67話 鬱蒼のダンジョン②
鬱蒼のダンジョンは入り口に近い休憩施設側にはモンスターがいないことを確認した俺と透、春奈は後ろにいるユースと勝率いるグループにも情報共有すべく引き返した。俺たちがユースのグループがいた場所に戻ると、クラスの女子たちは未だにウサギを撫でたり抱きしめたりしていて呆れた。ユースが俺たちに気がつくと先の状況について聞いてきた。
「この先どうだった? 何か危険そうなモンスターとかいた?」
「いや、ここら一帯モンスターはいないっぽい。多分ダンジョンの出入り口に近いからモンスターはいないんだと思う」
「そっかそれならしばらくは進んでも大丈夫そう?」
「うん。それに、これだけ人数いれば大抵のモンスターには勝てるだろうからそんなに心配する必要ないと思う」
俺の言葉を聞いたユースがグループのみんなに指示を出し始めた。
「それじゃあみんな今から本格的に攻略始めるから前衛と後衛で前後に分かれてついてきて。健斗たちのグループも近くにいるから安心して」
ユースの指示に従いグループのみんなが前衛と後衛に分かれた。事前に決めていたのか、スムーズな対応が出来ていた。準備が出来たのを確認したユースが進み始めた。グループの一番前はユースと勝がいるので、俺たちはグループの一番後ろからついて行くことにした。しばらく森の中を進んでいるとグループの歩みが止まった。何かあったのかと思い風魔法でユースのいる先頭まで向かった。
「どうした?」
ユースに声をかけると木陰から何かを見ており俺もそちらを見た。そこには木で造られた粗末な住居と思しき物が複数あった。どんなモンスターがここを作ったのかは分からなかったが、おそらくオークだろうと推測した。
「風魔法で上から見てきてくれない?」
ユースの指示に従い上からそこを見渡すと、住処の中央にオークたちが集まって食事をしているのが分かった。ウサギなどの小動物を食べておりアークの口元はウサギの血でとても汚かった。バレないうちにユースに報告すべく木陰に戻った。
「どうだった?」
「オークだ。ウサギ食ってた」
「アークの数は?」
「二十体ぐらいだった」
「一人一殺ってところだけど、いけるかな?」
ユースがグループのみんなを見ながら少し不安そうに言うと勝が言った。
「みんなを信じてみたらどうだ? それに、俺たちが過保護なままだとみんなの成長のチャンスを潰えさせることになるだろうからやらせてみようぜ。獅子は我が子を千尋の谷に落とすって言うだろ。時には厳しい試練を課すのも成長に繋がるだろうよ」
勝の言葉に決意が固まったのかユースはグループのみんなに向かって指示を出した。
「今から私たち以外のみんなでオークの集団を倒してもらう。私たちは必要最低限の補助しかしないけど自分たちで出来るよね?」
「「「はい」」」
みんなはなから覚悟が決まっており、ユースだけが覚悟出来ていなかったようだった。そこから俺たちはみんながどうやってオークを倒すのか見守った。まず先遣隊がオークの場所を確認し後衛の魔法使いに教え、魔法使いたちがオークたちに向かって一気に魔法を撃った。オークたちは魔法の奇襲に慌てふためき、その場が混沌とし始めると前衛のみんながその混沌に乗じてオークを二人か三人で一体ずつ倒し、あっという間にオークの集団を全滅させた。思っていたより手際が良く俺たちは普通に感心した。ユースはみんなを褒めており、みんなはもっと成長しようと見て取れるような表情をしていた。そこからグループのみんなに戦闘を一任する形でダンジョンの奥の方まで進んだ。一直線に進んで来ているので帰るのも楽だしこのまま行けるところまで行くことにした。そんな時、ユースが歩みを止めた。どんなモンスターがいるのか確認すべく前方を見てみるとそこにはシロよりも一回り小さな体毛が灰色の狼の群れがいた。
「あれは?」
俺はそのモンスターについて知らなかったのでユースに聞いた。
「グリゼオルプスだよ個々だとそんなに強くないんだけど群れだと天災級に匹敵する面倒さなの。こっちも人数いるからいけるかも知れないけど大丈夫かな?」
「みんなならいける」
俺がそう言うとユースは頷き指示を出した。
「みんな聞いて、今目の前にグリゼオルプスの群れがいる。数は十頭前後、みんなならいけると思うけど大丈夫?」
すると、みんな口々に大丈夫だと自信満々に言った。ユースはみんなの自信を信じることにしたようでオークの時と同様俺たちは最低限のサポートしかしないことを告げた。すると、みんなは自分たちで作戦会議を行いどうやって群れを相手にして戦うかを考えた。その結果、前衛と後衛を交互に並ばせてグリゼオルプスの群れを囲むようにした。これなら必然と戦力がばらけ各個撃破出来る。もし、どこかに戦力が固まっても背後から攻撃出来るためなかなかにいい作戦だと思った。ユースはみんなを見守りながらも大丈夫か心配そうだった。だが、ユースの心配はいらぬ心配だった。グループのみんなが考えた作戦は見事に機能しグリゼオルプスは全方位に戦力をばらけさせ各個撃破された。あっという間の討伐にユースは目を見開いていた。みんなは自分たちの作戦が正解だったことを互いに褒めあっていた。
「やっぱりみんな結構凄いよな」
勝がそう言うとユースはコクコクと頷いた。みんなが戻ってくるとユースは指示を出した。
「それじゃあ結構進んだことだし一旦施設に戻って休憩しようか。みんなも結構疲れたでしょ? 休憩したら次はここから再開するから。いい?」
「「「はーい」」」
俺たちは来た道を戻り休憩施設に戻ってきた。施設には塩田先生が待機していた。
「どうだった?」
塩田先生がユースに聞くとユースはみんなを休むように促した。みんなはそれに従いその場には俺たちだけが残った。ユースはみんなが施設の中に入るまで話し始めなかった。
「みんな思っていた以上でした。と言うより私がみんなのことを知らな過ぎたって感じですね。個人の強さはまだまだですが、集団としてはかなりのものです。まさかしたらミノタウロス一体ぐらいならいけるかも知れません」
「そこまでか。それなら今回で個人の実力を伸ばすためにもっと経験を積んでもらわないとだな」
「そうですね。みんな自信は十分ですので苦戦するような相手にも粘り勝ち出来ると思います」
塩田先生は生徒たちの成長に嬉しそうな表情をしていた。もしかしたら、俺とユースが競技会で優勝したことがみんなに自信を与える出来事になったのではないかと思った。そんなことを思っていると背後から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「小出、相川久しぶりだな」
金田先輩だ。卒業してから会っていなかったので久しぶりの再会を喜んだ。
「「お久しぶりです!」」
「そっちはどうだ?」
「元気ですよ。金田先輩は新生活どうですか?」
「大変だけど楽しいよ。大学生って実感はあんまりないけど、こうしてみんなに外部から色々教えるってことしてると卒業しちゃったんだなって実感はあるね」
そこから俺たちは色々な話をした。部活の話から大学の話、攻略授業の話など語ることがなくなるまで語り尽くした。金田先輩は光正大学に進学しており俺たちに会うべく今回の攻略授業の助っ人として参加してくれたのだ。何とも優しい金田先輩に俺もこんな人になろうと思った。金田先輩は他の攻略している生徒たちで困っている奴がいないか探しに行くと言い、森の中に入ってしまった。どこまでも優しい金田先輩に惚れてしまう生徒も出てくるのではないかと別の心配事が脳裏に浮かんだが、今はそんなこと関係ないと考えないようにした。
次回もお楽しみに




