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アルカディアリベル  作者: 描空


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68話 鬱蒼のダンジョン③

 金田先輩が見回りに行った後俺たちは休憩施設でみんなと一緒に休んだ。みんなは疲労を取るための休憩のため話したりせず、なるべく疲労を取ることに集中した。寝ている者もいればゴロゴロしている者、ストレッチをしている者など様々だ。俺と勝、透は戦っていないためそこまで疲労が溜まっておらずスマホをいじっていた。ダンジョン内でも問題なく電波は届いており動画やSNSなどを見て時間を潰した。そんなことをしていると休憩施設のドアを小動物が爪でカリカリしているような音が鳴り始めた。ウサギでもいるのかと思いドアを開けると、ウサギが後ろ足二本で立ち尽くしていた。一瞬の静寂が訪れるとウサギは逃げて行った。そのウサギの様子にその場にいた俺たち男子全員は笑い我慢出来なくなった。あまりにもかわいいウサギの反応に思わず笑みが溢れ口々にウサギの事を語り始めた。そんな話をしているとユースが部屋にやってきて言った。


「何がそんなに面白いのよ」


 俺がさっきのウサギの話をするとユースは笑みを浮かべながら言った。


「か、可愛らしいけどちょっとうるさいから静かにしてね」


 俺たちはユースに謝りなるべく静かにした。だが、そこからもしばらくはウサギの話題が尽きることはなかった。そんな話をしていたら疲れなんていつの間にか消えておりみんな楽しそうに話していた。でも、女子に声がうるさいと言われないように静かめでだ。もうしばらくするとユースから連絡がきた。攻略を再開する旨の内容だったので男子に指示を出した。


「みんなもうそろそろ攻略再開するから用意しておくように」


 指示を出すとみんなものの数秒で準備を終えた。元からそんなに準備する物もなかったので直接攻略を再開するタイミングで言ってくれれば良かったのにと思っているとユースが部屋のドアを開けて言った。


「行くわよ」


 思いの外早い登場に少し驚いたが、男子の準備が早いことを知っての行動だろう。俺たちは休憩施設を後にすると休憩前に進んだ所まで一直線に戻った。道中、グループのみんなは次戦う時の陣形はどうするかなど話しており意識の高さに感心した。少しの間歩いていると、爆発魔法の音や人の声が周りから聞こえてきた。この辺りにはモンスターが沢山いるのかとみんな焦っていたが、悲鳴や焦っている声が聞こえないため人間側が押されているような状況ではないことは明白だった。それでも状況を把握出来る手段があるのにしないのはもどかしいので風魔法で飛び上がり辺りを確認した。すると、周りには何組ものグループがいるようでここらのモンスターは狩られ尽くしたのではないかと思えるほどだった。ユースにそのことを伝えるとユースはみんなに指示を出した。


「この辺りは人が多いからもっと先に進むから。もしかしたらモンスターが急に現れるってこともあるからみんな警戒は怠らないようにして」


 ユースの指示に従い、みんないつでもモンスターが出てきてもいいようにアイテムを構えて移動した。もうしばらく進むと周りにいた人たちの声は聞こえなくなった。ユースは進むペースを少し落として辺りを警戒しながら進んだ。俺と透、春奈がグループの後ろをついて行っていると背後から金田先輩の声がした。


「小出そっちはどんな感じだ?」


「ビックリしたー……」


 急に声をかけられて驚き心拍数が一気に上がった。金田先輩は申し訳なさそうに謝ってくれたが、金田先輩も悪意があってやったことではないことは分かっていたためこちらも謝った。


「それでどうだ? 怪我とかしてないか?」


「はい大丈夫です。もし良かったらうちのクラスのみんな見て行ってくださいよ。まだまだ伸び代があるのにパーティでの戦い方は上手いし、意識も十分。一人一人目を見張るような実力ではないにしてもなかなかですよ」


「そこまで言うのなら見せてもらおうかな」


 そういうことで金田先輩も一緒に行動することになった。そこからしばらくの間、金田先輩にグループのみんなの戦い方や連携を見てもらった。一度戦ったオークを相手にグループのみんなはなるべく体力を消耗しない省エネモードで戦っているように感じた。すると金田先輩が俺に言った。


「小出の言うとおりだな。みんな戦い方は上手いし連携も取れてる。それに、必要最低限の力で討伐しているし文句の付け所はほとんどないな」


「ですよね。きっとみんな、自分なりに努力したんでしょうね。今の自分たちには個々の力が足りないからそれを補えるようにパーティでの戦い方を学んだんだと思います」


「普通の人からすれば小出みたいな目立つ人材が目にとまるけど、攻略者からすればこうやってきちんと基礎的なことが出来る人材の方がいいだろうから、みんなの努力は将来きっと役に立つね」


 そんな話をしているといつの間にか次なるモンスターとの戦いを始めていた。今回のモンスターは見たことのないモンスターでゴリラのような見た目をしていた。俺はそのモンスターを見るのは初めてで金田先輩にそのモンスターについて質問した。


「あのモンスターってなんて名前ですか?」


「あれはアクレアトスだよ。霊長類のモンスターでゴリラの体格にチンパンジーの獰猛さが合わさったようなモンスターで天災級だったと思うよ」


 アクレアトスはグループのみんなに囲まれて近づくなと何度もしきりに威嚇をしていた。いつアクレアトスが攻撃してもおかしくない一触即発の状況を打開したのはアクレアトスの方だった。他よりも少し小柄なアクレアトスがみんなに突進しようとしたが、火魔法で燃やされ近接職に断ち斬られ命を落とした。すると、アクレアトスは敵わないことを悟り威嚇もしなくなった。みんながどうしようか戸惑っていると、他の個体より老いぼれているアクレアトスが一歩前に出てきた。その個体は首を差し出しており自分の命を捧げているようだった。まさかモンスターが自己犠牲をするとは思っておらず、俺たちは動揺した。すると、ユースがカバンからリンゴを取り出し老いぼれたアクレアトスの前に置いた。そのリンゴは言葉が通じ合わないもの同士が唯一意思を疎通させることが出来る物を分け与えるという行為だった。老いぼれたアクレアトスはリンゴを受け取りその場を去っていった。アクレアトスは俺たちが殺すつもりがないことを感じ取ったのか振り返ることはなかった。


「あれで良かったのか?」


 俺がユースに問いかけるとユースは言った。


「アクレアトスは賢いから無駄な戦いはしないの。あの老いた個体が自分の命を差し出すことで仲間を見逃してもらおうとしたんだろうけど、私たちがアイツらを殺す理由なんてないからね。でも、言葉が通じないんだからああするしかなかったの。こっちの考えが分かってくれて助かったわ」


「ユースってなんでも知ってるんだな」


 俺は思っていたことをそのまま伝えた。


「当たり前でしょ。私はユース・ヨハネス。世界一の攻略者になるんだから。このぐらい知ってて当たり前よ」


 小さい頃から様々な勉強をしてきたことが垣間見えた瞬間だった。ユースは生まれた瞬間から世間から注目の的だったから期待に応えるために血の滲むような努力をしてきたんだと思った。


 アクレアトスを討伐した後、次なるモンスターを求めて森の中を進んでいるとユースがみんなに向かって言った。


「ずっと私が先導してても面白くないから誰かやりたい人いるー?」


 ユースの問いに我こそはと言うような勇気のある人材は現れないかなと思っていたその時、手があがった。


「お、前田くんやってくれるの?」


「や、やります」


 その前田という生徒は眼鏡をかけ、背中には槍を背負っていた。いかにも優等生そうな見た目をしておりみんなから否定されることはなかった。ユースは前田にバトンパスをして俺たちがいる後ろに回ってきた。


「金田先輩いつからいたんですか!?」


 ユースは金田先輩がいたことを知らずに驚いていると、金田先輩は静かにするように自分の口に人差し指を立ててシーっと言った。金田先輩なりにグループのみんなの意識がこちらに向いて集中力が切れることを案じての行動だろう。ユースは静かに言った。


「いつからいたんですか?」


「ちょっと前からだよ。それよりみんないい感じだね」


「ですよね。纏まりがあって他の人を助けようと意識してるし、堅実を形にした感じですよね」


 歩きながらそんな話をしているとユースと金田先輩の首にかけられたスビティスシィが勢いよく同じ方向に向かって動き始めた。その方向に誰かが非常事態に陥っていることが瞬時に理解出来た。


「透、春奈みんなをお願い! 健斗、風魔法で一刻も早く駆けつけて」


 ユースの指示に従い俺は風魔法でスビティスシィが刺した方向に向かって全力で飛んだ。

次回もお楽しみに


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