63話 攻略者狩り
二年生になり一ヶ月弱経ったある日、塩田先生がホームルームで神妙な面持ちのまま話し始めた。
「えー、一年の最後にダンジョン攻略試験が三年の最後にあると言ったのは覚えていると思うが、実はその試験に追加が決まった。まだみんなは攻略者じゃないから攻略者界隈のことを知らないだろう。だからこそ言っておく。近年、攻略者を狙うヴェナトレスという攻略者狩りの集団が勢力を強めている。そういう事情もあって光正もお前たちに死んで欲しくないから対人の授業を増やし試験も導入することになった。お前たちには負担になるだろうが、これはお前たちを守るためにやってることだっていうことを理解しておいて欲しい。それに伴って二年から対人の授業が始まるからそのつもりをしておくように。この後、校長先生から話があるから体育館に集まるように」
塩田先生が話を終え教室を後にするとクラスは恐怖や不安といった負の感情に包まれた。攻略者狩りという単語を聞いたことがなかった俺でも塩田先生の死んで欲しくないという言葉からどれほどヤバい事態なのか理解出来た。すると、勝たちがユースに攻略者狩りの情報を求めた。ユースならトールさんたち経由で何か知っていると思ったのだろう。俺も話を聞くことにした。
「校長先生からの話でも出てくると思うけど、ヴェナトレスは塩田先生も言ってた通り攻略者を殺してアイテムを奪う非道な集団なの。十年ぐらい前なら全然そんなことなかったんだけど、最近になって勢力を強めてきてるの。だから、今攻略者として活動してる人も自粛したりしてるの。もちろんいろんな機関がヴェナトレスの奴らを逮捕しようと躍起になってるんだけど、ダンジョンってどんな攻略者でも死ぬ可能性があるし、たとえ死んでいたとしてもモンスターの仕業かヴェナトレスの仕業か分からないの」
ユースの言葉に勝が反論した。
「ヴェナトレスの奴らはアイテムを使って殺したりしてるから人為的だって分からないのか?」
ユースはそういう反論もあるだろうと分かっていたのかすぐに答えた。
「それが、死んだ人間の遺体をモンスターが食べたりするから分からないのよ。それに、モンスターたちがアイテムを隠すっていうのもなんら不思議なことじゃないから決定的な証拠が見つかってないのよ」
「じゃあなんでヴェナトレスの名前が浮上してきたの?」
春奈の疑問にユースが答えた。
「実は最初の方は単なる噂だったの。海外では攻略者狩りをする集団がいることが確認されてたからそれに似た集団だって噂が広がっていくうちに、どこからかヴェナトレスって名前が出てきたの。そこからその名前が広がって今に至るってわけ。最近はそこまで目立った活動はしていないようでヴェナトレスに殺されたとみられる攻略者の情報も出てきてないわ。まぁ出てきてないだけで人目につかないように活動してる可能性は十二分にあるけどね」
そんな話をしているといつの間にかクラスのみんなも聞いており、ヴェナトレスに対する恐怖心を抱いていた。その時、塩田先生が体育館に移動していない俺たちを呼びに来た。
「お前らさっさと移動しろ」
俺たちは急いで体育館に移動した。体育館には全校生徒が集められており箱詰め状態だった。全校生徒集まったのを確認した校長先生が壇上に上がり話を始めた。
「みなさんおはようございます。朝のホームルームで先生から聞いているとは思いますが、今年度から我が校でも対人授業を積極的に取り入れていこうと思います。昨年度まではダンジョン攻略の方に注力していましたが、近年ヴェナトレスという攻略者狩りを行っている集団が勢力を強めているということで国の方から対人授業を増やすように言われました。ヴェナトレスの詳細は省きますが、そのような状況となっているのでみなさんの命を守るためにやっていることだと理解してください。みなさんが攻略者として大成することを願っております」
校長先生は壇上から降りた。すると、次は鷲田先生が壇上に上がり話を始めた。プロジェクターも利用し視覚的にも分かるようにしていた。
「ここからは私が授業がどのように変わるのか説明します。このスライドが昨年度までの授業です。見て分かる通り実戦授業の八割がダンジョン攻略となっています。今年度からこのダンジョン攻略の三割を対人授業とします。時と場合によっては座学の授業が実戦授業に変わる場合もありますのでご注意を。それに伴い三年生最後に行われる試験も変更があります。昨年度まではダンジョン攻略試験という試験一つでしたが、今年度から対人試験も増えます。ですが、その分ダンジョン攻略試験はみなさんの負担にならないような調整しますのでご安心を。あくまで今した話は現時点で決まっていることですので変更する場合もあります。ですが、私たち教師一同はみなさんが安全に攻略者として活躍出来ることを一番に考えています。そのためにもどうか私たちに君たちのことを任させてください。立派な攻略者にしてみせます」
鷲田先生はそう言うと壇上から降りた。先生たちも現状をあまり把握出来ていないながらも俺たちのことを一番に考えてくれているのが分かった。全校集会は終わり教室に戻った。これから実戦授業が増えると思うと嬉しく思う反面、ヴェナトレスなどの危険がついて回ることになるんだなと実感した。攻略者は常に死の危険がすぐそこまで迫っている。そんな状況で冷静さを保つための慣れの過程も実戦授業に含まれているだろうから積極的に取り組まないとなと思った。そんなことを思っていると塩田先生がプリントを配った。保護者用のプリントで俺たちに話した内容が書かれていた。
「保護者に渡しておくようにな。午後から早速対人授業始めるから実戦服に着替えておくように。午前は座学だから」
そう言うと塩田先生は教室を後にした。対人授業がどんな内容なのか気になっていると座学の授業内容は何も頭に入ってこなかった。昼ご飯を食べている最中、ユースたちと午後の対人授業について話し合った。どんな内容なのか、形式は基礎戦闘術のような感じなのかと話しているとあっという間に昼休みの時間はなくなり午後の授業が始まりかけていた。俺たちはすぐに実戦服に着替え対人授業を受けに向かった。
次回もお楽しみに




