64話 対人授業
対人授業ということで俺たちはグラウンドに向かった。塩田先生が実戦授業をする時はいつもグラウンドだから今回も同じだろうと思ったのだ。予想通りみんな集まっていて俺たちが最後だった。
「珍しいなお前らが最後なんて」
塩田先生にそう言われた俺たちは軽く謝った。そのタイミングで授業が始まるチャイムが鳴り終わった。本当にギリギリで今度からは時間を気にしようと思った。
「よしそれじゃあ始めるぞ。対人授業は一年の時に基礎戦闘術でちょっとだけやった授業の延長線上だからそんなに構える必要はない。最初のうちはそんなに難しいこともしないし肩の力を抜け。まずは軽く説明をしてから組み手をやってもらう。まず、対人戦で気をつけるべきこと、注意しなくちゃいけないことはなんだと思う?」
塩田先生がクラスのみんなに問いかけた。みんなは友達と正解を模索した。みんな友達と小さく話し合うだけで誰も手をあげて発表はしなかった。すると、先生がみんなに問いかけた。
「発表点入るんだけど手あげて言ってくれるやついないかー?」
すると、何人かの手があがった。その中には勝も含まれており先生は勝を当てた。当てられた勝は答えた。
「相手のアイテムがどんな力を持っているかです」
「そうだな。相手の手札が分からない以上無闇に突っ込んだりするのは愚策だ。だから、最初は様子見をするんだ。とは言え、相手が魔法を使える可能性は十分にあるから距離を取りすぎてはダメだし近すぎてもダメだ。対人戦はモンスターと戦うより遥かに難しい。そこでだ、うちにはとーっても優秀な生徒が二人いるんだけど、みんなの前でお手本を見せてくれたりしないか?」
先生は俺とユースに向かって言ってきた。俺たちはみんなが強くなるならいいかと引き受けた。俺とユースは向き合って立たされ先生は話を続けた。
「二人のこの距離感は近接戦闘じゃ少し遠く、魔法を撃ったりする間に相手に詰められる。互いにリスクを背負う距離感だ。素性が分からない相手にはこのぐらいの距離感を保つように。だが、一番いいのは逃げることだ。無理に戦う必要はない。ヴェナトレスみたいな奴らに見つかる前に逃げるのが最も生き残る可能性が高い。どうしても逃げられない、見つかってしまった場合のみ戦うように。それじゃあみんな二人一組でこの距離感から組み手を始めるように。一つの攻め方じゃなく色んな攻め方を試すように。今は失敗しても死なないが、本番で失敗したら死ぬ。だから、何百回も繰り返して死なない方法を見つけ出すように」
俺とユースはそのまま組み手を始めることにした。まずはアークシィリュームやスペチーフィカを使わないで試してみることにした。俺が構えるとユースが一気に距離を詰めてきた。俺はユースの頭に授業用の安全なナイフを突き立てた。
「いやーさすがにダメか」
「さすがにね。こういう膠着状態なら距離を詰めるより逆に離す方がいいと思う。試しにやってみよ」
俺たちはさっきの距離感に戻り距離を取るのを試してみた。これだと近接戦闘は攻めた方が完璧に対処されるため魔法やアイテムを使った中遠距離攻撃をするしかない。ユースが魔法を撃ってくるだろうからそれに合わせて魔法を撃ち返しさらに距離を取ろうと考えた。予想通りユースが雷魔法を撃ってきたので水魔法を撃ち返しさらに距離を取った。すると、ユースは俺がその場で立ち止まるような奴じゃないことを見抜いており距離を詰めてきた。俺は逃げようかとも思ったが、逆にカウンターを決めてやろうと笑みを浮かべた。ユースは一直線にこちらに向かってきておりカウンターを決めるのは簡単だった。
「また俺の勝ち」
「もう一回よ!」
ユースは誰が見ても分かるぐらい悔しそうにしており、なんだか面白く思えた。再戦要求を飲み再び組み手を始めた。今度のユースは俺との距離を維持したまま俺を中心に円を描くように動いた。そんなに時間をくれるのならと自分の周りにプライシディウムを展開した。ユースは未だに俺の動きを観察しており早く攻めてこないかなと思いあくびをした。ユースは俺が油断した隙を見逃すまいと攻撃を仕掛けてきたが、プライシディウムに拒まれた。
「痛っ! 何これ?」
ユースはプライシディウムにぶつかり痛みと不思議の狭間にいた。そして、完全に透明なプライシディウムを触りながら俺に説明を求めてきた。
「保護バリアだよ。選抜戦の時に鷲田先生が使ってたでしょあれ」
「それは分かってる。何なのこの透明度。目の前に何もないって思うぐらい完璧な透明じゃない。どうやったの?」
「普通にやっただけだよ。間藤さんも言ってたけど俺のマナ感知はとにかくすげーらしい。間藤さんのギルドにお誘いされるぐらいにね」
俺の言葉を聞くとユースは呆れたように呟いた。
「健斗にはどうやっても勝てないわ。それにまだまだ色んなこと出来るでしょ? あんたみたいなバケモノが味方で本当に良かったわ」
「お褒めの言葉どうもありがとう」
「はいはいどういたしまして」
そんな会話をしていると塩田先生がやってきて言った。
「どうだ?」
「健斗が強すぎて勝てません」
「あはは! 最強のヨハネスでも小出には勝てないか。流石競技会を一人で勝ったと言わしめた男だな」
先生の言葉に俺がそんな呼ばれ方をしていたのかと驚いた。実際、藍先輩にも一人で勝ったし個人戦も勝ったし、モンスター討伐も苦戦しなかった。だからと言って一人では無理だろうなと思ったが、もしかしたら今の俺なら一人で競技会で一位を取れるのではないかと思った。でも、そんなことしてしまったら他の生徒たちの活躍を奪ってしまうため考えるだけに留めた。
「塩田先生も健斗とやってくださいよ」
「嫌だよ先生が負けるだろ。生徒に負ける教師なんていう恥ずかしい姿見せられないからな。だから、俺は戦わずにどちらが勝っているかを明白にさせないようにしてるんだ。これなら俺の評価が落ちることはないからな」
「言ったら意味ないんじゃ?」
「まぁそうだけど、逆に小出が評価されるならそれでいい」
塩田先生の生徒思いな一面に嬉しく思った。
「そうだ。二人が組み手をしないのなら周りの奴らに色々教えてやってくれ。二人なら出来るだろ?」
そう言われ俺たちはクラスのみんなに戦い方のコツやどうすれば相手に自分の得意なことを押し付けられるかなどを教えた。勝たちは結構いい感じで特に教えることはないなと思った。クラス全体を俯瞰して見てみると魔法を使える近接職の生徒が少ないように感じた。勝も前まではその中の一人だったから、クラスのみんなにも魔法を教えてあげた方がいいなと思った。
「塩田先生、近接職の生徒にも魔法を教えることって出来ないんですか?」
俺は魔法を使えない近接職を不憫に思い先生に聞いた。
「自分の意思で尾形先生の魔法の授業に行けば教えられるけど、そうじゃないのなら厳しいな」
「なら、ダンジョン攻略の授業なら尾形先生もいるだろうし近接職に一度に魔法を教えられるんじゃないですか?」
「確かにそうだけど、それだと時間が足りなくなるからな」
「俺とユースたちに任せてくださいよ」
「いや、それだとみんなの学びにならないから」
授業中にやるのは厳しいなと思っていると先生が言った。
「でも、一度ぐらいならやってもいいかもな。近接のみんなも魔法に興味持つ知れないしな。先生たちに掛け合ってみるよ」
「ありがとうございます」
これならみんなの実力が格段に上がると思い自分のように嬉しくなった。ヴェナトレスなんていう物騒な集団がいる以上、身につけられる技術は全部身につけておいた方が得だからな。そんなことを思っていると授業が終わり対人授業が終わった。
次回もお楽しみに




