに心配しなくていいからな」
「はい分かりました」
そんな指示を受けて俺は早速見回りに行こうとしたが、先生たちに止められた。アルトロポーファティを倒した後すぐなんだから休めということだった。それならと一度休む事にした。アドレナリンが出ていたのかさっきまでは全然何も感じなかったのに、先生たちに休めと言われてから急激に睡魔が襲ってきた。休憩施設で睡眠をとり十分に休み見回りに行こうと先生たちの元を訪れた。ドアをノックすると中からどうぞと聞こえてきた。
「小出です。休んだんで見回り行ってきます」
「おうもう行くのか。気をつけてな」
鷲田先生に見送られ見回りに行った。飛んで見回りをしていると、光正大の先輩なのか一般の攻略者の方なのか見分けがつかなかったが、アルトロポーファティの近くに人はいなかったのでそんなに気にしないでいると、アルトロポーファティに近づく人がいた。空中でその人を見ていると躊躇する事なくアルトロポーファティに近づくのでその人の近くに降りて言った。
「すいません。このアルトロポーファティ光正が討伐した個体ですので近づかないようにお願いします」
その人は刺青や傷跡が数多くありとても一般人というような見た目はしておらず怖かったが、モンスターではないのだから話は通じると自分に言い聞かせて話しかけた。
「んあ? そんな事関係ねぇだろ。それに、俺はこんなモンスターの素材なんていらねぇんだよ。ほらあっち行った」
「いや、ですけど……」
「なんか文句あるか? そんなに心配ならずっと見張っとけばいいだろ」
その人の迫力に押され見守ることにした。素材取られないのなら俺たちに不利益はないと考えが、素材を取らないのならこの人は何のためにここに来たのだろうと思い注意深く見る事にした。その人は何かを探すように辺りを見ながら歩いており不機嫌そうな顔をしていた。本当に何をしているのかと思っているとその人が言った。
「おい坊主! コイツ誰が討伐した? どのぐらいの人数が犠牲になった?」
何でそんな事聞くのか分からなかったが、特に聞かれて困るようなことはないので答える事にした。
「俺が倒しましたので誰も犠牲にはなってませんけど」
俺の言葉にその人が食いついた。
「はぁ!? お前みたいなガキが俺たちのアルトロポーファティを倒せる訳ねぇだろ!」
その人の言葉に突っかかるところがあった。何故この人はアルトロポーファティを俺たちのと言ったのか。そもそもアルトロポーファティは辺り一帯の養分を吸い尽くして大きくなるモンスターなのだから、元からここにいた個体ならもっと大きなっていたはず。なのに、このアルトロポーファティは成長中の個体のように思えた。つまり、この人がこのアルトロポーファティを何らかの方法で持ち込み一般の攻略者を犠牲にしようとしたと結論づけた。何故そのような事をするのは分からないが、見た目からして到底普通の人ではないのでいつでも逃げられるようにした。
「なぁ! どうやってアルトロポーファティ倒したんだって!」
怒号混じりの男の声に怯えながらも答えた。
「えっと、先生たちと一緒に戦ったから倒せたんです」
「ちっ、そうかよ……今回は収穫なしだな」
最後の言葉は独り言のように言ったが、俺の耳は聞き逃さなかった。この人はもしかしたら攻略者を食い物にする悪逆非道な人だと判断した。その人がその場を離れると俺はすぐに鷲田先生に報告する事にした。
「鷲田先生、さっきアルトロポーファティの残骸のところに刺青の入った男がやってきたんですけど、そいつ俺たちののアルトロポーファティって言ってて、今回は収穫なしかとか不穏なこと言ってたんですけど大丈夫ですかね?」
「俺たちのだと……」
鷲田先生が俺の言葉を聞くと慌てて行動を始めた。どこかに電話をしたと思えば施設を飛び出して行った。俺が困惑していると鷲田先生が戻ってきた。塩田先生たちも戻ってきて俺を問い詰め始めた。その男の見た目や俺たちのという言葉の真偽、どこに向かったのかなど聞かれたことは全てを話した。俺が困惑していると尾形先生が説明してくれた。
「あのね小出くん、アルトロポーファティには二種類の発生方法があるの。一つはそこに自生していた親個体からの種による自然発生なんだけど、もう一つは外部から種が持ち込まれてそこで成長する二つなの。つまり今回のアルトロポーファティはその刺青の男が持ち込んだ種から成長した個体である可能性が極めて高いの。だから、こんなに神経質になってるの」
「それってヴェナトレスの可能性があるってことですか?」
俺の言葉に先生たちが一斉にこちらを向いた。おそらく先生たちはあえてヴェナトレスという言葉を出さなかったのだろうが、俺が出してしまったからこちらを向いたのだろう。すると、塩田先生が言った。
「小出もそう思うか?」
「は、はい」
俺の返事を聞いた先生たちは何かを決断したのか表情が引き締まった気がした。すると、鷲田先生が言った。
「その男を見た小出にしか分からないことだから聞くけど、その男から明確な敵意や殺意は感じたか?」
「いえそんな感じはしなかったです」
俺の返事に先生たちは少し安堵したような感じがした。肩の力が少し抜けたような感じだ。だが、まだ肩に力が入っているため緊張は抜けていないようだった。
「それじゃあ攻略授業を続けるか否かを決めるから小出くんは休んでいなさい」
「はい。失礼します」
先生の指示に従い施設に戻った。勝たちに何をしていたのか聞かれたが、はぐらかし眠りにつくことで話を聞かれないようにした。
次回もお楽しみに




